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ホンダとマクラーレン 別離の真実

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ホンダとマクラーレンに離別の噂がある。果たして彼らは本当に別れてしまうのであろうか。
状況は極めて深刻である。F1に復帰して3年目になる今シーズン、ホンダはパワー不足に悩まされている。昨シーズンはかなり改善したパワーユニットを投入し、メルセデスには敵わないまでも中団のトップを狙える位置にまではつけてきた。
そして今シーズン、いよいよトップを狙えるかと期待されていた。ところが開幕してみるとアロンソは大差でQ2落ちである。ホンダは今F1に投入されているパワーユニットの中で最もパワーがないと思われている。これはさすがに誰も予想していなかった事態である。
そしてここにきてマクラーレンがメルセデスに乗り換えるという報道がなされ始めた。だが噂されているようにシーズン途中でパワーユニットを変えることができるのであろうか。
技術的な話すれば、シーズン中にパワーユニットを変更することは可能である。ルノーがロータスを買収したのが2015年12月。ここから彼らはテストの時までにパワーユニットを搭載できるようにマシン設計を変更してきた。この間約3ヶ月弱である。だからもし今メルセデスがマクラーレンにパワーユニット供給を決めた場合、マクラーレンは夏休み明けにマクラーレンメルセデスとして参加できることになる。
だが技術的には可能なこの案もひとつ問題がある。この場合マクラーレンホンダとして獲得したポイントが無効になってしまうのである。もともと競争力がないのだから獲得できるポイント数もたいしたことがないと言われればそうなのだが、例え数ポイントであっても、シーズン途中に落とすのは痛い。
ここにきてマクラーレンがホンダとの別離を真剣に考え出したのには理由がある。ここ数年結果が残せていないチームに対して株主からのプレッシャーが強まっている。彼らはロン デニスを追い出し、早急に結果を残すよう現経営陣に求めている。
もともとマクラーレンが競争力のあったメルセデスから新しいパワーユニットが未経験のホンダに乗り換えたのはロンデニスがワークスエンジンがなければチャンピオンになれないと考えていたからである。
もともとこの契約はかつてセナプロ時代にホンダと強力なパートナーシップで勝ちまくったロンデニスとホンダの関係があったからである。そのロンデニスがいなくなった場合、この契約は極めて脆く弱くなってある。
今の経営陣は力のあるパワーユニットがあれば、メーカーはどこでもいいと考えている。
だがこの見方はあまりにも短期的なものの見方である。確かに今すぐにメルセデスに変更すれば今よりはいい結果を残せるだろう。だがチャンピオンを狙うには難しい。
というのもいまのパワーユニットはとても複雑で、それをマシンのパッケージにまとめるのはとても困難だからである。マクラーレンホンダが苦労しているのも、その部分が大きい。
今年、強いメルセデスとフェラーリが共にマシンとパワーユニットをひとつのチームとして製作しているのは偶然ではない。
マクラーレンがなにか特別なリクエストをメルセデスにしてもそれはほとんど聞き入れられないだろう。少なくともホンダは話は聞いて検討はする。そう考えると今回のマクラーレンがメルセデスへスイッチする噂はあまりにも短期的はものの見方である。
実際、メルセデスのパワーユニットを搭載し競争力があるウィリアムズも表彰台は獲得できても優勝はできていない。
だが急がなければならない理由がマクラーレンにもある。結果を迫る株主、減少するスポンサー、そして最近は人員の流失が止まらない。こういう時にチームを去るのは優秀な人からと相場が決まっている。
マクラーレンはホンダから100億円以上の資金援助を得ている。にもかかわらずマクラーレンは資金的に苦しく、結果を望んでいる。将来のことを考える余裕がマクラーレンにはもはやないのである。
マクラーレンから言われ放題のホンダにも言い分はある。今年のテスト時に出たバイブレーションはギアボックスにもかなりの原因があった。これはマクラーレン製のギアボックスである。にもかかわらずマクラーレンは一方的にホンダが悪いように言う。バンドーンが予選中におきたトラブルもマクラーレンの整備ミスである。実は最近のマクラーレンはこのような初歩的に整備ミスが多い。これも人材流出の結果なのであろう。
