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ペレスのアドバンテージを覆した、フェルスタッペン勝利への3つの要因

結果だけ見ると圧倒的なレッドブル1-2といういつものレースでしたが、フェルスタッペンは日本グランプリでペレスからの脅威に直面しました。しかし、3つの重要な要因が三度の世界チャンピオンに春の鈴鹿での勝利を可能にしました。

フェルスタッペンが楽々勝利したように見えたが、その裏側では多くのドラマが見られた

今年の日本グランプリは、いつもとは違い春に開催されました。6か月前、F1は秋ながら暑い鈴鹿に到着。そして先週、春に行われる初めての日本GPのために戻ってきました。それはより涼しい条件と、いつもとは異なるレースがあることを予感させました。

結果として日本GPはマックス・フェルスタッペンが勝利しました。しかし、今まで見たこともない美しい桜の花に囲まれる中で、いつものようにフェルスタッペンが完全に支配するレースとはなりませんでした。昨年のシンガポールGP後と同様に、カルロス・サインツが勝利した後に鈴鹿に到着しましたが、今回ペレスは週末を通してフェルスタッペンの脅威となりました。

金曜日は冬のように寒く、 FP1ではフェルスタッペンがペレスを0.181秒差でリードしましたが、午後のセッションは絶え間ない霧雨とさらに下がった気温によって走ることができませんでした。しかし土曜日は太陽が戻り、春を感じられました。

最終的に記録には、またフェルスタッペンの圧勝として記録されるでしょう。
しかし、それは暖かい土曜日に逆転するための要因が埋め込まれたからに他なりません

オーストラリアでの優勝に引き続き、表彰台に上ったフェラーリのサインツ

そして、土曜日にはペレスがアドバンテージを持っていて、フェルスタッペンを心配させました。
「これまでのところ、ロングランに満足していませんでした」とフェルスタッペンは予選後に述べました。
「FP3では、ペースが私が望んでいたものではなかったと思います。ですからレースでは少し疑問が残ります…」

「私たちのレースペースはそれほど悪くありませんが、今年や昨年のいくつかのレースで感じていた快適というようなものではありません」

この段階で、フェルスタッペンはまた、フェラーリのロングランを高く評価しており、 レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコがルクレールのパフォーマンスを「少し気になる」と話していました。

FP2が事実上失われたため、FP3は通常とはかなり異なる展開となりました。通常、この段階で完了しているはずのロングランのシミュレーションが終わっていなかったため、予選アタックのシミュレーションを避けることを余儀なくされました。ロングランでは、レッドブルとフェラーリは、両チームとも似たようなスティントの長さでミディアムタイヤに焦点を当てました。

フェラーリは、ルクレールが1分36.204秒のタイムを記録し、これはレッドブルのトップタイムよりも0.482秒も速いもので、これは異なる燃料搭載量であることを示唆しています。フェルスタッペンはこの記録に基づいて「フェラーリはとてもいいように見える」と主張しましたが、サインツは2戦連続優勝の期待をすぐに否定しました。

ペースがなかなか上がらず苦戦するメルセデスの二台。ラッセル7位、ハミルトン9位に留まった

「私たちのロングランは、それほど良くありません」と彼は言いました。「私たちはちょっと軽いかもしれません。レッドブルはいつも金曜日は遅いですよね。日曜日には私たちが勝つかのように見えますが、実際は20秒も引き離されてしまいます」

しかし、フェルスタッペンとレッドブルにとって否定できなかったのは、彼がチームメイトをリードできなかったということです。FP3ロングランのベストの平均タイムは実際にペレスが記録しており、彼の1分36.686秒の平均タイムはフェルスタッペンのそれよりも0.122秒速かった。ペレスは走り出しから速くそれを維持しましたが、フェルスタッペンは著しくタイヤの劣化が進みました。

「私自身のロングランがあまりうまくいっていないので、実際には他の人たちが少し良く見えます」とフェルスタッペンは説明しました。

しかし、彼が予選後の記者会見で話している時に、最終的に日曜日のレースをフェルスタッペンの有利に傾ける3つの要因のうち2つが既に見えていました。

最初の要因は、レッドブルが「車のセットアップを変更し、それが私によりグリップを与えた」とフェルスタッペンが述べたように、FP3後のセットアップ作業に関連しています。技術的に難しいコースであるため、チームは空力効率が問われるため、フロントウイングのフラップ角の微調整によるエアロバランスの調整に集中しました。

ライバルとのバトルを制し、地元鈴鹿で10位入賞をした角田

フェルスタッペンはFP3のロングランでリアがより多くスライディングし、タイヤのデグレが厳しかったので、レッドブルはフロントウイング角を減らすことで車のバランスをよりアンダーステア寄りにすることで対処しようとしました。

FP2で全く走行せずに温存されたソフトタイヤは、すべて予選に持ち越し、非常に重要な要素となりました。そして、これが鈴鹿で3連勝を果たすための2番目の重要な要因でした。

ペレスからの厳しい挑戦を受けた予選Q3のアタックでフェルスタッペンは鈴鹿での成功に向けて重要なアドバンテージであるポールポジションを確保しました。鈴鹿では前を走れば追いかけるライバルにダーティエアを与えることができ、リアのスライドを大幅に増加させ、それによってサーマルデグラデーションが悪化するからです。

しかし、フェルスタッペンはそのアドバンテージをスタートで二回も守らなければなりませんでした。

最初のスタート時、フェルスタッペンはリードを守るのに問題ありませんでした。ペレスはいいスタートをしましたが、ポールポジションからのチームメイトのリードを縮めるためには不十分でした。

