ハミルトンとロズベルグとの差
トリッキーなコンディションのレースでドライバーの特徴がよく見られたレースだった。今のF1はドライバーがミスをすることが珍しくドライバー間の差を見る事が難しい。だから、このような難しいコンディションは見る方からするととても興味深い。
レース開始15分前に突然降り始めた豪雨が、それまでの準備を吹き飛ばした。金曜日、土曜日とロングランをして、タイヤのデグラを確認して、練ってきた作戦は全てがなくなった。
雨はすぐにやんで、フォーメーションラップ開始時にはほとんどやんでいた。だが路面には水たまりや川のようになっている部分も多く、多くの場所でアクアプレーニングが発生する状況でFIAは懸命にもセーフティカースタートを選択した。
もしセーフティカースタートにしていなければ、インターミディエイトでスタートするドライバーもいただろう。
雨がやんで22台のマシンが走れば、路面は瞬く間に乾いてくる。セーフティカーが入った周には半分位のマシンがインターミディエイトへ交換。残りの半分も翌周にはインターミディエイトに交換してレースが始まった。
この時のハミルトンの走りがすごかった。彼は路面に多くの水たまりがある状況で信じられないような走りを見せた。
彼はこのコンディションで2位のロズベルグに実質的なオープニングラップで3秒以上の差をつけた。F1において3秒は大差である。これだけ難しいコンディションではさすがのF1ドライバーも多少のマージンをとって走る。
だがマシンをコントロールできるハミルトンにとっては、コンディションは関係なかった。
この走りは雨のドニントンパークで見せたセナの走りにも匹敵する走りだった。
もしハミルトンが5位位からスタートしていれば、1周目でごぼう抜きしてトップで帰ってきただろう。
最大のライバルであるロズベルグは濡れた路面で苦労し、途中でフェルスタッペンにも抜かれて3位に後退。路面が乾いて、フェルスタッペンのリアタイヤが厳しくなってからオーバーテイクして、2位にカムバックした。
ロズベルグは予選2位からスタートして2位なので、悪くはない結果だったかもしれない。だが一度ペースを失ったロズベルグは脆い。雨のモナコでもハミルトンになすすべなく抜かれている。
これを克服しない限りロズベルグのチャンピオン獲得は難しい。ハミルトンは自分の走りに完全に自信を持っていて、ロズベルグに対して精神的に優位に立っている。
これはF1のような個人競技にとっては決定的な意味を持つ。ロズベルグがこの弱点を克服できるのか、精神的にどう優位に立つのか。ロズベルグはそれをコース上でハミルトンを打ち負かして証明しなければならない。
それができるかどうかが今後のシーズン後半を決定づけるだろう。
- F1ドライバーの視線
- ペナルティをうけたロズベルグの幸運