2026年のF1を語る際、多くの議論はどうしてもパワーユニットに集中しがちだ。電動比率の大幅な引き上げ、MGU-Hの廃止、燃料とエネルギーマネジメントの重要性――確かに、それらはこの新時代の根幹を成す要素である。だが、デトロイトで披露されたレッドブル・レーシングとレーシングブルズの2026年レンダリングを注意深く眺めると、このレギュレーション改革が「エンジンだけの革命」ではないことがはっきりと見えてくる。むしろ、車体設計そのものの思想が、根本から書き換えられつつあることを示す材料に満ちている。

空力の起点となるフロントウイング
まず印象的なのは、フロントウイングに対する扱い方だ。3エレメントに制限されたウイング形状は、一見すると2009年以前のF1を思い起こさせる。当時はアウトウォッシュ(タイヤの外側に空気を押し出す)の概念が確立されていなかった時代だ。新レギュレーションでは、フロントウイングのエンドプレートの位置によって、空気の流れがマシン中央に寄るように誘導されている――アウトウォッシュではなくインウォッシュの方向性だ。
レッドブルとレーシングブルズのどちらも大きく湾曲したメインプレーンを採用しているが、レッドブルのフロントウイングは中央部分がスプーン形状でより強調されている。これにより、中央部分でより多くのダウンフォースを生み出し、空気をノーズ下部へ持ち上げている。そして、ウイングの両端では、フロアに向けての流れを整えている。つまり、フロントウイングはダウンフォースを生むだけでなく、マシン全体の流れを成立させる役割も担っている。
対照的に、レーシングブルズのフロントウイングはより均質で、角ばった要素が強い。ここには、極端な空力解釈よりも、再現性と安定性を優先する姿勢がにじむ。レッドブルが示す「攻めた解釈」と、レーシングブルズが示す「堅実な開発」は、2026年における開発の姿勢を象徴しているようにも見える。

プッシュロッド式サスペンションが再び主流に
サスペンションレイアウトの変化も、この新時代の設計思想を理解するうえで欠かせない。2022年以降、多くのチームがプルロッド式を選択してきたが、今回のレンダリングではフロントもリアもプッシュロッド式となっている。これは単なる懐古趣味ではなく、パッケージングと空力、そして運用面を含めた総合判断だ。
車幅が狭くなり、フロント周辺の空力密度が増す2026年マシンにおいては、調整の容易さや整備性を確保しつつ、空気の流れを阻害しない構造が求められる。その結果として、より「素直な」プッシュロッドが最適解として浮上してきたと考えるべきだろう。特にリアでのプッシュロッド継続は、コークボトル周辺の流れをクリーンに保ち、ディフューザーを最大限に活かすための必然的な選択に見える。

バージボード、再び開発の余地あり?
2026年で復活するバージボードもまた、過去の延長線上では理解できない存在だ。かつてのバージボードは、タイヤ由来の乱流を外へ外へと押し出し、結果として深刻なダーティエア問題を生んだ。しかし2026年の新バージボードは構成が異なり、FIAの「インウォッシュ維持」という方針を反映している。とはいえ、レッドブルとレーシングブルズの両チームは、この2枚構成のバージボードがどれほど自由に解釈できるかを示してくれた。
先端のバージボードはどちらも1枚板だが、レーシングブルズはこれをフロアマウントへと滑らかにつなげている。さらに両チームは「ベネチアンブラインド方式」を採用しており、上方からの乱れた空気を整流しやすい構造になっている。レーシングブルズはさらに、シャシー側面に補強ステーを追加している。
バージボードのスラットが1つの連続した構造であれば、これは完全に合法だ。ここは2026年マシンの中でも、最も解釈の余地が大きく、同時にFIAの監視が最も厳しくなるエリアだろう。わずかな自由度の中で、どこまで空気を支配できるか。そのせめぎ合いが、この世代の開発競争を象徴するものになる。

コークボトル形状、再び存在感を強める
コークボトル形状が再び強調されている点も見逃せない。ベンチュリートンネルが姿を消し、車体全体がコンパクト化するマシンは車幅が狭くなったため、空気の流れを短くまとめやすくなっている。引き続きサイドポッド上面からダウンウォッシュを行う設計は必要だが、その後端部はよりスムーズにリアエンドへとつながる。ディフューザー上面にも空気を流す必要はあるが、マシン形状自体がダウンウォッシュとインウォッシュを同時に成立させやすい構造になっている。
これにより、リアエンドの「コークボトル」形状が再び強調されている。フロアへの供給、リアタイヤから空気を遠ざける流れ、その全てが早めに制御可能となる。サイドポッド上面からのダウンウォッシュと、内側への収束を同時に成立させやすい車体形状は、エネルギー効率を最優先とする新時代のF1において、極めて合理的な解答だと言える。

リアウイングは現時点では制約が強め
一方で、リアウイングは現時点では最も自由度が低い領域に見える。3エレメント構成とアクティブエアロによる2モード切り替えは柔軟性を与える一方、ビームウイング廃止によって微調整の逃げ道は確実に減っている。低ドラッグと高ダウンフォースという相反する要求を、限られた構成の中でどう両立させるか。その解は、リアウイング単体ではなく、車体姿勢制御やフロアとの連携の中に求められるはずだ。これは、空力とメカニカルの境界が、これまで以上に曖昧になることを意味している。
これらのレンダリングは、完成予想図ではない。だが同時に、単なるデザイン画でもない。そこに描かれているのは、設計者たちが「どこを主戦場と見なし、どこを割り切るのか」という思考の痕跡だ。2026年のF1は、奇抜なアイデアの応酬ではなく、限られた自由度の中でいかに全体を破綻なく成立させるかという、極めて知的な戦いになる。その戦いがすでに始まっていることを、RB22とVCARB 03のレンダリングは静かに、しかし雄弁に語っている。




