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圧巻のマイアミ支配:マクラーレンが見せた完全勝利_マイアミGP観戦記

2025年のマイアミGPでは、マクラーレンが圧倒的なパフォーマンスでレースを支配した。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、予選と序盤こそマックス・フェルスタッペンに後れを取ったが、一度彼をオーバーテイクすると、その後は他のライバルを寄せ付けず、見事な戦略とタイヤマネジメントで1-2フィニッシュを達成した。一方、レッドブルはブレーキの問題や、タイヤの摩耗によるペース不足に苦しみ、順位を落とす苦しい展開となった。ここでは、マクラーレンのレース運びに焦点を当て、彼らがいかにしてこの支配的な結果を手にしたのかを詳しく分析していこう。

マクラーレンの戦略とタイヤマネジメントが光った
マイアミGPで最も印象的だったのは、マクラーレンの速さだけでなく、その戦略の的確さとタイヤの扱いの巧みさである。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、高温多湿なコンディションの中で、特にタイヤ温度の管理に優れていた。これにより、他チームに比べて明らかに安定したペースを維持し続け、レースの主導権を握った。

レース序盤で決した勝負
オープニングラップでは、ノリスがフェルスタッペンと激しく競り合う中、フェルスタッペンがターン1でブレーキングを遅らせた結果、フロントタイヤをロックさせオーバーシュート。ノリスはその隙を突こうとしたが、フェルスタッペンが(いつものように)車幅を寄せたため、コース外に出てしまい、大きく順位を落とし一時6位まで後退した。

その間にピアストリは3位に浮上し、ペースの上がらないアントネッリをパス。14周目にはフェルスタッペンをオーバーテイクしてトップに立った。一方のノリスは18周目にようやくフェルスタッペンを抜いて2位に浮上したが、その時点でピアストリとの差は9秒。これで勝負の大勢はほぼ決まり、マクラーレンは以降レースを完全にコントロールした。

VSCが生んださらなる優位
レース中盤に導入されたVSC(バーチャル・セーフティ・カー)登場時のタイヤ交換は、マクラーレンにとってさらに有利に働いた。フェルスタッペンはVSC登場前にタイヤ交換を済ませていたが、マクラーレン勢はVSC登場時にタイヤ交換し、さらに差を広げた。その後も、タイヤを温存しつつペースを維持し、ギャップを拡大することに成功した。

VSC終了後、ピアストリは再び鋭いペースを見せ、追いすがるフェルスタッペンとの間に決定的な差をつけた。また、VSC中にタイヤ交換を行ったジョージ・ラッセルはピットアウト後にフェルスタッペンをオーバーテイクし順位を上げたものの、マクラーレンには全く届かず、2台の強さが際立つ形となった。

タイヤマネジメントで際立った差
マクラーレンの成功の要因には、ドライバーの技術とチーム戦略の優秀さがあるが、中でもタイヤマネジメントの能力は群を抜いていた。ノリスとピアストリは、デグラデーション(タイヤの性能劣化)の進行が遅く、それでも速いペースを維持し、レース終盤でも圧倒的な走りを見せた。

一方、フェルスタッペンはレース全体を通じてタイヤのオーバーヒートやブレーキの問題に苦しみ、ペースを上げられなかった。この違いが、最終的な順位と結果に大きな影響を与えた。

レッドブルの反省とホーナーのコメント
レース後、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、マクラーレンの強さを素直に称賛した。

「マクラーレンにはお見事と言いたい。あのコンディションであのようなタイヤの使い方ができるのは、まさに別のリーグだった。彼らは本当に見事な仕事をした」とコメントし、マクラーレンのタイヤ戦略と競争力の高さを認めた。

レッドブルの新フロアと今後の展望
今回、レッドブルはフェルスタッペンのマシンに新しいフロアを投入していた。これはダウンフォースの増加を狙ったもので、バランスの改善というよりは空力性能の向上を目的としたものであった。

ホーナーは「根本的な課題は空力だ」と認めたうえで、今後は実走データをもとにさらなる改善を進めていく方針を示した。また、次戦以降はヨーロッパでの開催となり、気温が下がることで状況が変わる可能性についても触れた。「気温が下がれば、我々にもチャンスがある。今後は全く違う展開になるかもしれない」と、巻き返しへの意欲を示した。

シーズン後半に向けた争い
マイアミGP終了時点で、フェルスタッペンはドライバーズランキングでピアストリに32ポイント差をつけられ、レッドブルはコンストラクターズランキングでマクラーレンに141ポイントの差をつけられている。

ホーナーは「まだシーズンは長い」と語り、次戦からの巻き返しが鍵になると強調。今後の展開次第では、レッドブルとマクラーレンの差が縮まる可能性も十分にあるだろう。