2025年のF1シーズンに向けたプレシーズンテスト直後、いろいろな予想がなされた。そしていま、シーズンはすでに本格化し、3戦を終えたF1サーカスは、序盤3連戦の中盤戦として再びバーレーンへと戻ってきている。
戦力図は、当初の予想とは少し違ってきている。いくつかのチームはより力を見せていて、逆にテストでは良さそうに見えたチームがそのポジションを明け渡すことになった。3レースを終えた今となっては、各チームの純粋な速さの序列がある程度見えてきている。
バーレーンGPを目前に控えた今こそ、当初のチーム順位を見直して、現在のパフォーマンスに基づいて再評価してみよう。

【ザウバー】——遅さに抗うも、まだトンネルの中
⭐️☆☆☆☆(星1)
コンストラクターズランキング:9位(6ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:10位(スーパ―タイム:101.603%)
※スーパータイムとは、その予選の最も速いタイムに対して、どれほど遅れているかを示す指標
2025年もザウバーはグリッド最後尾に沈んでいる。マシンC45は、昨年型の延長線にある設計で、抜本的な進化を欠いている。ヒュルケンベルグが雨絡みのオーストラリアで7位入賞を果たしたが、それ以外のレースでは純粋なペース不足が露呈している。
しかし、光明もある。ビノットCOO/CTO体制のもとで開発のテンポは上がりつつあり、ジョナサン・ウィートリー新代表のリーダーシップも徐々に浸透。将来のアウディへの移行を見据えた体制づくりは着実に進んでいる。ただ、2025年に関して言えば“種まきの年”であり、成績に一喜一憂すべきではない。

【レーシングブルズ】——中団上位に食い込むサプライズチーム
⭐⭐⭐⭐☆(星4)
コンストラクターズランキング:8位(7ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:5位(スーパ―タイム:100.640%)
今季最大のサプライズと言っていいのがレーシングブルズだ。VCARB 02は柔軟かつ鋭く、予選・決勝ともに中団トップを争える性能を備えている。角田裕毅はすでに複数回Q3進出を果たし、ハジャーも中国と日本でポイント圏内を争った。
マシンの挙動は安定しており、特にコーナリングでのフィーリングが良い。一方で、いつものように戦略面では課題を残し、オーストラリアと中国での失点はその象徴だ。だが、チームとしての地力は着実に向上しており、角田のレッドブル昇格やローソン復帰も含め、注目度の高いチームとなっている。

【アストンマーティン】——「つなぎの年」の現実と限界
⭐⭐☆☆☆(星2)
コンストラクターズランキング:7位(10ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:8位(スーパ―タイム:101.264%)
2026年に向けての橋渡し——それが今季のアストンマーティンを象徴する言葉だ。AMR25は決して悪いマシンではないが、Q3進出には常に「あと0.2秒」が足りない。ストロールが全ポイントを稼いでいる一方で、アロンソは不運とマシン特性に翻弄されている。
最大の焦点は、ニューウェイ加入によって“未来”が約束されていること。そのため、チームも今季を無理に攻めず、確実に基盤を整えている。とはいえ、現在の低迷があまりに長引くと、ドライバーのモチベーションやスポンサーへの影響も懸念されるところだ。

【ハース】——“静かなる改革”が着実に成果へ
⭐⭐⭐☆☆(星3)
コンストラクターズランキング:6位(15ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:9位(スーパ―タイム:101.551%)
小松代表のもと、ハースはようやく“感情ではなく論理”で動く組織へと生まれ変わった。プレシーズンでのレース重視の姿勢に続き、実際のレースでもアップグレードの成果が結果に直結している。
オーストラリアの低迷から一転、中国・日本では中団争いに割って入り、ベアマンのQ3進出・ポイント獲得も大きな成果だった。特筆すべきは、問題を即座に技術的に解決している点。ここ数年のハースにはなかった“再現性のある強さ”が育ちつつある。

