角田裕毅のレッドブルデビューは、日本GPという停滞したレースの中で、期待外れの結果に終わった。グリッドポジションの悪さがそのまま結果に反映された形だ。つまり、見出しになるような数字は散々だった。予選15番手、サインツのペナルティでグリッドは14番手に繰り上がったが、決勝は12位フィニッシュでポイント圏外。

「フェルスタッペンのようである必要はない」…とはいえ
角田にフェルスタッペンと同等の走りを求められているわけではない。彼に言い渡されているのは、戦略的に絡みながらチームに良いフィードバックを返すこと、そしてトップ勢に近づき、安定的にポイントを獲得することだ。だが、それでもなお、この結果は、リアム・ローソンをたった2戦で降ろしてまで角田に交代させたレッドブルが望んでいたものではないし、角田自身が思い描いていたものでもない。
崩れた予選、響いたウイングの選択
週末の出だしは好調だったが、FP2やFP3での火災や赤旗の影響もあり、走行距離を伸ばせなかったし、予選のシミュレーションも中途半端に終わった。そしてその影響が肝心な予選で現れた。Q2でウォームアップに失敗し、Q1のタイムも更新できず、Q2で脱落してしまった。すべてをまとめきれず、タイヤの準備をうまく整えられなかったのが原因だと角田は説明した。そしてその流れが、日曜の厳しい展開へとつながっていった。
ただ、Q3に進出できるだけのスピードは持っていた。これは、ローソンがレッドブルでの2戦で見せたパフォーマンスを大きく上回る。だからこそ角田とレッドブルは、結果は違っていたかもしれないと前向きに捉えており、そこに見えたポテンシャルが「見た目ほど悪くはなかった」と言える理由になっている。

序盤の攻防、しかし伸びない直線スピード
レース序盤、角田はまずローソンの後ろに留まらざるを得なかった。ターン2の脱出で接触を避けるためにアクセルを緩めなければならなかったからだ。だがその後、角田は1周をかけてローソンにプレッシャーをかけ、レーシングブルズのドライバーがスプーンカーブの進入でイン側を守ろうとしたとき、ラインが窮屈になったことで失速。そのミッドコーナーでの失速に乗じて、角田は13位へとポジションを上げた。
問題はここからだった。すぐにDRS圏内までガスリーに接近したが、直線スピードが足りず、オーバーテイクできなかった。同じことが第2スティントでも起きた。角田はアンダーカットでガスリーの前に出たものの、今度はアロンソの後ろで詰まってしまった。
「同じ週末があったら違う選択をする」
その原因となったのが、角田とレッドブルが予選用に選んだウイングだった。よりダウンフォースの大きいタイプを選んだため、ドラッグも増え、直線が伸びなかった。一方フェルスタッペンは小さなウイングを選び、それを最大限に活かした。
角田は、もしやり直せるなら別の選択をしたと語っている。セッションが乱れ、さらにレースでは雨の可能性もあったため、無難なセットアップを選んだが、実際はもう少し不安定でも問題なかったと感じているようだ。

ホーナーの評価と、次戦への意気込み
ダーティエアの中に長時間留まったこともあり、角田のペースはチームメイトのフェルスタッペンとは大きく差があった。また、いくつかのミスもあって、全体としてやや荒いレースだった。スローダウンラップでは無線で謝罪していたが、レース後には「ポジティブなスタートは切れたと思う」とも語っている。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーもレース後、角田がチームとマシンにしっかり適応してきていると評価し、次のレースではさらに前進すると期待を寄せていた。
やや楽観的な意見にも見えるが、それが現実的な評価だとも言える。しかも、ここからバーレーン、サウジアラビアと続く3連戦が控えており、勢いをつけるには絶好のチャンスだ。

「バーレーンからはもっと期待していい」
「良いことだと思う」と角田は言う。「今週末はネガティブなスタートじゃなかった。むしろポジティブだったと思う。結果を除けばね」。
「この経験、この週末で得た進歩とスピードを活かして、前に進み続けるだけ。バーレーンからはもっと期待してる。絶対に、今回以上の走りをするよ。ただ、もっとプッシュするだけだ」。と角田はもう前を向いて歩き出している。