文明の衝突 ホンダが勝てない理由
今年F1に戻ってきたホンダが苦戦を続けている。はたして彼らはいつになったら勝てるようになるのであろうか。
まずホンダが苦戦している理由の一つに、経験不足が上げられる。今のPUは2014年から導入されたのでホンダには1年の遅れしかないように見えるが、ライバルメーカーはそれ以前から自然吸気エンジンを供給していて、F1に関する知識や経験が豊富である。
またイギリスで働くエンジニア達がチームを渡り歩くのはそれほど珍しいことではない。だから自分達に足りない部分があれば、それを熟知した人間をスカウトすることは当然の話である。
だがホンダはライバルメーカーに在籍する経験豊富なエンジニアを引っ張ることを頑なに拒絶している。それは彼らのF1に活動に対するスタンスが、他のF1チームやメーカーとは全く違うことに起因している。
ホンダがF1に参戦するのは、あくまでもエンジニアが成長する場を提供することである。もちろんホンダは参戦する全てのカテゴリーで勝利を目指していることはいうまでもない。だがどんな方法を使っても勝てばいいというのも、また違うのである。
ライバルメーカーなどは優秀な人間が他にいれば、彼らをリクルートすることになんのためらいもない。数人単位でまとめて移籍させることすら珍しくない。チームの首脳陣とドライバーがまとめて移籍することもある。それでも勝てばいいのである。それが彼らのやり方である。
それでも、自分達のチームが勝てばいいという考えなのである。つまり彼らはF1に集中したF1のプロ達である。
だがホンダは違う。ホンダはあくまでも市販車メーカーである。だからF1勝つことも重要だが、人を育てるのも重要なのである。
だがF1の世界は時間が勝負になる。ホンダも進化を続けているが、ライバルもまた進化している。ホンダが挑戦と失敗を繰り返している間にもライバルメーカーは進化して、ホンダとの差を広げている。
それにホンダのPUの開発期間も短かった。他のライバルメーカーがじっくりと時間とお金をかけて開発したPUを、そんなホンダが後から追いかけるのであるから苦労して当然である。
ホンダはそれでも自分達のやり方を続けている。本来はそのギャップを短期間で埋めるために、その経験がある人を雇い、活用するのであるが、ホンダはそれを拒否している。ホンダとすれば3年ほどかけて、優勝を争えるようになればいいと思っているのかもしれない。実際、そう考えないと責任者の新井氏が更迭されない理由がわからない。
だがマクラーレンからすると3年なんて悠長な話はしていられない。少なくとも1年目に表彰台、2年目に優勝、3年目にはチャンピオンを狙うという位でないと困るはずだ。
現時点で表面化しているマクラーレンとホンダの軋轢は、このように両者のF1に対する考え方、仕事の文化の違いが表れているにすぎない。
昔のようにシーズン途中にまったく新しいPUを投入できるのであれば、ホンダのもつ豊富なリソースが活用できる。だが今は開発の制限があるために、その豊富なリソースをいかせていない。つまりホンダは自分達の強みを活かせる状況にはないということである。
そう考えるとホンダが優勝争いするためには、もう少しの時間が必要である。ただその時間が1年なのか3年なのか5年なのかはわからない。
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