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2012年シーズン レギュレーション解説

さていよいよ2012年のシーズンがこの週末に始まる。
そこで今シーズンのレギュレーションの変更点を見てみよう。

▽テクニカル・レギュレーション編
1.ブロウン・ディヒューザーの禁止
今年、マシンのパフォーマンスに最も影響を及ぼすのが、このレギュレーションだろう。
このレギュレーションは、エキゾーストパイプ出口の位置の制限とエンジンマッピングの制限により成り立っている。

排気口が出せるの空間は、マシンの中心線より200mm以上500mm以内、基準面(マシンのフロアと同義語)より250mm以上600mm以下でなおかつリアタイヤの中心線より前方に500mm~1200mmの位置になければならない。
つまり昨年より排気管の位置がより前へ、より上に、よりマシンの中心に移動することになる。
 これによりブロウン・ディヒューザーの効果は激減するのだが、それでもF1のエンジニア達は、この部分での効果を得ようと画策している。
あるマシンはビームウィング(下側にあるリアウィングのこと)に排気を吹き付け、マクラーレンはカバーを取り付けリアタイヤの内側に排気を吹き付けようとしている。

そこでFIAは、エンジンマッピングの制限の制限に乗り出した。
オフスロットル時の排気に制限を掛けることにより、更にブロウン・ディヒューザーの効果を限りなくゼロに近づけると目論んでいる。少なくともこれによりオフスロットル時の効果はなくなる。

このレギュレーション変更の影響によりリアのダウンフォースが減ることになる。

最も影響を受けるのがレッドブルなのは間違いない。
彼らはこのソリューションで大きなアドバンテージを得ていた。
昨年前半、予選で抜群に速かったのは、この効果が大きい。
レイク角(マシンの前傾角度の事)を大きくしダウンフォースを稼いでいたのもこれがあったこそだ。

よって今年のレッドブルは昨年ほどはアドバンテージがなくなっているはずなのだが、ニューウェイは隠し球を今年も持っているのだろうか。

2.フロント・ノーズの位置
みなさん、もうすでにご存じであろう、今年のF1マシンは醜い。
これもレギュレーションの改定がもたらした副産物である。

フロントシャシーの高さは625mmでそこから150mm前方の高さは550mmにしなければならなくなった。
これは他のマシンの側面に衝突した場合、コクピットの中をフロントノーズが貫通する可能性を低下させるためである。
この規則をスムーズにクリアしようとするとノーズの先端の位置が低くなる。

ただフロントノーズは高くして、フロアには多くの空気を送り込みたい。
だからフロントノーズがとってつけたようになってしまった。

このレギュレーションの変更は、昨年の半ば決定した。
その時点では、ほとんどチームは新車の開発を進めており、そこから大きく変更することは難しかった。
その為、いかにもとってつけたような造作になってしまったのだ。
来年になれば、もう少しスマートな作りのフロントノーズが出てくるだろう。

※詳しくは2月22日配信のF1 HYPER NEWSかブログを参考にして下さい。
http://passion55.jugem.jp/?eid=901711

3.タイヤコンパウンド、プロフィール変更
これはレギュレーションの変更ではないが、レースに大きな影響を及ぼすので触れて起きたい。
今年のピレリタイヤは、タイヤの外形(プロフィール)と構造、コンパウンドを変更してきた。
ということは昨年とは全く違うタイヤになると言うことである。

コンパウンドは昨年のスーパーソフトはそのままで、他の3種類のタイヤを柔らかくして、スーパーソフトに近づけた。
これにより昨年まで各タイヤで1秒以上差があったのが、0.6秒程度になると予想されている。

昨年はメインに使用するタイヤ(ほとんどの場合ソフト)と使いたくないタイヤがはっきりと分かれていたが、今年はその差が少なくなり、タイヤの選択肢が増えるとピレリは述べている。

ただ私はその味方には否定的で、結局は多くのマシンが同じタイヤ戦術を選択すると思っている。
同じサーキットを同じ時間帯に走行するのであれば、自ずと最適解は限られていて、ほんの少しのマージンでも欲しいチームはそれを狙ってくると思うからだ。

またタイヤのプロフィールが角張ったことにより、タイヤの接地面積が増えた。
特にリアタイヤは3%設置面積が増えた。コンパウンドが柔らかくなったこともあり、ブロウン・ディヒューザー禁止で失われたリアのグリップを補うだろう。

タイヤで言うとピレリから提供される11セットのドライタイヤ金曜日から日曜日の決勝まで自由に使えることになった。ただFP1やFP2後に返却するタイヤセット数は変わらないので、タイヤの使用方法に関してはそれほど変化は見られないだろう。

※2月4日配信のF1 HYPER NEWS「ピレリタイヤの謎」かブログを参考にしてください。
http://passion55.jugem.jp/?eid=901710


スポーティング・レギュレーション編
1.最大レース時間4時間
もともとレースの最大時間は2時間と定められていた。
ただこれには中断時間が含まれてはいなかった。
だから中断時間が長引くと、昨年のカナダGPの様に、レースの終了時間がわからなくなる。
このレギュレーションにより中断時間を含んでも最長4時間に制限される。
とはいえ4時間でも充分に長いので、最大時間は3時間にするほうが良いと思うのだが。

2.セーフティカールールの変更
もともとセーフティカーが導入されると、周回遅れのマシンはラップ遅れを取り戻せていたのだが、これだと隊列の後ろに追いつくまでに時間がかかると言うことで、昨年は放置されていた。
その為、トップと2位のドライバーの間に周回遅れのマシンが存在し、セーフティカーが退場した直後のバトルに水をさしていた。

今回はこのルールを弾力的に運用し、必要であれば周回遅れを先に行かせて隊列を整えて、そうでない時には、周回遅れのマシンはそのままの位置にとどめ置かれることになる。
つまり大きなクラッシュでセーフティーカーが長時間滞在する場合は周回遅れのマシンを先行させるし、落下したパーツを掃除するくらいであれば、現状のポジションを維持すると言うことになる。

3.ドライバーの進路変更
オーバーテイク時の進路変更に関するルールが厳格化される。
順位を守るための進路変更が1回だけ許されるのは前年同様だが、ラインを外して順位を守ったドライバーは、その次のコーナー進入時に相手ドライバーにマシン1台分のスペースを残さなければならない。
これは今までもそうだったのだが、レギュレーションとして明文化された。


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