Formula Passion

フェラーリ2025年型マシン—プロジェクト677の挑戦と進化

フェラーリが2025年シーズンに投入する新型マシン、プロジェクトコード「677」は、スクーデリアの野心と技術革新の結晶である。このマシンの開発には、継続性と大胆な改革が巧妙に融合されており、チームの未来へのビジョンが投影されている。

LECLERC Charles (mco), Scuderia Ferrari SF-24 ©Scuderia Ferrari S.p.A.

まず目を引くのは、フロントのプルロッドサスペンションへの移行だ。この選択は、スクーデリアにとって新たな挑戦となる。プルロッド方式は、低重心化や空力性能の向上に寄与する一方で、設計とセットアップにおける課題を伴う。

新型マシンの正式名称はまだ決定されていないが、シャシーと空力設計はすでにかなり前に完成していて、現在フェラーリはダイナミックテストベンチを駆使し、加速やブレーキング、コーナリングといったトラック条件をシミュレートしてきた。これにより、新たな運動学を深く理解し、特に低速コーナーでの安定性とブレーキング性能を最大化することを目指している。元メルセデスのエンジニアを含む専門家チームがこのプロセスを主導していることも興味深い。

プルロッドサスペンションへの移行に伴い、上部および下部のウィッシュボーンが再調整され、アンチダイブ特性が強化された。これにより、減速時の安定性が向上し、ドライバーにとって予測可能で扱いやすいフィードバックを提供する。また、これらの改良はターンイン時のグリップを確保しつつ、マシンの挙動をより精密に制御できるよう設計されている。

空力設計とシャシーの進化

フェラーリ677の空力設計は、2024年型の基盤を維持しつつ、革新的な変更が加えられている。特に注目されるのは、ノーズデザインとフロントウイングの進化だ。オースティンでデビューしたSF-24のノーズ形状を参考に、メインプレーンと接続する新しいアプローチが採用される予定だ。さらに、2024年にシンガポールGPで導入されたリッジ構造が引き続き採用される見込みであり、フロントウイングのフラップ形状も改良されている。

空力設計において特筆すべきは、プルロッド式サスペンションによる中央部のエアフロー改善である。この変更により、サイドポッドやアンダーカット部分の空力効率が大幅に向上している。これらの改良は、ラスベガスGPで試験的に使用された新型フロアのデータを活用し、さらに精度を高めた形で導入されている。

ボディ全体のデザインも、徹底的な分析の結果として進化を遂げている。特に、サイドポッド周辺の冷却性能向上に向けた微調整が施されており、熱管理がより効率的になることで、エンジンのパフォーマンスを最大化することが期待されている。また、アンダーカット部分の形状変更により、リアエンドの安定性が向上しており、コーナリング中の挙動がさらに改善されると見込まれている。

SAINZ Carlos (spa), Scuderia Ferrari SF-24, ©Scuderia Ferrari S.p.A.

リアセクションの最適化

リアセクションにおいては、大胆な変更こそ控えられているものの、重量配分の改善やプルロッド式サスペンションの改良が進められている。特に、ショックアブソーバーやスタビライザーバー、サードエレメントの調整により、空力負荷への対応力が強化されている。これにより、マシンは幅広いセットアップウィンドウを持つことが期待されている。

ホイールベースの微調整も行われ、重量配分がさらに最適化された。この変更により、リアタイヤのトラクションが向上し、高速コーナーでの安定性が増している。また、サスペンションの可動域が拡大されることで、路面条件に応じた柔軟な対応が可能となり、マシン全体のパフォーマンスが向上している。

パワーユニットの進化

フェラーリの新型パワーユニット(PU)は、性能と信頼性の両立を目指した設計が進められている。エンジンカバーのデザイン変更により熱交換効率が最適化され、予選でのラップタイム短縮が期待される。フェラーリのエンジニアチームは、SF-24で直面した冷却システムの課題を克服するべく、ラジエーター配置の見直しを行った。この変更により、マスセンタリングが強化され、ダイナミクスの向上が見込まれる。

また、エンジンマップの最適化により、パワーデリバリーが滑らかになり、予選モードでの大幅なタイム短縮が可能になるとされている。グアルティエリ率いるパワーユニット開発チームは、信頼性の向上とともに、レース全体を通じて持続可能なパフォーマンスを実現することを目標としている。

Lewis Hamilton testing the Ferrari F1SF 75 on the Fiorano circuit, at Maranello, Italy, ©Scuderia Ferrari S.p.A.

ハミルトンとルクレールへの期待

プロジェクト677の最終的な成功は、ルクレールとハミルトンという2人の卓越したドライバーによって大きく左右される。ハミルトンは経験と開発能力でチームを支え、ルクレールはその若さと情熱でマシンの限界を押し広げるだろう。

特にハミルトンは、過去のメルセデスでの経験を活かし、新しいマシンのセットアップやパフォーマンス向上に大きな貢献を果たすことが期待されている。一方、ルクレールは、その高い適応力を活かし、マシンの潜在能力を最大限に引き出すことができるだろう。この2人がどのように新型マシンを操り、フェラーリの勝利を取り戻すのか、その瞬間を目撃するのが待ち遠しい。

フェラーリのプロジェクト677は、技術的な挑戦とドライバーのスキルの融合を象徴するマシンだ。2月19日のデビューが迫る中、この新型マシンがフェラーリに新たな栄光をもたらすかどうか、注目が集まる。