アウディがF1に参戦を計画しているとの報道が増えている。では本当にアウディはF1に参戦するのだろうか?
アウディがF1に興味があるという報道は過去にも見られた。だが最近のトーンが少し変わったのは、フォルクス・ワーゲン・グループを率いていたピエヒ氏が退任したからである。
ピエヒ氏はF1を率いているバーニー・エクレストンとの仲が悪く、バーニーがいる限りはF1に参戦しないと述べていた。
そのピエヒ氏がいなくなったのであるから、アウディがF1参戦へ大きな一歩を踏み出すと考えてもおかしくはない。
だが短期的にはアウディがF1に参戦する可能性は低いと考えている。というのもF1というモータースポーツは極めて特殊なカテゴリーとなっている。
普通のモータースポーツでは、ワークスチームが絶対でプライベートチームがワークスを負かすなどと言うことはあり得ない世界である。それくらいワークスとプライベートの差は大きい。
だがF1はその逆である。F1ではワークスチームが勝つ方が珍しい。フェラーリは一応メーカーではあるが、自動車メーカーと言うにはあまりにも規模が小さい。
またアウディがレッドブルと契約してパワーユニットを供給するという話もあるが、ニューウェイが徐々に手を引くと言われている、レッドブルはそれほど魅力的ではない。実際、今年のレッドブルは同じパワーユニットを搭載する姉妹チームのトロ・ロッソにすら負けている状態である。
アウディが元フェラーリのドメニカリと契約したことを、F1参戦と結びつける記事もあるが、ドイツのメーカーがF1に参戦するのに、元フェラーリのチーム代表とはいえ、成績も芳しくなかったイタリア人と契約する理由がよくわからない。
それにアウディのF1で活躍してもクルマが売れるとは考えにくい。
F1において勝者は1人である、他は全て負け。F1の歴史を見ても一つのチームが勝ち続けるのは難しい。その為、多くのメーカーが参加してきたが、同じくらい多くのメーカーが撤退していった。
自動車メーカーにとってF1とはそういうものである。自動車メーカーはタバコやエナジードリンクと違い、商品自体で差別化することができる。であるならば、そちらにお金をかけるというのが、まっとうな経営者の判断であろう。
もちろんフェラーリやホンダは少し違う。彼らは昔からF1に参戦してきており、彼らの歴史はF1の歴史の一部である。アウディにはそのような歴史もない。
それがいきなりF1参戦となるとは考えにくい。それにアウディが参戦するのではないかといわれている2017年は、パワーユニットのレギュレーションが大きく変わる可能性がある。そんな不確定なルールのF1にアウディが今、参戦決定するだろうか。まともな経営者であれば、そんな決定をすることはない。
少なくとも2017年のルール変更が確定してから、検討するのが普通だろう。そして、そこから決定までに数年かかり、さらにパワーユニットを作るのに数年かかる。アウディのF1参戦が実現するにしても、まだまだ先の話になるそうである。