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シンガポールGP観戦記

▽明暗の分かれたSC アロンソ1年ぶりの勝利。 だが、何年も勝っていない印象がある。 1年前はマクラーレンで、チャンピオン争いをしていたというのに。 それくらい、今年のアロンソは苦戦していた。 信頼性確保と称してパワーを上げているライバルたちに数十馬力のハンディを負い、マシンの空力効率も劣る。 さすがのダブル・チャンピオンもこれでは勝てない。 それどころか表彰台すら上れない状況が続いた。 チャンピオンになった男がこんな状況になれば、やる気をなくしてもおかしくはない。 だが、アロンソは諦めなかった。 いつかチャンスが来ることを信じて。 低速なストリートサーキットである、シンガポールはアロンソにとっては大きなチャンスだった。 空力効率の悪さも、エンジンパワーのなさも、相対的に差が少ない。 だからこそ、アロンソはQ2で止まった時に、感情を露にして悔しがった。 彼自身のレースが終わったと考えた瞬間だった。 だが、何が幸いするかはわからない。 このQ2でのトラブルが、アロンソに勝利をもたらした。 さらに、アロンソには幸運があった。 それは、彼のブレーキは燃料を満載した場合、レース終了まで持たない可能性があった。 その為、1ストップの作戦が取れなかった。 その結果、アロンソは軽い燃料で、ソフト側のタイヤを履いて、スタートとした。 そして、誰よりも早くピットへ戻ったことにより、CSの混乱に巻き込まれず、5位で再スタート。 その前を走る4台はストップをしていないか、ペナルティを受けることが確実で、前の4台が消えてからは、アロンソがトップに立つ。 第三スティントでもハード側のタイヤを履くことにより、二度目のSCの後も、後続を難なく引き離せた。 今回の勝利は、幸運が味方したことは、間違いない。 だが、それもアロンソの実力があるから、勝てたのもまた事実である。 幸運があっても、勝てるドライバーは一握りしかない。 ▽ニコの不運と幸運 ニコ・ロズベルグもまた、不運と幸運のジェット・コースターだった。 彼の不運は、SCが出た周に燃料がなくなったこと。 これにより、彼はペナルティを課されることが確実だった。 これで彼のレースも終わったように思われた。 ところが、なぜかSCが入った後もニコにはペナルティが提示されない。 結局、ニコにペナルティが出されたのはSCが撤収してから6周後という遅さだった。 当然、ウィリアムズは彼をレギュレーションで許される3周走らせた後に、ピットインさせた。 この時、後方ではフィジケラとツゥルーリが後続に蓋をして、抑えていて、これにニコは助けられた。 彼は、この間にタイムを稼ぎ、アロンソの後ろ、クルサードとハミルトンの後ろで復帰。 最終的に、ニコは自己最高位の二位でフィニッシュ。 盆と正月が同時に来たような、レースとなった。 ニコへのペンルティが遅れたのは、マッサへのペナルティの審議が長引いたからであろう。 ニコもアロンソと同じで、最初に不運が訪れて、最後に幸運が舞い降りた。 1年ぶりの勝利のアロンソと自己最高位2位入賞のニコ。 SCと抜けないコースがなければありえなかった結果ではあるが、興味深いレースとなった。 ▽マッサ まさかのトラブル 予選で二位ハミルトンを0.6秒も引き離したマッサは、相当軽くしてきたと予想したのだが、どうやらそれは外れた可能性が高い。 SCが出たので正確な燃料搭載量は不明だったが、SCの影響で燃費が多少良くなったとはいえ、17周目まで引っ張ったのだから、極端に軽いと言うことはなかった。 ということは、このタイム差は相当に大きいと言える。 スタートも決めたマッサは、ハミルトンを引き離せていないとはいえ、かなり有利な展開だった。 あのミスが出るまでは。 SCが入り、ピットがオープンになった17周目にマッサは、ハミルトンやライコネンとともにピットへ向かう。 ここでありえないミスが起こる。 燃料ホースをつないだままのマッサが動き出し、ピットの端まで行ってしまったのだ。 担当者が給油中に信号を青に変えてしまったのだ。 以前も説明したが、フェラーリのこの信号システムには欠陥がある。 人間は目の前に物があれば本能的に止まるが、信号の場合、そこに判断するという項目が追加される。 これはとても、いいシステムとはいえない。 信号を変える人間がミスをした場合、ロリポップであれば再び下げれば、マシンは動くがすぐに止まる。 