F1の2025年シーズンが、伝統のアルバート・パーク・サーキットで開幕を迎えた。オーストラリアGPの金曜フリー走行は、各チームが冬の間に積み重ねてきた努力の成果を披露する場となり、同時に週末のレース展開を占う重要な指標となる。シャルル・ルクレールが最速タイムを記録し、フェラーリの復活を印象付けたが、週末の天候は不安定で、雨の予報も出ているため、フリー走行の結果がそのまま決勝に繋がるとは限らない。晴天の下でのスピードがそのまま結果に結びつくのか、それとも雨が波乱を巻き起こすのか、いくつかの注目点をより深く掘り下げてみよう。

フリー走行で見えた勢力図:フェラーリとマクラーレンの躍進
フリー走行で最も注目を集めたのは、フェラーリとマクラーレンのパフォーマンスだった。
フェラーリの新車「SF-25」にはプルロッド式のフロントサスペンションが導入されており、特に縁石を多用するアルバート・パークのようなサーキットで効果を発揮。ルクレールはマシンとの一体感をいち早く築き上げ、安定したラップタイムを刻んだ。この走りは、フェラーリが今シーズンにかける意気込みを象徴している。
マクラーレンも好調で、オスカー・ピアストリがルクレールに肉薄するタイムを記録。ランド・ノリスもFP1でトップタイムをマークし、チーム全体の速さを示した。昨シーズン後半から勢いを増していたマクラーレンは、その流れを維持したまま新シーズンを迎えたようだ。特にマシンの空力性能が向上し、高速コーナーでの安定性が増したことがタイムアップに貢献していると考えられる。

マクラーレンは本当に倒せるのか?
マクラーレンは、多くの予想で最有力候補と見られていた。その理由は、驚異的なロングランペースにある。1周のタイムでは、オスカー・ピアストリとランド・ノリスがそれぞれ2位と3位につけ、トップのシャルル・ルクレールから約0.1秒遅れだった。多くの専門家は、マクラーレンがまだ実力を隠している可能性があると見ている。
フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールも、ルクレールの最速タイムだけを根拠に楽観視しているわけではない。「ロングランでも、マクラーレンとはそれほど差がなかった」と語った。最高速では両チームが拮抗しており、その差はわずか0.5km/h。3つのセクターすべてで、ルクレールがノリスを数百分の数秒上回る形となった。レースシミュレーションの結果では、ややマクラーレンが優勢とみられている。
ノリスはミディアムタイヤで11周を走行し、平均タイムは1分21秒903で最速だった。ルクレールは3周多く走行し、平均1分22秒140を記録。しかし、最後の2周でパワーを上げていた点を考慮する必要がある。チームメイト同士の比較でも同様の傾向が見られ、ピアストリは11周を1分22秒110の平均タイムで走破。ハミルトンは13周の平均が1分22秒228だった。

レッドブルの苦悩
一方、昨シーズンのドライバーズタイトルを獲得したレッドブルは、フリー走行で苦戦を強いられた。マックス・フェルスタッペンはマシンのバランスに不満を示し、特にセクター1とセクター3でのコーナリングに課題を残した。レッドブルは昨年と比較して、マシンの基本コンセプトを大きく変えなかったが、それが裏目に出た可能性もある。ライバルの進化に対し、レッドブルは足踏み状態にあるのかもしれない。チームメイトのリアム・ローソンも下位に沈み、予選に向けてチーム全体の早急な対策が求められる。
フェルスタッペンは心配すべきか?
マックス・フェルスタッペンは、苦戦しながらも、最初のプラクティスには比較的満足していた。カルロス・サインツにラップを妨害されながらも、ランド・ノリスから0.4秒遅れの5番手につけた。しかし、午後のプラクティスではクリーンなラップを刻むことができず、ターン3でミスを犯し、アタックを断念。その後も粘り強く周回を重ね、最終的に7番手まで浮上したが、トップとの差は0.624秒に広がっていた。
フェルスタッペンはその後、13分間ピットに留まり、ミディアムタイヤでのロングランに挑戦。しかし、残り9分でショートランに切り替えた。この間にセットアップの変更が行われ、異なるフロントウイングも試された。「最初のプラクティスと比べて、マシンは悪化した」とヘルムート・マルコは語っている。
一部のコーナーでは再び不安定な挙動が見られ、レッドブル陣営の分析によると、マクラーレンが0.3秒先行し、その後にフェラーリとフェルスタッペンが続いているという。レッドブルRB21にまだ課題が残っていることを示す一つの証拠が、リアム・ローソンのラップタイムだ。ニュージーランド人ドライバーは1周あたり0.6秒、ロングランではチームのエースから1.2秒遅れていた。「もう少し差を縮めてほしいね」とマルコは期待を込めて語った。

レーシングブルズとメルセデスの戦略:異なるアプローチ
レーシングブルズでは、角田裕毅が4番手に入る好成績を収め、チームのポテンシャルの高さを示した。「VCARB 02」はロングランでも安定したペースを維持し、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が少ないことが強みだ。ルーキーのイザック・ハジャーも健闘し、チームに新たな風を吹き込んでいる。今シーズン、より上位を目指すために体制を強化したレーシングブルズ。その成果が早くも表れ始めているのかもしれない。
メルセデスはフリー走行でロングランに重点を置いたプログラムを実施。ジョージ・ラッセルはハードタイヤで安定したペースを維持し、タイヤマネジメント能力の高さをアピールした。昨シーズンの課題だったタイヤのデグラデーションを克服しつつあるメルセデスは、決勝レースでの巻き返しを狙っている。予選での一発の速さではフェラーリやマクラーレンに劣るかもしれないが、決勝では持ち前の戦略とタイヤマネジメントを駆使し、上位を目指すだろう。

天候がもたらす波乱:雨天レースの可能性と戦略
レースの行方を大きく左右するのが、日曜日の天候だ。現在の予報では決勝日に雨が降る可能性が高く、そうなればフリー走行の結果は大きく意味を失う。ウェットコンディションでは、ドライバーのスキル、マシンの特性、そしてチームの戦略が複雑に絡み合い、予想外のドラマが生まれることが多い。
特にフェルスタッペンはウェットコンディションに強く、雨天時には巻き返しが期待される。しかし、雨のレースではセットアップ、タイヤ選択、ピットストップのタイミングなど、あらゆる要素が勝敗を左右する。各チームは雨天に備え、様々なシミュレーションを行い、戦略を練っていることだろう。
アルバート・パーク・サーキットは市街地コースでありながら、高速コーナーと低速コーナーが混在するテクニカルなレイアウトを持つ。雨が降れば路面状況が刻々と変化し、ドライバーは常に対応を迫られる。また、コース幅が狭いためオーバーテイクが難しく、ピットストップのタイミングが勝敗のカギを握る。

開幕戦は波乱の予感、各チームの戦略とドライバーのスキルが試される
オーストラリアGPのフリー走行は、各チームの現状と戦略を垣間見る貴重な機会となった。フェラーリとマクラーレンが速さを見せた一方で、レッドブルは苦戦し、レーシングブルズが躍進するなど、勢力図の変化が見られた。そして、決勝で雨が降れば、この勢力図はさらに大きく変化するだろう。
開幕戦では、各チームの戦略、ドライバーのスキル、そして天候といった様々な要素が絡み合い、予想外のドラマが生まれる可能性が高い。オーストラリアの空はどのような結末をもたらすのか。ポールポジション争い、そして決勝レースの行方から目が離せない。