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ガスリーを5位入賞に導いたアルピーヌ 新型ノーズの進化

アルピーヌがカタールGPで投入した新しいフロントウィングとノーズは、チームの今後の方向性を示す重要なアップデートでした。これまでの従来型ノーズと異なり、新型はウイングエレメントと一体となった設計で、特にその短いノーズが注目されています。この変更は、チームの2025年型マシンに向けた設計の先駆けとして、テクニカルディレクターのデビッド・サンチェスによって明言されており、アルピーヌの技術的挑戦が次なるステップに進んでいることを象徴しています。

カタールGPで新型ノーズの投入したピエール・ガスリー

新しいノーズの空力的革新

カタールGPでピエール・ガスリーのマシンにのみ搭載されたこの新型ノーズは、空力設計において独自の進化を遂げています。従来のノーズは主翼(メインプレーン)に接続されていましたが、新型ではその上のボトムフラップに接続されることで、フロア下への空気の流れが大きく改善されています。この構造の変更により、ノーズ下部で加速された空気が低圧域を作り出し、アンダーフロアにより効率的に空気を導く効果を持っています。

これにより、フロントウィングから後方への空気の流れが改善されると同時に、新しいフロントウィングフラップの再設計により、フロントで得られるダウンフォースが増加しました。これはグラウンドエフェクトカーの設計において特に重要な要素であり、フロントとリアのバランスを取りながらダウンフォースを増加させるという、非常に難しい課題に対する一つの解決策となっています。

旧型ノーズを搭載したラスベガスGPでのオコンのアルピーヌ A524

グラウンドエフェクトカーの課題

現行のF1マシンはグラウンドエフェクトを利用することで大きなダウンフォースを生み出していますが、これにはフロントとリアのバランスを取るための非常に繊細な調整が必要です。特にフロントでのダウンフォース生成量は、リアで利用できるダウンフォース量を定義する重要な要素となります。サンチェスは、「マシンのポテンシャルを引き上げることはできますが、ダウンフォースが正しい位置にかかり、それが実際に活用可能かどうかを見極める必要があります」と述べ、バランス調整の難しさを強調しています。

旧世代のハイレーキ仕様のマシンでは、車高の変化を利用して低速から高速までフロントとリアのバランスを調整することが可能でした。低速時にはリアが高くフロントが低いことでフロントの荷重が強まり、高速時には両車高がほぼ等しくなることでバランスを保つという動きがありました。しかし、現行のグラウンドエフェクトカーではリア車高を極めて低く設定する必要があるため、車高変化による調整の効果が制限されています。

アルピーヌのアップデートの狙い

アルピーヌが導入した新しいノーズとフロントウィングフラップは、この課題に対する解答の一つです。フロントアクスルでのダウンフォースを増加させることで、結果としてリアでのダウンフォースも効果的に活用できる可能性が高まりました。このアップデートは、マシン全体のバランスを保ちながらダウンフォースを向上させることを目的としており、特にフロントの空力性能を強化することで、コーナリング時の安定性を向上させています。

サンチェスは「新しいフロントウィングのジオメトリーと独立した最初のエレメントに適合するよう、ノーズは短縮されています。これにより、より健全な流れの相互作用が実現しています」と述べており、この改良がマシン全体の空力的な相互作用をより良くするための一歩であることを示唆しています。

ブラジルGPでの旧型ノーズのオコン。ノーズ先端がメインプレーンに接続されているのがわかる

今後の展望

アルピーヌのこの新しいアップデートは、2025年に向けた設計の一環として重要な意味を持ちます。1セットしか準備できなかったので、カタールでの初投入時にはガスリーのみがこの新型ノーズを使用しましたが、その成果次第でもう一台のマシンにも導入されることが予想されます。今回のアップデートが成功すれば、アルピーヌはフロントウィングを中心にさらなる空力改善を図ることができるでしょう。

アルピーヌが現在直面している課題は、グラウンドエフェクトカーのバランスを最適化し、ダウンフォースを効率的にバランス良く配分することです。この挑戦において、新しいフロントノーズとウィングの導入はその解決への重要なステップとなり得ます。チームはこれを足掛かりに、さらなるパフォーマンス向上を目指し、2025年の新型マシンに向けて一層の開発を進めていくでしょう。

アルピーヌの技術的進化が他のチームとどのように競り合い、F1の舞台でどれだけの成果を上げるのか、今後の展開に注目です。