ブラジルGPのスプリント予選は、マクラーレンの再躍進を際立たせる舞台となりました。オスカー・ピアストリとランド・ノリスは、まさにチームの勢いを象徴するようなパフォーマンスを見せ、SQ3の結果ではピアストリが1位、ノリスが2位を獲得。彼らのパフォーマンスは単に速さを示すだけでなく、マクラーレンが抱える複雑な事情も垣間見せるものでした。
気温の変化への適応に成功したマクラーレン
ノリスはSQ1とSQ2で圧倒的な速さを見せ、誰もが彼がポールポジションを獲得するだろうと思いました。しかし、SQ3の最初のランでリードしながらも、ソフトタイヤで2度のアタックを行った結果、タイヤの摩耗が影響しミスを犯してしまいます。この隙を逃さなかったのがピアストリで、最後のランで全てをまとめ、完璧な走りを披露しました。ピアストリがポールを奪った瞬間は、彼の成長とマクラーレンの若手に対する信頼を象徴するものであり、ノリスにとっては悔しさを感じさせる結果となったでしょう。
チームプリンシパルのアンドレア・ステラは、スプリント予選後に冷静さを保つ必要があると述べました。インテルラゴスのコンディションは刻々と変わり、路面の再舗装や曇天がマシンに与える影響が不透明です。ステラは、「スプリント予選のコンディションはプラクティスのときとは大きく異なっていた。路面は冷え、空は曇っていて、こうしたコンディションは我々のマシンに合っている」と認識しているものの、週末の残りの天候次第で状況が一変する可能性を強調しました。つまり、マクラーレンがこのまま順調にトップを維持できるかどうかは未知数であり、「パパイヤ・ルール」が適用されるかもしれません。ステラはさらに、「オスカーとランドは素晴らしい仕事をしているが、我々は常にチーム全体でのパフォーマンス向上を目指している」と述べ、今後のチーム内の競争と協力のバランスに期待を寄せました。
低温に苦しんだフェラーリ
一方で、フェラーリも見逃せません。シャルル・ルクレールとカルロス・サインツは、それぞれ3位と5位を獲得し、特にルクレールはノリスとフェルスタッペンのバトルに絡むチャンスを見出しています。ルクレールは「スプリント予選では満足できる結果だったと思う。今日のセッションで結果を最大限引き出したし、これ以上得るものはなかったと思う。マクラーレンが特に速かったので、スプリントレースでは彼らに挑むために全力を尽くすつもりだ」と語りながらも、スプリントレースではマクラーレンに挑む意志を見せました。ルクレールはさらに、「我々のパッケージは非常に強力だが、マクラーレンに対抗するには完璧な走りが必要だ」とコメントし、挑戦的な姿勢を崩していません。
またチームメイトのサインツも苦戦した理由を次のように述べています。「今日は本当に難しかった。特に路面状況のせいだ。スプリント予選では風が強く、路面がかなり冷えていて、全く有利にはならなかった」
フェラーリのフレデリック・バスールも、スプリント予選での競り合いに満足しており、彼らが明日どのように戦略を練ってトップ勢に迫るのかが見どころです。バスールは「明日のスタートポジションには満足している。今日これ以上の結果を望むのは難しかっただろう。マクラーレンが明らかに速かったからだ。ドライバーたちにとっては、プラクティスでは路面が非常に熱く、スプリント予選ではかなり冷えた中での車やコンディションへの適応が鍵だった。明日のレースに集中して、日曜のレースに向けてさらに良い仕事を目指すつもりだ」と述べ、さらなる向上に意欲を見せました。
バンプに苦戦するレッドブル
レッドブルのマックス・フェルスタッペンにとって、ブラジルのバンピーな路面は大きな課題でした。再舗装したにも関わらずインテルラゴスは、バンプが激しくマシンの挙動が安定しない状況に直面しています。フェルスタッペンは、「バンプが酷くてマシンが跳ね回っている」と語り、その影響がラップタイムのロスにつながったことを明らかにしました。
彼のライバルであるノリスが前方にいることは、スプリントでの彼の課題をさらに厳しいものにしています。フェルスタッペンはさらに、「我々のセットアップにはまだ改善の余地がある。明日のスプリントでどこまで挽回できるか見てみよう。天候が影響するかもしれないけれど、少しやることが残っている」と意気込みを見せました。
一方で、セルジオ・ペレスはSQ2でタイミングを誤り、最後のランを完遂できず13位という結果に終わりました。ペレスは「今日は計画通りにいかなかったが、チーム全体で改善に向けて取り組んでいく」と述べ、課題解決への意欲を示しています。レッドブルにとって、この週末は挑戦の連続であり、フェルスタッペンがどこまで挽回できるかが焦点です。
ペース不足に悩むメルセデス
メルセデスもまた、苦しいスプリント予選となりました。ルイス・ハミルトンは、インテルラゴスのバンピーな路面に苦しみ、最終的にはSQ3に進出できず11位に留まりました。彼は「このバンピーな路面はみんなにとって大変だろうが、FP1ではコクピット内が本当に厳しかった。ブレイク中に車高を上げて状況を改善したけど、タイムラップではペースが足りず、バランスが非常にシビアで思うように攻めることができなかった」と振り返り、路面の再舗装が彼のドライビングに与える影響を強調しています。ハミルトンはさらに、「ファンの応援がなければもっと厳しい一日だっただろう」と、ブラジルのファンへの感謝を述べました。
ジョージ・ラッセルも、最終的には6位でフィニッシュし、メルセデスとしてはミッドフィールドの先頭に立つ形となりました。彼は自分たちの結果を次のように分析している。「スプリント予選が進むにつれて路面が冷えていったので、厳しいセッションだった。P6というのは今の我々の位置をよく反映していると思う。トップグループの後ろに位置し、その後ろのグループとの差もある」
彼らのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターであるアンドリュー・ショブリンも、「再舗装された路面が週末のセットアップに課題をもたらした」とコメントし、特にリアのスナップが問題であったことを明かしました。ショブリンは「明日のスプリントレースでは、ロングランでのバランス改善に集中し、チーム全体で良い結果を目指す」と述べ、次のセッションへの意欲を強調しました。
明日のスプリントレースに向けて
今回のスプリント予選では、各チームが異なる戦略とコンディションに対応しながら、いかにマシンのポテンシャルを引き出すかが重要な要素となりました。マクラーレンのピアストリとノリスの間の競争は、チーム内のリーダーシップを巡る新たな局面を迎えたことを示しています。
同時に、フェラーリやレッドブルといったライバルたちも、このスプリント週末を通じてマシンのセットアップやコンディションへの適応を試みています。バスールは「我々は常に学び続けている。特にこういったスプリント形式では、迅速な適応が求められる」と述べ、チームの柔軟性を強調しました。
明日のスプリントレースで、果たしてマクラーレンがこの勢いを維持し、1-2フィニッシュを達成することができるのか、それともフェラーリやレッドブルが巻き返しを図るのか。その鍵を握るのは天候とタイヤの使い方、そして路面の状況に対する各ドライバーの適応力でしょう。ブラジルGPのスプリントは、各チームの限界への挑戦と、その中で生まれるドラマが見逃せない展開となりそうです。