そんなマクラーレンに対してプライド高きホンダが黙っているわけがない。表面的には反論しないホンダだが社内では自分達が違約金を払ってでも契約を解除すべきという意見もある。さらには既存のチームを買収すべきという過激なアイディアもあるようである。
だがホンダにも弱みがある。もともとマクラーレンとの契約にこだわったのはホンダの方で、それが故に今の契約はマクラーレンに一方的に有利な内容であるという情報もある。これはホンダがマクラーレンに100億円以上支払っていることからも確認できる。マクラーレン側か強く契約を望んでいれば、このような資金提供の話は普通はしない。
そしてホンダ自身の技術力不足を疑う意見もある。実際に自然吸気エンジン時代に撤退したホンダからメルセデスに載せ替えた新しいマシン ブラウンGPをドライブしたバトンはそのパワーに驚愕したという。おそらく少なくとも数十馬力は差があったと思われる。自然吸気エンジンでどうしてそこまでパワーの差が生まれるのか理解するのが難しい。
そして開発制限も取り払われた3年目のホンダはこれまで以上に差をあけられている。普通は開発制限がなくなれば追いかける方が有利なはずである。だが実際はその逆。
理屈的にはメルセデスもホンダと同じく開発制限が緩和されたので条件は同じなのは理解できる。だがここまで差が開くと衝撃的ですらある。ホンダのパワーユニットも昨シーズンよりパワーがあると述べているから、この差はメルセデスとの開発力の差である。
さらにマクラーレンがホンダに不満を持っていることがある。それは人材のリクルートである。F1世界は狭い。だからマクラーレンからフェラーリに行きまたマクラーレンに戻る人間もいるし、幾つものチームを渡り歩く人もいる。メルセデスからルノーに移籍した人間すらいる。それがF1の世界である。移籍する際に設計図とかを持ち出せば、違法性を問われるが頭の中まで綺麗さっぱり忘れることなど出来ない相談である。
だから移籍した人間から秘密が漏れることもよくある話である。だからチームは移籍する人間に契約期間中は移籍先のチームで働けないようにするために、給与を払い続けることもある。
これでホンダか結果を残せていれば、マクラーレンも文句は言わないが、結果的にライバルより後退しているのであるから文句のひとつも言いたくなるはずである。
だがホンダのF1参戦の大きな意義のひとつが若手の人材育成である。人を育てて成長させ、結果を残す。それがホンダの大きな目的のひとつである。それを考えるとホンダがマクラーレンに言われたから、メルセデスから人を引き抜くわけにはいかないのである。
かといって既存のチームを買収してホンダチームで参戦するにも大きなハードルがある。それはマネージメントの問題である。第3期のF1活動の時にBARを買収して、ホンダで参戦した時もマネージメントを現地の人間に任せきりで、まったく結果が残せなかった。
日本企業が外国企業を買収したはいいけれど、まったくコントロールが聞かなかった話はたくさんある。ホンダのF1活動もその多くの失敗談のひとつであろう。
そんなホンダが既存のチームを買収して、チームをマネージメントできるとは思えない。ホンダもまだ失敗の記憶が新しいだけにチームの買収には二の足を踏むだろう。
マクラーレンには都合のいいことに、メルセデスはマノーに供給予定だったパワーユニットの供給能力に余裕がある。だが夏頃にメルセデスにパワーユニットを乗り換えるチームにホンダがそれまでパワーユニットを提供するはずもない。
このように考えていくと、技術的契約的にはマクラーレンとホンダの離婚の可能性は存在するが、実際問題としてシーズン中の離別は双方ともに大きな痛みを伴うものにならざるを得ない。
つまりマクラーレンの今シーズンチームの、パワーユニット変更はないというのがここでの結論である。
だがそれですべてが丸く収まるわけでもない。今年はよくても来年どうなるかは不確実なことが多い。
F1の世界は何が起こっても驚かない。ホンダが撤退し無償譲渡したチームがチャンピオンになり、それがメルセデスに買収され、最強チームになるのである。ホンダが撤退する時にこんな話をすれば、愚か者扱いされたのは間違いない。
そう考えるとホンダも大企業のプライドを捨て、いちから出直すくらいの覚悟がなければ、復活への道は遠いと言わざるを得ない。