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フェラーリ、アブダビでの攻撃的な挑戦

アブダビGPでのフェラーリの姿勢は、まさに「失うものは何もない」という言葉に尽きる。シーズンの最終戦を迎えた今、コンストラクターズ選手権でマクラーレンに21ポイントの差をつけられたフェラーリだが、その挑戦の手を緩める気配は一切ない。フレッド・バスール率いるチームは、SF-24を最大限に活かし、攻撃的なセットアップとパワーユニットの設定で、最後の一戦にすべてを賭ける構えだ。

ヤス・マリーナ・サーキットでのフェラーリの戦略は、攻撃的なセットアップに集約されている。シミュレーターで試された非常に低いセットアップを実戦に持ち込み、フロアを路面に近い位置で走行させることで最大限のダウンフォースを引き出そうとしている。このセットアップは、ヤス・マリーナの平坦な路面が可能にするもので、ラスベガスでのレースで導入された技術指導の影響を受けた今、フェラーリにとっては一つのギャンブルだ。しかし、そのギャンブルこそが、フェラーリがこのタイトル争いにおいて、まだ諦めていないことを表している。

また、カルロス・サインツも新しいフロアを使用する可能性が高い。このフロアは、ルクレールがカタールで初めて試したもので、彼はそのパフォーマンスに満足していた。対照的に、サインツはこれまで導入に慎重であり、ラスベガスでは使用を見送っていたが、チームとしての総力戦を前に、その態度にも変化が見られる。フェラーリが攻めの姿勢を強める中で、両ドライバーがどのように連携していくかが、最終戦でのパフォーマンスに大きく影響するだろう。

フェラーリのパワーユニット設定も、攻撃的なアプローチが採られる予定だ。ハイブリッドシステムを含むすべてのコンポーネントが限界まで引き出され、最大のパフォーマンスを追求する。マクラーレンがメルセデスのカスタマーユニットを使用している中で、保守的な設定を使わざるを得ないのに対して、フェラーリは信頼性のリスクをある程度取り、パワーユニットをフルに活用することで、競争力を維持しようとしている。このリスクを伴うアプローチは、まさに「攻める」フェラーリの象徴であり、何としても勝利を手にしたいという彼らの決意が感じられる。

アブダビGPの舞台となるヤス・マリーナは、歴史的にフェラーリにとって得意なコースではない。しかし、冷え込んだカタールとは異なり、アブダビでは比較的温暖な気候が予想されており、フェラーリにとって有利な条件が整う可能性がある。過去のデータから見ても、ヤス・マリーナは少なくともカタールほどの不利はなく、チームとしてはマクラーレンと同等の条件で戦える見込みだ。マクラーレンはポイントリードを生かして守りに入ることもできるが、フェラーリは逆にその守りを突き崩すべく、攻撃の手を緩めることはないだろう。

フェラーリが最終戦で狙うのは、マクラーレンのミスをついて逆転のチャンスを掴むことだ。MCL38はその実力を示す結果を出し続けているものの、ドライバーのオスカー・ピアストリとランド・ノリスが過去にミスを犯してきたことも事実である。フェラーリはその隙を狙い、あらゆる可能性を追求する覚悟だ。一方で、フェラーリ自身も完璧なパフォーマンスが求められる状況にあり、そのためにSF-24を極限までチューニングし、最大のパワーを引き出すという戦略を取っている。

このように、フェラーリはアブダビGPにおいて攻める姿勢を貫いている。路面に近いセットアップ、新しいフロアの導入、そしてパワーユニットの限界までの活用——すべてが「攻め」の一手だ。失うものがないからこそ、彼らは大胆な選択をし、最後の一戦に全力を注いでいる。もしもマクラーレンがミスを犯し、フェラーリが完璧なレースを展開すれば、コンストラクターズ選手権での逆転劇が実現する可能性もある。最後の最後まで何が起こるか分からないF1シーズン、その結末に向けて、フェラーリは全力で挑む。