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F1アブダビGP決勝レースのタイヤ戦略予想

2024年シーズンのフィナーレとなるアブダビGPが間もなく開催されます。このヤス・マリーナ・サーキットでは、戦略が結果を大きく左右するため、各チームがどのようなタイヤ選択をするのか注目が集まっています。今回は、これまでのデータや状況を基に、予想されるタイヤ戦略について考察してみます。

昨年のレースを振り返る

昨年のアブダビGPでは、戦略の多様性が見られましたが、多くのチームが「ミディアム→ハード→ハード」のツーストップを採用しました。特にトップ勢のほとんどがこの戦略を選択し、安定したペースを維持しました。一方で、ワンストップ戦略を選んだマシンも存在し、角田裕毅は「ミディアム→ハード」で8位に入る堅実な走りを見せました。この成功例があることから、今年もワンストップが再び注目される可能性があります。

ピレリのシミュレーションによる最速戦略

ピレリによるシミュレーションでは、最速の戦略として「ミディアム→ハード」が推奨されています。このプランでは、ピットウィンドウが20〜26周目に設定されており、昨年の成功例とも一致しています。ミディアムタイヤでスタートし、ハードタイヤで後半を走り切ることで、デグラデーションを抑えつつ安定したペースを維持することが可能です。

マクラーレンとフェラーリの対決

マクラーレンはフロントローを独占し、フェラーリに21ポイントのリードを持つ有利な状況です。マクラーレンの最優先事項は、リスクを抑えつつ安定したレース運びでフェラーリの反撃を封じることです。そのため、基本戦略としてピレリ推奨の「ミディアム→ハード」を採用する可能性が高いでしょう。

一方、フェラーリは逆転を狙う必要があります。そのため、よりアグレッシブな戦略を採用することが予想されます。「ミディアム→ハード→ハード」や「ハード→ミディアム→ソフト」といったツーストップ戦略を選択し、序盤でポジションを上げつつ、後半に他チームとの差を詰める作戦を取る可能性があります。

ミッドフィールドの戦略の多様性

中団勢力にとって、予選順位やタイヤの持ち込み状況が戦略に大きく影響します。特に、ルイス・ハミルトンのように後方からスタートするドライバーは、「ハード→ミディアム」や「ハード→ソフト」といった逆転を狙う戦略が有効となるでしょう。序盤でハードタイヤを使い、長いスティントをこなすことで、レース後半にフレッシュなタイヤで攻めるプランが期待されます。

また、アルピーヌやアストンマーティンといったチームは、ポイント圏内での確実なフィニッシュを狙い、比較的リスクの少ない「ミディアム→ハード」戦略を採用する可能性が高いです。一方で、セーフティカーや予期せぬ展開があった場合に備え、柔軟な戦略を準備しているはずです。

ソフトタイヤの役割

ソフトタイヤは、決勝レースでは限定的な役割を果たすと予想されます。ピレリのマリオ・イゾラ氏も「ソフトは1ラップタイヤであり、主にファステストラップや非常に短いスティントに使用されるだろう」とコメントしています。そのため、ソフトタイヤは終盤のアタックやセーフティカーが導入された場合の選択肢として残されるでしょう。

セーフティカーの影響

ヤス・マリーナ・サーキットでは、セーフティカーの導入頻度は低めですが、過去には劇的なレース展開を生んだ例もあります。もしセーフティカーが出た場合、戦略の柔軟性が試されることになります。例えば、序盤でミディアムタイヤを使用したチームが早めにハードタイヤへ交換する、あるいはツーストップ戦略に切り替えるといった対応が求められるでしょう。

天候と路面状況

日没とともに路面温度が下がり、タイヤのデグラデーションが抑えられることが予想されます。ただし、風の影響が残る場合、ブレーキングゾーンでの挙動に注意が必要です。これにより、ドライバーがタイヤを労わる走行を求められる場面が増えるかもしれません。

まとめ

アブダビGPの決勝レースは、各チームのタイヤ戦略が勝敗を分ける重要な鍵となるでしょう。昨年の成功例を踏まえた基本戦略、マクラーレンの安定志向、フェラーリの逆転狙い、そして中団勢力の柔軟性——それぞれが異なるドラマを生み出す可能性を秘めています。今年最後のレースは、単なるスピードだけでなく、戦略と判断力が光る一戦となるでしょう。