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マクラーレンがイモラを制圧──レッドブルとフェラーリが直面する現実:エミリア・ロマーニャGP 金曜日分析

2025年エミリア・ロマーニャGP初日のフリー走行で、マクラーレンが圧巻のパフォーマンスを披露した。一方で、王者レッドブルはアップグレードの成果を発揮できず、フェラーリは地元イモラでブレーキトラブルに苦しんだ。中団ではアルピーヌがサプライズを起こす中、シーズンの勢力図がさらに鮮明になりつつある

マクラーレン、圧倒的な総合力を見せつける

マクラーレンは今や、単に“速いチーム”ではなく、“あらゆる条件で勝てるチーム”へと進化している。それはイモラの金曜日にも明白だった。オスカー・ピアストリとランド・ノリスは、FP1とFP2の両セッションでトップタイムを記録。しかもトラフィック等の走行状況を差し引くと、ふたりの差は、どちらのセッションも数千分の数秒という僅差だ。

FP2では赤旗中断(イザック・ハジャーのスピン)もあったが、マクラーレンのロングランデータは揺るがない。他チームの分析によれば、決勝想定のレースペースでは2番手メルセデスに0.08秒の差をつけており、パドックの他チーム上級エンジニアは「数字以上の優位がある」と語る。

特筆すべきは、その速さがどのセクションでも安定していることだ。高速、中速、低速の全コーナーでタイムを刻めるシャシーバランス、そして空力効率の高さが、この総合力を支えている。

興味深いのは、FP2での最速がピアストリであった一方で、データ解析では「ノリスが全ミニセクターを完璧に繋げていれば彼の方が速かった」という点。これは、チーム内でも“本当のトップ”をめぐる緊張感ある戦いが繰り広げられている証だ。

アルピーヌ、意外性ではなく手応えを残す躍進

金曜のもう一つの主役は、間違いなくピエール・ガスリーだった。FP1では野ウサギとの接触という思わぬアクシデントに見舞われながらも、ミディアムでもソフトでも安定した速さを見せ、FP2では3番手タイムを記録した。

「走り出してすぐに、マイアミよりマシンの状態が良いと感じた」と語るガスリーは、「今年ここまででベストの金曜」とまで言い切る。これは単なる偶然ではない。新しい空力パッケージがうまく機能しており、少なくとも1ラップでの競争力は確かなものとなった。

このレースから、ドゥーハンに代わりアルピーヌをドライブするフランコ・コラピントも初日から着実に学習を重ね、Q2進出を狙える位置に浮上。予選シミュレーションではアルピーヌは5番手、ロングランでは8番手と、タイヤマネジメント次第でポイント圏争いは確実視される。

レッドブル、迷走の兆しと“王者の苦悩”

レッドブルRB21にアップグレードが施され、イモラには新しいフロアとディフューザーが投入された。しかし、金曜の走行を見る限り、その効果は限定的だった。フェルスタッペンはコーナー進入と立ち上がりでのバランスに苦しみ、「マクラーレンに抜かれた。それがすべてだ」と語った。

また、角田裕毅も「ロングもショートも限界がある」と語り、セットアップの方向性にまだ迷いがあることをにじませた。特にトラフィックとタイヤウィンドウの問題がロングランに悪影響を与えているようで、チームとしての基盤の揺らぎが見て取れる。

ただし、これが金曜日の話であることも忘れてはならない。過去にもレッドブルは初日から大きく改善し、フェルスタッペンが土曜には見違えるような速さを見せることは珍しくない。

フェラーリ、地元での期待に応えられるか

イモラを本拠とするフェラーリにとって、この週末は特別な意味を持つ。しかし、金曜の走行は決して歓迎すべき内容ではなかった。シャルル・ルクレールとルイス・ハミルトンの2人がブレーキの不具合を訴え、思うような走行ができなかった。

「変更はごくわずかなのに、ブレーキに問題が出た。こんなの初めてだ」と語ったのはハミルトン。ルクレールも落胆を隠せず、「何が起きたのか分からないが、明日には解決していてほしい」とコメントしている。

ただし、レースペースは決して悪くない。特にルクレールは、ロングランで4番手のデータを記録し、序盤の混乱を抜ければ入賞圏内に浮上する可能性もある。だが、予選での位置取りが厳しければ、追い抜き困難なイモラではそのポテンシャルを発揮できないまま終わるリスクもある。

土曜の見どころ──マクラーレン同士の戦いか、それとも“例外”の逆襲か?

土曜日の焦点は明確だ。マクラーレンの1-2体制をどこまで維持できるか、そしてその主役がピアストリなのかノリスなのかというチーム内バトル。そこに割って入るのが、復調の兆しを見せるレッドブルか、安定のメルセデスか、あるいは“地元の奇跡”を起こしたいフェラーリか──。

シーズンが進むにつれて、勢力図は徐々に固まりつつある。しかし、このイモラのようなオールドスクールなコースでは、わずかなミスが勝敗を分ける。金曜に笑ったチームが、必ずしも日曜に笑えるとは限らない──その現実を、我々は何度も目の当たりにしてきた。今週末、イモラが再びF1のドラマを生む。