【アルピーヌ】——速さはある、結果が出ない“もどかしさ”
⭐⭐☆☆☆(星2)
コンストラクターズランキング:10位(0ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:7位(スーパ―タイム:101.211%)
スーパ―タイム上では中団上位を記録しているにも関わらず、アルピーヌは開幕3戦を終えて未だ0ポイント。A525はデビッド・サンチェスによる設計でパフォーマンス自体は高いが、クラッシュ、失格、判断ミスと“自滅”の連続だ。
ガスリーは時折輝きを見せるが、ドゥーハンは週末を通じての安定性を欠いている。クルマのポテンシャルは間違いなく中団最上位クラスであり、ノーミスの週末さえ過ごせれば、すぐにでも勢力図をひっくり返す力はある。まさに「チーム力」が試されているチームだ。

【ウィリアムズ】——改革の成果、今まさに開花中
⭐⭐⭐⭐☆(星4)
コンストラクターズランキング:5位(19ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:6位(スーパ―タイム:100.844%)
ジェームズ・ボウルズ代表が主導するチーム再建の成果が、2025年ついに形となって現れてきた。FW47は軽量でバランスの良いマシンに仕上がっており、アルボンはそれを見事に乗りこなして、3戦すべてでポイントを獲得している。
サインツはやや出遅れているが、予選での修正とレースペースの改善が見えつつあり、もうすぐチームの得点源として機能するだろう。特に鈴鹿でのオーバーテイク連発は復調の兆しだった。中団の中でも「組織力」「マシン性能」「ドライバー能力」の三拍子が揃った、注目株の一角である。

【フェラーリ】——理想と現実の“0.2秒差”に泣く巨人
⭐⭐⭐☆☆(星3)
コンストラクターズランキング:4位(35ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:4位(スーパ―タイム:100.490%)
ルクレールとハミルトンを擁するフェラーリは、明らかに強力な陣容を持ちながら、あと一歩でトップに届かないもどかしさに苦しんでいる。マシンには速度の片鱗があるが、それをフルに引き出せる状態に至っていない。
重量違反やプランク摩耗など、細かなトラブルにも足を引っ張られ、実力が正確に反映されていない側面もある。テストでの懸念だったタイヤ摩耗も今後の懸念材料だ。予選・決勝ともに“決定打”が出せていない今、早期のアップグレードが必須となる。

【レッドブル】——王者の存在が組織を救う
⭐⭐⭐⭐☆(星4)
コンストラクターズランキング:3位(61ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:2位(スーパ―タイム:100.236%)
RB21は過去のレッドブルとは一線を画すように見えた。実際、縁石乗り上げ時や、急減速するときの安定性は改善された。しかしながら、ドライバビリティにクセがあり、扱いが極めて難しいのは、変わりがなかった。だが、フェルスタッペンという“例外的な存在”が、RB21をまるで別物に変えてしまっている。
彼の精密な走りは、マシンの弱点を帳消しにし、どのサーキットでも表彰台争いを演出する。ローソンや角田が苦戦するのも当然であり、フェルスタッペンの力をもってして初めて「強いレッドブル」が成立している構図だ。これは同時に、マシンとしての“限界”をも示している。

【メルセデス】——混迷を抜けた“シルバーアロー”の復活
⭐⭐⭐⭐☆(星4)
コンストラクターズランキング:2位(75ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:3位(スーパ―タイム:100.358%)
今季のメルセデスは、ここ数年で最も完成度の高いマシンを手にしている。シミュレーションと現実の一致率が高まり、自由なセットアップが可能となった今、ラッセルは安定して表彰台圏内を走り、アントネッリもすでにチームの“未来”として存在感を放っている。
課題があるとすれば、マクラーレンやフェルスタッペンとの「決定的な差」がまだ縮まり切っていない点だが、ここまでの進化を見れば、それすら時間の問題だろう。

【マクラーレン】——“最速”と“安定”を手に入れたタイトル候補
⭐⭐⭐⭐⭐(星5)
コンストラクターズランキング:1位(111ポイント)
3戦後のパフォーマンス順位:1位(スーパ―タイム:100.005%)
予想通り、マクラーレンは今季の“最速”チームである。MCL39は決勝での一貫性、タイヤへの優しさ、そして予選でも安定して速いという三拍子揃ったマシン。ノリスとピアストリも高い集中力でその強さを引き出している。
チームが抱える唯一の難題は、ドライバー同士の競争が強まった時にどう対応するか、という点だ。戦略的な分岐や優先順位の明確化など、タイトル争いが本格化するにつれ、チーム内マネジメントが試される。だが、それも今季の「栄光への試練」にすぎない。
