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勝利を掴んだ若き才能:ピアストリの決断とルクレールの苦戦

シャルル・ルクレールをリードするオスカー・ピアストリ

オスカー・ピアストリの勝因とルクレールとの対決

オスカー・ピアストリが今回のレースで勝利を手にした要因には、いくつかの決定的な瞬間があった。特に、シャルル・ルクレールを抜いた場面では、彼の決断力とブレーキング技術が光った。エンジニアからはオーバーテイクが禁止されていたにもかかわらず、ピアストリはその瞬間を見逃さず、果敢に攻めた。この判断力と技術力が、若手ドライバーとしての彼の成長を象徴する瞬間となった。

彼自身も、勝利の瞬間を振り返りこう語っている。「ピットストップ後、チャンスが見えた瞬間に『やらなければ』と思ったんだ。そのタイミングが勝利の決め手になったんだと思う。レースエンジニアには少し申し訳ない気持ちがあるよ。第1スティントでも同じようなことをしようとして、タイヤを完全にダメにしてしまったからね。だからエンジニアからは『もう二度と同じことをするな』って言われたんだ。でも、次の周でその指示を完全に無視して、内側に飛び込んだんだ」と彼は語った。

オーバーテイクの場面では、マクラーレンのチームメンバーすらも、彼が壁に衝突するのではないかと思うほどの攻めた走りであった。「これはハイリスクでハイリターンな動きだったけど、それが勝つために必要なことだったんだ」と彼は語る。

ルクレールの視点:守備の課題

一方で、シャルル・ルクレールはピアストリに抜かれた瞬間について、自身のミスを振り返った。「第2スティント序盤でピアストリがこれほどプッシュしてくるとは思わず、『クレイジー』だと感じた」。

「正直に言って、ストレートエンドで僕がもっと上手く防御できていれば、レースは違った結果になっていたと思う。でも、それがレースだ。時々ミスをしてしまうし、そこから学ぶだけだ」と述べ、次のように続けた。

「オスカーに抜かれた時、僕は『まあ、冷静になって、タイヤをうまく持たせて、後でまた彼を抜けばいい』と思っていたんだ。でも、実際はそれほど簡単ではなかった。ストレートで彼に近づけなかった。マクラーレンの方がダウンフォースが少なかったのかもしれないね。彼らはストレートで速かったけど、コーナーでは僕たちが速かった」。

このコメントは、ルクレールがピアストリのマシンの速さに驚きながらも、自らのミスに対して冷静な評価を下していることを示している。彼にとって、今回のレースは守備の面で課題が残る内容となった。

タイヤ戦略とクリーンエアの活用

トップに立ったピアストリは、その後、クリーンエアを最大限に活かし、タイヤの温存に努めた。特に、直線に向かうコーナーの立ち上がりではトラクションを上手くかけ、ルクレールからのオーバーテイクを防いだ。インフィールドセクションでは、抜かれる心配がないことを理解し、ペースを落としてタイヤの負担を軽減。終盤の数周でラストスパートをかけ、ルクレールとの距離を広げ、勝利を確実なものとした。

彼はこう続ける。「リードを奪うのは、仕事の40%くらいでしかなかった。リードを維持するのが60%だとわかっていたよ。タイヤを酷使して前に出たから、第1スティントで何が起こったかは知っていたし、クリーンエアが僕を助けてくれることを願っていたんだ」。

ピアストリを追走するシャルル・ルクレール(フェラーリSF-24)

ルクレールの苦戦とペレスの追撃

ルクレールにとって厳しい展開は続いた。ハードタイヤを痛めながら追いかけるしかない状況だったことを明かした。さらに、レッドブルのセルジオ・ペレスが終盤に2位を奪いそうになる場面があったが、幸いにもペレスともう一台のフェラーリ、カルロス・サインツの接触により、ルクレールは2位を守り切ることができた。

レース後、ルクレールはこう振り返る。「僕たちはとても競争力があったし、車のフィーリングも良かった。ただ、FP1やFP2では僕の方でPUの高いモードでの走行をしなかったから、レースでは特にハードタイヤで少しマシンのセットアップが難しかったかもしれない」と続け、「リアタイヤを持たせるのに本当に苦労していて、終盤は本当に壁に突っ込みそうだった。とてもギリギリだったよ」と述べた。

ピアストリの精神力

ピアストリはルクレールからのプレッシャーにも屈することなく、冷静さを保って走り続け、確実に勝利への道を築いていった。この精神力の強さは、まるでフェルナンド・アロンソのようなベテランドライバーを彷彿とさせ、2年目の若手ドライバーであることを忘れさせるほどである。

まとめ

ピアストリの今回の勝利は、決断力、ブレーキング技術、タイヤ戦略、精神力といった要素が見事にかみ合った結果であり、彼の成長とポテンシャルを強く印象付けた。一方で、ルクレールは自身のミスを認めつつ、ダウンフォースの違いとタイヤのデグラデーションに苦しみ、勝利へのチャンスを逃す形となった。

このレースは、今までで一番良いレースの一つとピアストリ自身が感じるほどの充実した内容であり、今後の彼の活躍に大きな期待を抱かせると同時に、若手ドライバーの台頭がF1における競争の激化を示している。