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ベッテル 完勝の秘密

  ベッテルはメルセデスや他のチームも苦しんだタイヤ温度を一周にわたり、適切な温度領域に入れていたと思われる。23ものコーナーがあり、しかも夜間に予選をするとタイヤの温度は下がり、あるコーナーではグリップするが、あるコーナーではグリップしないという現象が現れる。 シングルラップの間、タイヤ温度を適切に保つという難しい仕事を成し遂げたからこそ、ベッテルは予選でポールポジションを取れた。これは簡単にできることではない。 それでもハミルトンはミドルスティントでソフトタイヤを履き、レース後半にスーパーソフトで勝負をかけようと考えていた。SCが出る確率が高いシンガポールでは、レース終盤に差が一気になくなることも珍しくないからである。だがその希望もマシンのトラブルで消えてしまった。 レッドブルのリカルドのロングランペースは、ベッテルよりも良かった。だが予選2位でスタートでベッテルに前に出られるとできることは、ほとんどない。アンダーカットを仕掛けようにも、それを用心していたフェラーリは3秒以上の差をつけて、一周先にタイヤ交換されても大丈夫なマージンを持たせていた。 ベッテルもレース中は、ペースが延びない時間帯もあった。普通はある程度のギャップを作ったら、タイヤを労るためにペースを落とすのが常套手段だが、今回だけはそれをするとタイヤ温度が下がるので、できなかったと思われる。彼もレース中、常に対や温度を保つことは難しかったということである。だが他のドライバーもタイヤの温度管理には苦しんでおり、ベッテルはそれを一番上手くこなしたことは間違いない。もしリカルドがベッテルに迫ることができていれば、ロングランペースが良かったリカルドも勝つためのペースはあったのだが、予選も含めてベッテルに勝つには、ほんの少しタイムが及ばなかった。 ではメルセデスは鈴鹿でも失速するかというと、それは疑問である。これはあくまでもナイトレースで温度が上がりにくいという特殊環境と、スーパーソフトタイヤの温度領域が極端狭かったから起こった現象であり、ハイスピードコーナーが多くタイヤへの負荷が大きい鈴鹿では何の問題もなく、いつものメルセデスが戻ってくるだろう。
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