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可夢偉はどこへ行くのか?

日本人F1ファンほぼ全てが注目する小林可夢偉の2010年シーズンのシートであるが、状況を見ている限りかなり難しいと言わざるを得ない。 というのも、F1の世界では本当の実力だけでシートを得られるのは上位の10人くらいで、それ以外はスポンサー絡みや持ち込み資金次第というのが現実である。 最近は参加台数が20台と限られていた上に、ワークス系チームが多かったのと、景気がよくスポンサーも多かったので、資金持ち込みドライバーの陰は薄かったが、ここ最近の経済危機の影響とプライベートチームの増加により、彼らの存在感が増してきている。 持参金の額については、ドライバーの実力により格差がある。 ドライバーの実力がある程度あれば数億円レベルの資金でシートを得ることが可能である。 残念ながら実力がないと思われれば10億円以上持ち込まないとシート獲得は難しい。 TMG会長の山科忠氏は、トヨタF1撤退の記者会見で、可夢偉と一貴についてはなんとかシートを見つけられるようにしたいと述べていたが、持参金の拠出には否定的だった。 ただ別のインタビューでは、お金は出せないがエンジンなら出せるかもしれないと述べている。 山科氏はその中で、エンジンについては来シーズン分まで既に製作済であり、供給が可能であると話している。

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 ただし、エンジン供給は有償であることが条件であるが、費用についてはある程度のディスカウントがきき5億円から8億円当たりを考えているようだ。 山科氏は可夢偉が見せた実力があれば、お金を払わなくてもオファーがあるはずだと話しているが、残念ながらそれは難しい。 これがもし数年前であれば確かにそれも可能だっただろう。 だが今の経済状況は、F1チームを追い込んでいる。 トップチームは問題ないが、中堅以下のチームはスポンサー集めに苦労している。 ウィリアムズが株式の一部を売却したのは、その証だ。 噂レベルも含めてほぼ決まっている上位以外のチームは、ドライバーにある程度の資金を期待しているだろう。 こうなると資金の裏付けのない可夢偉の立場は厳しい。 これまでトヨタに活動資金の大半を負担して来てもらっているのも、ここに来て難しい状況にしている。 もし彼が自分自身でスポンサー集めをしていれば、そのルートからお金を引っ張ってくることも可能だが、トヨタに依存していた分、トヨタがいなくなれば、いきなり梯子を外された状態になる。 ただここにきて、トヨタF1の有力スポンサーだったパナソニックとKDDIが可夢偉のパーソナル・スポンサーになる可能性に言及した報道があった。 もしこれが事実であると、可夢偉のシート獲得には大きな援軍となる。 小林可夢偉の実力はまだ完全に証明はされていないが、最後の2レースで見せつけたドライビングは、関係者に強烈な印象を植え付けたことは間違いがない。 その為、彼に興味を持つチームは複数いるはずだ。 もちろんプロのドライバーであればお金をもらって走るべきで、お金を払ってまで乗るべきでないという主張がある事は理解できる。 だが過去を見るとミハエル・シューマッハーもお金を払ってジョーダンのシートを得て、そこから実力で自分の可能性を広げていった。 古い話をすれば三度のワールド・チャンピオンのニキ・ラウダもまた、お金を払って最初のシートを得ている。 とにかくF1で成功するのであれば、F1マシンに乗ることが出来なければ話にならない。 F1のシートを得た理由など、人はすぐ忘れてしまう。 彼らが覚えているのは結果だけなのだ。 F1の世界にいて、実力を出し切れば見ている人は必ずいる。 だから是が非でもF1の世界にとどまらなければならない。 それが、例えリザーブ・ドライバーであろうと。 幸い可夢偉は日本のレースに戻る気はないと話している。 彼をたった2レースだけで日本に戻すのはあまりにも残念である。 ルノー、ザウバーの来シーズンはまだ未確定な部分が多いし、新規参入チームもドライバーに関しては未確定である。 恐らく全てのドライバーのシートが決まるのは2月か下手をすると3月の開幕直前までずれ込む恐れもある。 ドライバーズ・マーケットはいいドライバーから、そして競争力あるチームから埋まっていく。 そこが埋まらないと下の方はなかなか動けない。 バトンが動いてトップチームのドライバーは見えてきた。 中堅以下のチームはルノーとザウバーが決まらないと動けないだろう。 現在、可夢偉の行き先として噂に上っているチームは上記のルノー、ザウバーとロータス。 どのチームも資金とスポンサーを必要としている。 その為、可夢偉がどこかのチームに入れるとしても、それが決まるには時間がかかることが予想される。 可夢偉が正式な契約書にサインするには、チームとの契約書にスポンサーとの契約書、膨大な契約事項を詰めなければならず、気が遠くなるほどの時間がかかる。 年俸はもちろん移動時の飛行機のシートの種類からホテルのグレード。 連れて行ける関係者の数から、スポンサーのプロモーション活動の回数など、詳細部分まで決める必要がある。 上記の理由により、ほぼ契約が決まっていても、正式発表までには時間がかかる。 だから、中小チームのドライバーが二人とも発表されるのは、2010年に入ってからになる。 そこに小林可夢偉の名前があることを、初詣で念じながら、新年を迎えよう。
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