メルセデスが突然失速した。シンガポールGPで予選5位と6位。決勝でもロズベルグが4位になったのが、精一杯の結果だった。
結果だけを見れば、それほど悪くもないのであるが、これが圧倒的な力を見せつけてきたメルセデスであるから大変である。
予選ではポールのベッテルに1.5秒もの差をつけられた。それまでメルセデスが三位以下に1.5秒の差をつけることはあった。だがこれではまったくの逆である。
これまでもシーズンを圧倒してきたチームはあった。だが一つのレースだけトラブルやペナルティもないのに、ここまで失速するのも珍しく、あまり記憶にない。ではメルセデスの失速はどこに原因があったのであろう。
その原因をメルセデス自身も把握していないようである。彼らも金曜日から土曜日にかけて大幅なセッティング変更をおこなったのだが、ペースに変化は見られなかった。これまでであれば金曜日にペースがなくても土曜日には復活していた。だからベッテルもポールを獲得した記者会見で、レースではメルセデスにも注意をしなければならないと述べていた。
当初、私はメルセデスのタイヤの温度が下がって、動作温度領域に入らなかったからではないかと、推測していた。シンガポールGPはナイトレースなので、タイヤの温度(特にフロントの)を維持するのが難しいからだ。だがピレリのエンジニアによるとメルセデスのタイヤはオーバーヒートもしていないし、大きな温度の低下も見られなかったと述べている。
ハミルトンもロズベルグもマシンのバランスは良かったと述べている。ただグリップとトラクションが足りないとも話している。通常、ダウンフォースがいきなり下がることは、ありえないのでこれにはタイヤが関連していることは間違いない。
今回、特にスーパーソフトタイヤはその適切な温度領域がとてもシビアで、たったのプラスマイナス1度(要するに2度の範囲)しか許容範囲がなかった。これは通常よりもかなり狭い温度領域である。
つまりメルセデスの2人はこの温度領域を外してしまったと想定できる。ちなみにウィリアムズもこの温度管理を失敗して、タイムをロスしている。
特にこのシンガポールは23ものコーナーがあるので、タイヤの温度管理を失敗してひとつのコーナーでタイムを少し失っても、合計で大きな差が出てくる。
これがメルセデスの失速の原因であると考えている。ではフェラーリはどうだったのであろうか。