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ハミルトン逆転チャンピオンの可能性も?

▽ハミルトンのミスは誤報!? ハミルトンが指を滑らして、ステアリング上のスタート・ボタンを押してしまい30秒近く失ったとお伝えしたが、それが誤報とわかった。 記事を書いた記者によると、彼はハミルトンに確認を取っていないにもかかわらず、ハミルトンがそのように発言したと書いてしまった。   これは、マクラーレンのロン・デニスのギア・ボックスのトラブルは技術的なものであるとの発言と一致している。 このトラブルの原因としては、センサーから誤った情報が伝えられたか、ソフトウェアのバグにより、ギアがニュートラルに戻されたと考えられている。 ギアが入らなくなったハミルトンは、それを直そうとしてリセット・ボタンを押し制御用ソフトウェアをリロードした。 リセットした後にハミルトンが何の問題もなく走り切れたことは、この推測を後押ししている。 どちらにしても、ギアが入らなくなり30秒近く失ったことが、彼のチャンピオンシップを失う原因になったことは間違いない。 あまりにも痛すぎるトラブルであった。 チャンピオンを決めたのが、ソフトウェアのバグとは何ともやりきれない思いが残るが、現代F1を象徴しているような現象ではある。 しかし、このトラブルがまったく突然発生したわけでもなさそうである。 と言うのも、予選中に同様のトラブルが発生していたらしい。 その後、エンジニアがチェックしたのだが、特に問題が見つからなかったので、対処しなかった。 彼らからすれば、変にいじってトラブルが悪化するくらいなら、そのままにしておこうと判断したのだろう。 それでも、ハミルトンはギアが入るようになってからは追い上げ、7位でフィニッシュ。 ライコネンに1ポイント及ばなかったが、F1史上最も成功したルーキーとしてF1の歴史に名を残した。 ▽マクレーレンの控訴に非難囂々 ところが、レース後の車検でレギュレーション違反が見つかった。 ウイリアムズとBMWのマシンだ。 彼らの燃料が規定の温度より低かったというのだ。 実際の測定値は、規定より低かったことが確認されている。 レギュレーションによると、大気温度より10度以上低い場合は違反となる。 ところがスチュワードはこの3台の燃料温度が低いこと確認しながら、彼らにペナルティを課さないことを決定した。 それにマクレーレンが抗議し、FIAに訴えたのだ。 レギュレーションに違反があったと認められたのはウィリアムズのニコ・ロズベルグとBMWのクビサとハイドフェルトだ。 彼らはそれぞれ4位と5位と6位で、ブラジルGPをフィニッシュしている。 もし、彼らが失格してハミルトンが繰り上がるとなんと、ハミルトンが逆転チャンピオンという結果になる。 ただ、ここで難しい問題がある。 あるF1のエンジニアに言わせると、燃料タンク内の燃料温度を正確に計測するには精密なセンサーが必要で、かなり困難なことであることを認めている。 さらに大気温度といっても、どこで測定した値を標準値にするのかが、不明確なのだ。 当然、日が当たる部分の温度は高いし、日陰では低い。 さらにややこしいことに、FIA自身が測定した気温が37度で、FIAが契約している会社は33度と発表している。 彼ら3台が、違反したとされる燃料温度は大気温度より12度から14度低かったらしいので、どれを基準にするのかでペナルティになるかならないか決まるという、曖昧さである。 おそらくスチュワードはその辺りを考えて、ペナルティと下さなかったのだろう。 それでは収まらないのがマクレーレンである。 マクレーレンはこの決定に対して抗議した。 スパイカーのガスコインも「彼らの燃料温度が規定より10度以上低いのであれば、5~10馬力のアドバンテージが得られただろう」と述べ、「彼らをレース結果から除外すべきだ」と発言している。 このマクラーレンの行動は各地で非難されている。 アロンソや当事者のハミルトンでさえも、チャンピオンはコース上で決められるべきであり、これでチャンピオンになってもうれしくないと述べている。 ところが、マクレーレンには別の思惑もありそうである。 実は、彼らがステップニー・ゲート事件で有罪になった際の判決文には、マクレーレンがステップニーから入手した図面からアドバンテージを得たとは書いていない。 そこには、~のようであるとか、~が濃厚である、と書いてあるのみである。 法治国家の裁判で、疑わしきは罰せずという根本原理に照らし合わせると、マクレーレンはおそらく無罪である。 つまり、マクレーレンからするとはっきりとした証拠もないのに有罪になったのに、明確な証拠があるウィリアムズとBMWが罰せられないのはどういう根拠に基づくものなのか確認したいという意味も大きいと思う。 さらに今後、この燃料温度と同じ問題が起きないように、測定値の基準を求めているとも取れるし、チーム側もそう述べている。 もちろん、マクレーレンとしてはハミルトンの順位が繰り上がり、チャンピオン・シップを獲得できれば万々歳である。 この抗議の審議は11月15日におこなわれることになっている。 しかし、FIA国際控訴裁判所での審議が始まる前からマックス・モズレーは「我々にとってワールドチャンピオンシップは終わっている。結果はご覧の通りだ」と発言している。 イモラでのホンダの失格事件以降、数々の迷判決を下してきたFIA国際控訴裁判所が、FIAの完全な影響下にあることは明らかであり、このマックスの発言には驚きもしないのだが、FIA国際控訴裁判所の権威をおとしめていることに、本人はまったく気づいていないのだろう。 実際、BMWの二台とウィリアムズが失格になったとしても、ハミルトンの順位が繰り上がるかどうかは、不透明である。 レギュレーションによると、このような場合、順位を繰り上げるかどうかはスチュワードの判断に委ねられている。 過去にもミハエル・シューマッハーがシーズン中の全ポイントを剥奪された時も、今年マクレーレンがコンストラクターズの全ポイントを剥奪された時も、順位は繰り上がらなかった。 以上の事を考えると、11月15日の審議でウィリアムズとBMWが失格になっても、ならなくてもハミルトンの順位は変わらない可能性が大である。 いつもはFIAの判定を批判的にお伝えしているが、今回ばかりはその方がF1の為になるだろう。 【編集後記】 数々のスキャンダルに揺れた今シーズンに相応しく、最後の最後まで騒動が続きます。 早く決着をつけて、すっきりとした気分で来シーズンを迎えたいものです。 日本GPのお土産グッズに多くの応募をいただき、ありがとうございました。 当選者には近日中に、送らせていただきます。

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