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メルセデス予想外の敗退 カナダ観戦記


レースは予選が始まる前から決まっていたと言ったら言い過ぎだろうか。カナダGPが開催されるジル ビルニューブ サーキットはパワーがタイムに及ぼす影響が大きなサーキットなので例年多くのPUメーカーがアップデートしたPUを持ち込む。
 
今回も全てのPUメーカーがアップデートしたPUを投入するはずだった。ところがメルセデスだけは、ベンチテスト後に僅かな問題が見つかったことから、新PUの投入を見送った。
 
予選でのベッテルとボッタスの差は僅かに0.093秒。フェラーリが新ユニットでメルセデスが旧型ユニットと考えると、もしメルセデスが新ユニットを搭載していれば確実に逆転可能な差であった。
 
そしてもうひとつメルセデスには懸念があった。彼らは今年ハイパーソフトをうまく使えていないので、彼らはハイパーソフトをレースで使わないことを決め、フリー走行でハイパーソフトをほとんど使わずに予選に臨んだ。これによりメルセデスのドライバーはハイパーソフトの感触を確かめることができずに予選に臨んだ。それもあり、このサーキットを最も得意にしているハミルトンはヘアピンの飛び込みでミスをして予選4位に沈んでしまった。
 
メルセデスはタイヤ管理に敏感なマシンなので、ウォームアップの仕方など繊細な走りを要求されるのである。
 
そしてレースではほとんど順位の変動がなかったので、このミスは大きな代償となった。
 
レース前にはワンストップしたいというのがトップチームの希望だった。理屈の上ではウルトラソフトでスタートすれば、ワンストップは充分可能だった。ウルトラソフトは30周、スーパーソフトは50周は走ることはできると予想されていた。レース距離は70周である。
 
 
フェラーリとメルセデスはウルトラソフトで、レッドブルはハイパーソフトでスタート。これはメルセデスはタイヤに厳しく、レッドブルはタイヤを持たせることが出来ることと、同じ事をしてはライバルに勝てないと考えたのだろう。ハイパーソフトの方がスタートでの蹴り出しがよく、スタートでアドバンテージがある。実際、フェルスタッペンはスタートでボッタスをもう少しで抜けそうだったし、リカルドはライコネンをパスして5位に上がり、これがのちほどハミルトンを抜くことにつながる。
 
DRSゾーンが一箇所増えて三つになったにも関わらず追い抜きはコース上での追い抜きはあまり見られなかった。これはタイヤのオーバーヒートと今のマシンのエアロ特性によるところが大きい。
 
それでもこのジル ビルニューブ サーキットは低速コーナーと直線の組み合わせなので、低速からの立ち上がりでリアタイヤが滑ると追い抜きは容易である。その為リアタイヤには最大限の注意を払わなければならない。そのためレースは我慢比べの様相を呈することになる。
 
上位陣で最初にタイヤ交換したのはフェルスタッペンとハミルトンで16周目である。タイヤ的にはもう少し行けたと思うがハミルトンはボディパーツが正常に動作せずエンジンにオーバーヒートの兆しも見られたので、メルセデスはここでハミルトンを入れ、タイヤ交換と同時にボディの修正もおこなった。それを察したレッドブルは前を走っていたフェルスタッペンをアンダーカットから守るために先手を打って同時にピットインさせた。この時、ハミルトンは4位を走っていた。
 
2人はスーパーソフトに履き替えた。これだと計算上は最後まで走りきれないが、行けるところまで行くというのが、彼らの考えだろう。ただタイヤ的にはレッドブルの方が長持ちさせることができる。
 
ここでレッドブルは5位を走るリカルドをステイアウトさせる。このタイミングでタイヤ交換しても、コース上でハミルトンを抜くことはできないと判断した。
 
 
ハミルトンが履き替えたスーパーソフトのタイムがあまり良くなく、しかも距離を走ったリカルドが全体ベストのタイムを叩き出す。次の周にタイヤ交換したリカルドはハミルトンをオーバーカットして4位に上がる。
 
だがここでひとつの疑問がある。全体ベストを出せるくらいなら、リカルドをもう少しステイアウトさせてもよかったのではないかと思うからである。ハミルトンを抜いたのもギリギリのタイミングだったのでもう少しステイアウトすれば、もう少し余裕を持って抜けたし、さらにいうとフェルスタッペンすら抜けた可能性もあった。
 
それにリカルドがその選択で失敗しても6位ライコネンの後ろは大きく開いていたので失うものはほとんどなかった。
 
こうして三位以下のドライバーは早々にタイヤ交換を済ませたのだが1位ベッテルと2位ボッタスはなかなかタイヤ交換しない。これはセーフティカーやバーチャルセーフティカーが出ることを警戒していたからである。通常このサーキットではタイヤ交換の際に17秒ほどのタイムロスがある。それがバーチャルセーフティカーが出ると11秒ほどに縮まる。だからベッテルは先には入りたくない。先にタイヤ交換して、後でバーチャルセーフティカーが出たら逆転される可能性があるからだ。そのため二人とも我慢比べの様相になっていた。
 
結局ボッタスが根負けし36周目にタイヤ交換し、その一周後にベッテルがタイヤ交換した。この2人は残り34周なのでスーパーソフトで最後まで行くのに問題はなかった。
 
ただその後はご存知のように順位の変動もなくレースはフィニッシュした。