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ブラウンGPはチャンピオンになれるか?

モナコGPでは、多くのマシンがブレーキング時のスタビリティに苦しみ、トラクションのなさを嘆いていた。 これは、レギュレーションでディフューザーのサイズが制限されたことと、スリックタイヤになり、タイヤグリップの前後バランスが大きくフロント寄りになり、相対的にリアのグリップレベルが大きく減少した事によるものだ。 Q1でのマッサやハミルトンのクラッシュはその典型例であった。 多くのマシンが苦しむ中、ブラウンGPは別格の速さを見せて1-2の圧勝。 彼らのマシンは確かに素晴らしい。 リアの二層式ディフューザーは、大きなダウンフォースを生成し、ブレーキング時の安定性と立ち上がりのトラクションに大きく貢献している。 ブラウンGPの二層式ディフューザーは、他のチームの二層式ディフューザーとは若干コンセプトが違う。 他のチームは中央部のディフューザーの高さを上げて、ダウンフォース稼ごうとしている。 二層目のディフューザーはそれを補佐する役目を持つ。 ところが、ブラウンGPのディフューザーは、中央部を大きく下に下げて、広大な空間を確保している。 これにより、二層目のディフューザーの空気の流れを加速し、それが一層目のディフューザーに流れる空気を引っ張り、ダウンフォース量を増加させている。 両者は、二層目のディフューザーに空気を流し、一層目のディフューザーを通る空気を加速させる部分は同じ考え方である。 ブラウンGPの画期的なところは、二層目のディフューザーの空気の流れを優先することにより、一層目のディフューザーでより大きなダウンフォースを生み出すと考えたことである。 彼らは、サスペンションのレイアウト、ギアボックス、衝撃吸収構造を、この二層式ディフューザーを実現するために、最適化している。 リアの衝撃吸収構造を情報へ曲げて、二層目のディフューザーの空気の流れを阻害しないようにしているのも、それが理由である。 他のチームのマシンは、最初から二層式ディフューザーを想定していない。 また、4戦連続使用に耐えうるようにギアボックスを強化して、大型化している。 これでは、中央部にブラウンGPのような大きな空間を生み出すことが難しい。 その為、ほとんどのチームはトヨタと同じコンセプトのディフューザーを装着している。 だが、中央部に頑丈なギアボックスや、直線形状の衝撃吸収構造が鎮座している状態では、ブラウンGP並のダウンフォースは望むべくもない。 これを変更するとなると、マシン後半部分をエンジンを除いて全て変更する大工事となる。 これは、長い時間と膨大な費用がかかる。 さらにブラウンGPのマシンはマイルドな特性を持っており、ダウンフォースの急激な変化がなく、非常にドライビングしやすいマシンになっている。 これらのマシン性能のアドバンテージ加えて、厳密な品質管理は地味ながら見逃せない。 彼らのマシンの信頼性が高いのは、高いレベルで部品の品質管理ができているからである。 そして、ロス・ブラウンが繰り出す変幻自在のレース戦略。 彼らは練習走行、予選からレース展開を読みながら、燃料搭載量を決め、予選で有利なポジションからスタートし、レースの主導権を握る。 さらには、正確でミスが少なく、タイヤに優しいバトンのドライビングがある。 ロス・ブラウンの緻密な戦略も、高いレベルで確実にこなすドライバーがいなければ、絵に描いた餅である。 これらに加えて今年、もう一つブラウンGPの快進撃を支えているものがある。 それが、シーズン中のテスト禁止である。 昨年までであれば、フェラーリやマクラーレンはなりふり構わず新しいパーツを開発し、テストしてレースに持ち込んできただろう。 ところが、今年はシーズン中のテストが禁止になった。 これにより、新しいパーツの検証は金曜日にしなければいけなくなった。 ところが、金曜日の午後はタイヤのチェックもしなければいけないので、新しいパーツのテストに費やせる時間は驚くほど短い。 そうすると、当然持ち込むパーツに関しても、数を絞らなければならない。 これは、追い上げようとするチームからすると、かなり難しい状況だ。 これらの条件を勘案すると、今のブラウンGPに死角はない。 となると、彼らの栄光への彼らの唯一の弱点は、資金問題だけだろう。 ホンダから提供された資金は100億円弱。 チームには未だ、大型のスポンサーがない。 となると、ブラウンGPは、2009年シーズンを、100億円で活動しなければならない。 ちなみに100億円とは、スーパーアグリが2007年に活動した金額とほぼ同額である。 2007年前半は好調だったスーパーアグリが後半戦に開発ができなくなり、失速したことは皆さんもよく覚えているだろう。 つまり100億円とは、F1チームが1年間なんとか活動ができるという程度の額である。 もちろん、今年はシーズン中のテストが禁止されるなど、昨年以前より費用負担は減ってはいる。 だが、マクラーレンやフェラーリに比べると数分の一の資金である。 ブラウンGPがいつ十分な額のスポンサー契約を結べるのか。 そこが、今後のポイントとなりそうである。

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