だが信号の場合、青信号に変更すればドライバーは信号から目を離してしまうので、止めるすべがない。 優れたシステムとは、ミスがあっても修正がきくものでなければならない。 ロリポップは確かにローテクではあるが、今のところ、これに勝るものはないように思える。 何でもハイテクにすればいいというものではない。 (もっともフェラーリの信号システムは、人が判断して青信号に変更するのでハイテクでもなんでもないのだが) ピットレーン上に止めることができないマッサは、ピットレーンの出口近くにマシンを止めて、クルーが来るまで待つだけであった。 それでも、SCが導入されていたので周回遅れになることはなかったが、抜けないコースで最後尾になると、例えマッサでも、フォース・インディアを抜くのが精一杯だった。 おまけに燃料ホースを咥えたまま走り出したときに、スーティルと接触しそうなるというおまけつきで、さらなるペナルティをもらってしまった。 であれば、信号を青に変えたのか理解できない。 もっともこのペナルティは、大勢には全く影響がなかった。 もう一人のライコネンはシケインを通過するときにミスをして、縁石に少しだけ乗り上げ過ぎて、コントロールを失いクラッシュ。 これは珍しいライコネンのミスだった。 フェラーリは二台とも、ノーポイントに終わり、コンストラクターズ・ポイントでもマクラーレンに抜かれてしまった。 二度目のピットインの時に、フェラーリはロリポップを復活させた。 今後、どうするかについてフェラーリは明言を避けたが、何を迷っているのだろう。 もしマッサがタイトルを逃がすようなことがあれば、この信号システムの代償は高くつくことになる。 ▽我慢のハミルトン 今回のハミルトンは派手さはなかったが、いい走りだったと思う。 今までのハミルトンは、前に遅いマシンがいれば、攻めて抜くと言うのが彼のスタイルだった。 ベルギーでのシケインでも、他のドライバーならアタックしなかっただろう。 あそこは、我慢して次のチャンスを待つのがセオリーだ。 ライコネンは完全にスローダウンしており、1コーナーか長いストレートの後のブレーキングで抜くのは難しくなかったはずだ。 昨年のブラジルも同じである。 スタートでアロンソに前に出られたハミルトンは、抜き返そうと仕掛けてコースオフ。 4位に入ればチャンピオンになれるのに、無理な追い抜きで自滅した。 私は、彼は無謀とか無茶とか批判したいわけではない。 追い抜きが難しいF1で、追い抜きを仕掛けるハミルトンの勇気とテクニックはすばらしい。 だからこそ、ハミルトンは多くのファンに人気があるのだろう。 それに彼はまだ、たったの23歳であり、成長の余地は多い。 だが、そんな若いハミルトンの姿はここにはなかった。 抜けないコースということもあるだろうが、マッサがノーポイントであることを確認して、確実にポイントを狙いにいった。 リスクは犯さずに6ポイントを取りにいった。 そこには成熟したハミルトンの姿があったように思える。 調子のいい時に速く走ることは、F1ドライバーなら誰でもできる。 問題は、我慢しなければいけないときに、我慢できるか。 我慢して数ポイントのために、集中してドライブできるかこそが、重要である。 チャンピオンになれるドライバーとそうでないドライバーの差がそこにある。 二回以上チャンピオンになれるドライバーと、1度しかチャンピオンになれないドライバーとの差もそこにある。 この結果、ハミルトンとマッサの差は7ポイントとなった。 残り3レース全てマッサが勝っても、ハミルトンが全て二位に入れば逆転できない。 自力での逆転は不可能になった。 となるとポイントは、ライコネンとなる。 フェラーリの二台以外が、ハミルトンより上位に来るのは通常、考えづらい。 ライコネンの復調こそが、マッサ逆転チャンピオンへの鍵となるだろう。 それに今年は、荒れるレースが多い。 まだまだ、チャンピオン争いはわからない。 【編集後記】 初のナイトレースでした。 思ったより明るくて、良かったと思います。 フェラーリのボディに光り輝く照明は、綺麗でしたね。 ただ、こうなると次は日本でもと言い出さないかと心配しいたら、やっぱりそう言い出しています。 でも鈴鹿で11時にレースが終わったら、帰れないとと声を大にして言いたいです。 例え少し早く終わらせても9時ごろでは、次の日が辛いです。

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