しかし直後のS字でリカルドとアルボンが接触し、激しくクラッシュ。タイヤバリヤも壊れたため、レッドフラッグが提示されレースは中断されます。

二度目のスタートではフェルスタッペンに迫るペレスだが、オーバーテイクは難しく、主導権をフェルスタッペンに渡してしまった

これでタイヤ交換とセットアップの変更ができるようになりました。レッドブルの二人は最初のスタートで使用したミディアムタイヤを装着し続け、 3番手のランド・ノリスも同様でした。マクラーレンの後ろにいた、フェラーリは新品のミディアムタイヤをサインツに装着し、さらに後ろの位置にいるルクレールも同様にします。

レッドブルのチーム代表のクリスチャン・ホーナーによれば、フェルスタッペンとペレスは「レッドフラッグで中断したことにより、FP3後の調整で過剰に補正したフロントウイングを修正することができた」と述べています。

しかし、それで問題解決ではありませんでした。マルコが述べるように、赤旗の停止中に、「フロントウイングを何クリック変更するかについて非常に長い議論がありました」

これがどう影響するかは後で判明するでしょうが、まず最初にフェルスタッペンは2度目のスタートで別の重要な部分、つまりリードを守ることに集中しなければなりませんでした。ペレスは「最初よりは少しは良くスタートを切れたが、マックスを追いつくには足りなかった」と感じました。実際、ペレスは蹴り出したときに少しのアドバンテージがあり、フェルスタッペンに迫ったので、フェルスタッペンはその攻撃からポジションを守るために、アグレッシブにコーナーに入りました。

ピレリのタイヤ交換マップ。上位陣は2ストップを選択

そしてレースの3周目までに、フェルスタッペンは0.991秒のリードを築きました。ペレスは、再開後の4周目でDRSがアクティブになった際にDRS圏内に留まるのに十分な走りを見せました。

しかし、それがペレスがフェルスタッペンに最も近づいた距離でした。なぜなら5周目にDRSを利用した後、スタートライン通過時に1.2秒差まで後退しました。さらに6周目には、デグナーで広く外に滑り出して、ほぼ1秒を失いました。

「それはかなり難しいコーナーでした」とペレスは述べました。「縁石を越えて行ったとき、ダメージを受けないことを願っていました。これでフロアがダメージを受けるのは非常に簡単です。ただこの時はダメージがなかった」

「私は単にアンダーステアで広く外に出て、縁石を越えました。一度縁石の上に乗ってしまうと、ゲームオーバーです。そのまま縁石を超えるしかありません。縁石の上に乗っているよりも、乗り越えてしまった方が良いからです。明らかにタイヤにはたくさんの汚れがついていて、それを本当にクリーンアップするのに1、2周かかりました。それによって数秒を失いました」

桜咲く鈴鹿を走るハミルトン

実際10周目には、フェルスタッペンのアドバンテージはほぼ3秒にまで拡大しました。そして、彼は最初のスティントの残りの周回で最大5.1秒までそれを広げ続けました。

レースの初期のタイムロスについて、ペレスは天候の変化に焦点を当てました。
「残念ながら、気温の上昇が影響したと思います」と彼は説明しました。
予選に比べて12℃トラック温度が上昇し、レース時には39℃になっていました。
「バランスに関しては、最初のスティントではそれに対処できず、それでデグレーションが少し高くなりました」

ホーナーは、「気温が少し温かくなったことが、私たちにとって不利ではなかったかもしれない」と感じていましたが、これは依然としてレッドブルがサーマルデグレにおいて、タイヤに優しいという利点を持っていることを示しています。ただこの年の最高のマシンに乗っていても、気温の上昇は大きな挑戦でした。

鈴鹿サーキット レイアウト

「一般的に、すべてが少し難しくなります」とフェルスタッペンは述べました。「気温が上がると、グリップが少し減ります。最初の数周はそれに適応するのが難しくなります。全体的にはうまくいったと思います。でも、週末を通して気温が大きく変化し、突然上がるといつもトリッキーになります」

そして、これがフェルスタッペンの逆転劇を完成させるための第三の重要な要因です。それはFP3でのロングランの苦戦から始まりました。気温が上がると、優れた彼のタイヤ管理能力がペレスと比較して追加のアドバンテージを持つようになります。そして、彼はそれを素晴らしい走りで利用しました。

「レースを通して車がだんだんと良くなっていきました」とフェルスタッペンは述べ、レース終盤に雲が空を覆ったことでタイヤを休ませることができ、それが彼をさらに後押ししました。

雲の影響で気温と路面温度がレース終盤に向けて落ちていく

タイヤのデグレに関してはフェラーリのサインツもこう述べています。
「レースを通してトラックの状態が大きく変わりました」とサインツはその後述べました。
「金曜土曜とは違いレース開始当初は晴れていたトラックですが、途中から曇ってきて路面温度が変わりました。その結果、デグレーションが大幅に減少し、レースの途中でタイヤをずっとプッシュすることができました。これは全体の状況をかなり変えました。ある時点では、表彰台が不可能だと思いましたが、最後のスティントで新しいハードタイヤを使って、ペースが素晴らしく、再び表彰台に戻ることができました」

こうして天候と気温に左右された、桜が咲いた美しい鈴鹿での日本GPは終わりを告げました。

日本GP最終結果
ドライバーズ チャンピオンシップポイント
コンストラクターズ チャンピオンシップポイント