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2011 Rd5 スペインGP観戦記

 ▽ベッテルの別の顔 今回、ベッテルはまた進化した走りを見せてくれた。 昨年の前半までの彼はPPを獲得して、そのままぶっちぎり逃げ切るというのが勝ちパターンだった。 昨年の終盤、彼はシーズン中にもかかわらず、その走りを進化させた。 トップに立っても必要以上に2位以下を離さず、充分なギャップを作ると、あとは必要な時にだけプッシュ。無理無駄のない勝ち方をするようになり、チャンピオンを獲得した。 そして今回、彼はまた別の顔を見せてくれた。 残り十周でハミルトンが猛追。 しかもベッテルはKERSを使うなと、ピットから指示を受け、絶対絶命の状態に。 こうなると、典型的なハミルトンの勝ちパターン。 ベッテルは序盤、アロンソをかわすために、早めにピットインしたため、トップに立ってからも、ハミルトンより先にタイヤ交換。 最後のスティントもハミルトンより長くなり、タイヤも厳しかった。 ところが彼はここから実にしぶとい走りを見せてくれる。 メインストレートとバックストレートの立ち上がりに集中し、レッドブルの空力性能の高さを活かしながら、ハミルトンをギリギリのところで抑え込む。 1コーナー手前で、KERSもDRSも使うハミルトンに追い抜かれる寸前まで追い詰められるも何とか順位をキープしてフィニッシュ。 今シーズン4勝目をマークした。 ほんの少しでもミスをすれば、抜かれる状況の中で見せた見事なレース。 これまでとは違うタイプのベッテルの勝利。 これまで彼はPPからしか勝てないなどと、批判されることもあったが、その評判を覆す勝利。 彼もこれまでの勝利とは違う格別のうれしさだったのだろう。 フィニッシュした後、シートベルトを外して身を乗り出して喜びを表現していた。 ベッテルがいろいろな勝ちパターンを身につけると、他のドライバーはますます苦しくなる。 ただレッドブル唯一のアキレス腱、KERSは今回も使えたり使えなかったりした。 これから気候的に暑くなっていくので、この問題を解決するには時間が必要となりそうだ。 これは今回、ライバルにとって唯一の明るい材料となった。 この後の2レースは特殊なサーキットであるモナコとモントリオールで開催される。 この二つのレースにベッテルが勝つようだと、今シーズンのチャンピオン争いは実質、終わるかもしれない。

 ▽抜けなかったハミルトン 明らかにハミルトンの勝ちパターンだと思われた。 残り10周でベッテルとの差は1秒以下。 DRSも使える状況で、タイヤもベッテルより状態がいい。 こうなった時のハミルトンは誰も止められない。 中国GPで見せた逆転劇を思い出させたが、このサーキットでは再現できなかった。 最終コーナーであるターン16で速いベッテルは立ち上がりで差を広げる。 DRSとKERSを使うハミルトンもベッテルのテールに突っ込みそうなくらいまで差を詰めるが、抜けない。 そんな攻防が最後まで続くが、最後までベッテルはミスをせず、ハミルトンは抜くことはできなかった。 ハードタイヤを履くハミルトンは、終始ベッテルより速かった。 相変わらず予選でのパフォーマンスに大きな差はあるが、レースでは勝負ができる。 次のモナコでは空力の影響が少ないので、ハミルトンにもチャンスはあるだろう。 ▽アロンソの意地 地元スペインの英雄アロンソは見事なスタートを見せてくれた。 会心のスタートを切ったアロンソは、4番手スタートからトップで1コーナーへ飛び込む。 スタンドは総立ちで、大歓声が聞こえた。 そしてそのまま2位のベッテルを従えて、トップを維持する。 ベッテルの方が圧倒的に速いのだが、アロンソはストレート手前のターン9と16で細心の注意を払い、加速してベッテルにオーバーテイクを許さない。タイヤも良い状態をキープしていた。 1回目のタイヤ交換時は先にベッテルにタイヤ交換されるも、トップのままコースへ復帰。 アウトラップでベッテルが遅いクルマに引っかかったことにも恵まれた。 さすがに二回目のピットでは、逆転をされたが、アロンソはできる限りの手は尽くし、アロンソ見たさに来た観客を盛り上げてくれた。 最後はレッドブルとマクラーレンの後ろの5位。 これには、マシンの性能差以外にもハードタイヤを上手く使えなかったことも影響している。 しかし、アロンソ以外の誰がこれだけのパフォーマンスを見せられるだろうか。 フェラーリはモナコでは戦闘力があると見られるので、アロンソファンには目が離せないだろう。 ▽ピレリの新ハードタイヤ トルコGPでハードとソフトの寿命がほとんど同じだったことを受け、多くの周回数ができるように意図して、今回ピレリタイヤはハードタイヤのコンパウンドを替えてきた。 実際、ハードタイヤは20周以上できていた。 だがそれとは引き替えに2~2.5秒も遅いタイヤとなってしまった。 バトンを除く上位陣は4ストップを選択。 バトンはタイムの遅いハードタイヤで走る周回数をできるだけ少なくするために3ストップを選択。 スタート直後は順位を10位まで落としたが、逆転で表彰台に登った。 確かに新しいハードタイヤは、多くの周回数がこなせるが、ラップタイムがこれほど遅いと使うのが難しい。 次のモナコにはスーパーソフトが初登場する。 各チームはこの使い方に悩まされそうである。 ▽可夢偉 連続入賞を続ける。 またもパンクが可夢偉を襲う。 オープニングラップで接触された可夢偉の左タイヤがパンク。 大きくタイムロスして、最下位に順位を落とす。 ここで可夢偉はソフトタイヤを履きたかったが、チームはハードタイヤを選択して、可夢偉をコースに戻す。 これが大成功。 このタイヤで20周以上走った可夢偉だが、ラップタイムも良く順調にタイム上げていく。 そして最後は10位でフィニッシュ。 開幕からの連続入賞を5回に伸ばした。 ザウバーの戦闘力を考えるとこれはすばらしい結果である。 次のモナコはドライバーの能力が試されるサーキット。 そこで可夢偉がどれほどの結果を残してくれるか楽しみである。

 

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