2025年F1シーズンの開幕戦となるオーストラリアGPは、アルバート・パーク・サーキットを舞台に激しい戦略戦が展開されることが予想される。特に、日曜日の天候が不安定であることが明らかになっており、各チームは3つの異なる戦略シナリオを考慮しなければならないだろう。果たして、どのチームが最適な判断を下し、レースを制するのか。本稿では、可能性の高い3つの戦略シナリオを詳しく解説する。

シナリオ1:ドライコンディションならワンストップが有力
もし予報されている雨が降らず、レースが完全なドライコンディションで進行した場合、各チームはシンプルなワンストップ戦略を採用する可能性が高い。理由としては、
- サーキットにラバーが乗った状態が維持される
- ピレリの新コンパウンドが2024年型よりもグレイニングが少ない
といった要因が挙げられる。特に、C3(ハード)タイヤは耐久性に優れ、ミディアム(C4)とのバランスも良好なことがテストから明らかになっている。そのため、トップチームはミディアムでスタートし、レース中盤でハードに交換するワンストップ戦略を選択する公算が大きい。
また、グリッド後方のチームにとっては逆の発想もある。ハードタイヤでスタートし、セーフティカーが導入された際にアドバンテージを得るという作戦だ。メルボルンは高速サーキットであり、クラッシュやトラブルによるセーフティカー導入の可能性が高いため、リスクを冒して戦略を逆転させるチームも現れるかもしれない。
シナリオ2:夜間の雨で路面がグリーンならツーストップ戦略も視野
夜間に雨が降り、レース開始時点で路面が乾きつつある場合は、ツーストップ戦略が有力となる。なぜなら、
- 路面にゴムが乗っておらず、グレイニングが発生しやすい
- ミディアムタイヤのデグラデーションが進みやすい
といった状況が予想されるからだ。この場合、リーダーたちはミディアムでスタートし、その後2セットのハードを使って58周のレースを乗り切ることになる。
また、グリーンな路面では、特定のチームが異なる戦略を採用する可能性もある。例えば、マクラーレンがフェラーリやレッドブルに対してミディアムで0.2~0.3秒のアドバンテージを持っているというデータがあり、戦略の違いが結果に大きな影響を与えるかもしれない。

シナリオ3:雨の影響でウェットコンディションの戦略が鍵に
現時点で最も可能性が高いとされているのは、夜間および日曜日に大雨が降るケースだ。この場合、スタート時の状況によって戦略が大きく変わる。
- セーフティカースタート(フルウェット)
コース上に大量の水が残っている場合、レースはセーフティカー先導のもと開始される。ここでは、タイヤの摩耗とレースの進行を見極めながら、インターミディエイトやドライタイヤへの交換のタイミングを慎重に判断することが求められる。 - インターミディエイトスタート
雨が弱まり、路面が徐々に乾いていく状況では、各チームがインターミディエイトタイヤをほぼスリック状態まで摩耗させることで、タイヤ交換のタイミングを最適化することが重要となる。ドライラインが形成されれば、ハードタイヤに履き替えて最後まで走り切ることが理想的な戦略になるだろう。
さらに、2025年シーズンから導入される新型ウェットタイヤの影響も見逃せない。このタイヤはオーバーヒートを抑えつつ、作動温度域を広げるよう設計されており、従来のウェットタイヤと比べてよりインターミディエイトに近い特性を持っている。もしこの新型タイヤが適切に機能すれば、これまで頻発していた「セーフティカースタート後にすぐインターミディエイトへ交換する」という展開を減らし、レースの流れを大きく変える可能性がある。

鍵を握るのは天候とタイヤ戦略
2025年のオーストラリアGPは、天候がレースの命運を握ることになる。ドライならワンストップ、路面がグリーンならツーストップ、そしてウェットなら適切なタイヤ交換のタイミングが勝敗を分ける。
特に、新しいウェットコンパウンドの性能が未知数なこともあり、各チームはFP3やレース前のウォームアップで慎重にデータを収集し、最適な戦略を見極める必要があるだろう。果たして、2025年シーズンの幕開けを制するのはどのチームなのか。オーストラリアGPは、まさに“戦略の妙”が試されるレースとなる。