フェラーリ:ハミルトンが示した改善の兆し
バクー市街地サーキットで行われた金曜フリー走行は、ルイス・ハミルトンがトップタイムを記録し、フェラーリが存在感を示した。FP1では彼自身が「めちゃくちゃだった」と振り返るほどの混乱があったが、セッション間での調整によりブレーキの不安が解消され、「ようやく完璧に作動するようになった」と満足感を語った。

チームメイトのシャルル・ルクレールは「自分の走りに納得できなかった」と悔やんだが、過去4年連続でバクーのポールを獲得している経験は無視できない。データを見ると、フェラーリは低速区間で最速を誇り、マクラーレンやレッドブルに対して0.4秒以上の差を築いた。予選トリムでの差は0.06秒に縮まるものの、チーム関係者は「我々の強みはバクーのレイアウトに合っている。決勝に向けた改善次第では表彰台以上の結果が見えてくる」と手応えを語った。今季未勝利のフェラーリにとって、ここバクーは大きなチャンスとなりそうだ。
マクラーレン:荒れた一日で速さを隠す
コンストラクターズ選手権連覇を目前に控えたマクラーレンだが、FP2は苦しい展開となった。ランド・ノリスはターン2で軽く接触した直後、数コーナー後でさらに激しくウォールにヒット。マシンは“カニ歩き”のように斜めに傾いた状態でピットへ戻り、以降の走行を断念せざるを得なかった。
「今日は自分の判断ミス。高燃料でのデータを集められなかったのは残念だが、クルマの速さには自信がある」とノリスは冷静に振り返った。
一方のオスカー・ピアストリもテックプロに接触。「少し攻めすぎただけ」と語り大事には至らなかったが、両ドライバーが揃って壁をかすめたことで、FP2は10位と12位に沈む結果となった。
ただし、予選シミュレーションでの優位は健在で、フェラーリに対してわずか0.06秒、決勝シミュレーションでも0.13秒先行している。アンドレア・ステラ代表は「数字ほど悲観的ではない。依然として我々は基準となるチームだ」と強調しており、データの欠落を補う形で土曜に臨むことになる。
メルセデス:光る一発、課題残るロングラン
メルセデスは対照的な一日を送った。体調不良で木曜のメディアデーを欠席したジョージ・ラッセルは、まだ声がかすれていたものの走行には復帰。「100%ではないが、良いリズムを掴めた」とコメントし、1周ペースで強さを見せた。
ルーキーのキミ・アントネッリはモンツァの失敗を踏まえて「焦らずにリズムを作ることを意識した」と語り、ラッセルとわずか0.009秒差のタイムを記録。チーム内での競争力を裏付けた。
だが、ロングランのデータは厳しい。マクラーレンから0.4秒、フェラーリやレッドブルからも0.2秒遅れている。エンジニアは「ストレートスピードは素晴らしいが、燃費とタイヤ劣化への対応が必要」と認めており、決勝に向けて一晩で解決策を探らなければならない。

レッドブル:復調の兆しと角田の進歩
近年の得意舞台であるバクーで、レッドブルは復調の兆しを見せた。マックス・フェルスタッペンは「マシンはかなり良かった。序盤から安定したバランスを見つけられた」と珍しく高い評価を与えた。予選シミュレーションでは首位から0.12秒差と接近しており、ポール争いに食い込む可能性は十分にある。
角田裕毅はロングランに集中。「燃料を積んだ状態のペースがかなり改善している。これなら決勝でも戦える」と前向きに語った。レッドブルは決勝ペースで3番手につけ、メルセデスを上回り、フェラーリとの差も縮めている。
マルコは「両ドライバーがマシンの仕上がりに満足している。週末は表彰台を狙える」と自信を示しており、角田にとっては来季残留に向けて大きなアピールの場となる。

ウィリアムズ:中団の主役を狙う
ウィリアムズは金曜のプラクティスで意外な存在感を見せた。アレックス・アルボンは「理想的なラップをまとめられなかった」と悔やんだが、データ上では4番手相当の速さ。カルロス・サインツも「ソフトタイヤの準備が課題」と語ったものの、全体的にはポジティブな雰囲気だ。
ジェームズ・ヴォウルズ代表は「予選・決勝ともに中団最速であることは確認できた。この流れを維持すればランキング5位を固められる」と語り、アストンマーティンとの差を広げる好機と捉えている。
週末の展望
金曜のデータは、マクラーレンの優位を完全に揺るがすものではなかった。しかし、ノリスのクラッシュで得られた情報が不完全であることから、予選・決勝に向けては不確実性が残る。

予選では、低速コーナーに強いフェラーリが最大の脅威となる。ルクレールは「まだ余力がある」と自信を見せ、ハミルトンも復調を実感しており、フロントロー独占の可能性もある。
決勝では、ロングランの改善を見せたレッドブルが大きな存在感を放つだろう。フェルスタッペンは「日曜には勝機がある」と語り、角田の堅実な走りも期待される。
メルセデスは一発の速さでポール争いに割って入る余地を残すが、決勝ペースには大幅な改善が必要。中団ではウィリアムズ、ハース、レーシングブルズが拮抗し、数秒差の激戦が予想される。
総じて、マクラーレンの戴冠は自動的に訪れるものではない。フェラーリとレッドブル、そして一発勝負に賭けるメルセデスが絡むことで、アゼルバイジャンGPはシーズンの行方を占う重要な一戦となるだろう。


