メルセデス復活とピレリタイヤ
日本GPでは予想通り、メルセデスは復活した。ではどうしてメルセデスはシンガポールで失速し、鈴鹿では速かったのであろうか。
一部にはメルセデスの失速の原因は、タイヤの空気圧が大きく関係しているのではないかと報道されていた。もちろんそれがメルセデスに与えた影響はあったと思う。だがそれは他のチームも同じであり、メルセデス特有の理由ではない。
だからやはりメルセデスの失速の理由の大きな部分は、タイヤの温度にあったと考えるのが妥当だろう(もちろん空気圧がタイヤ温度に与える影響はある)。スーパーソフトタイヤは作動温度領域が極めて狭く、メルセデスはその作動温度領域を維持することができなかった。
ピレリは鈴鹿へ例年通りハードとミディアムという、もっとも固い二種類のタイヤを持ち込んだ。この二種類のタイヤはスーパーソフトよりも、温度への敏感度が低い。また鈴鹿は路面の攻撃性も高いし、中高速コーナーも多く、タイヤへの負荷が高く、タイヤ温度が低すぎて困ると言うことはない。
ただ一つだけ問題がった。それはピレリが指定する最低内圧がシンガポールよりさらに上げられたことである。タイヤの内圧はシンガポールより3.5psi上がり、フロントが21.5psi、リアが20.5psiになった。これはかなり高い数値で、鈴鹿がタイヤへの負荷が高いことから、タイヤにトラブルが出ないように、かなり保守的な数値を指定したと考えられる。
だがこれによりどのチームも苦しむことになる。タイヤの空気圧が高いことにより、タイヤのグリップが足りなくなり、中高速コーナーの多い鈴鹿ではドライビングが難しくなった。さらにタイヤの空気圧が高いことにより、ブレーキング時にロックしやすくなり、しかも激しくロックすると一発でタイヤの内部構造が露出することになり、逆に安全性に疑問が出るような場面もあった。
正直に言うと今のピレリはタイヤに問題を出るのを恐れて、タイヤの空気圧を高くしすぎていると思う。
だがこのタイヤの空気圧を上げたことにより、いい状況が生まれていることも確かである。それはメルセデスと他のライバルとのタイム差が縮まっていると考えられている。
ポールポジションのニコ・ロズベルグと3位ボッタスとの差はたったの0.4秒差しかない。これは今年のメルセデスとの差としては、かなり少ない。また決勝レース終盤のロズベルグとベッテルのタイムはほぼ同じで、大きな差は見られなかった。
タイヤの空気圧が高くなったことにより、ダウンフォースが大きくても相対的にタイヤが潰れにくくなり、コンタクトパッチの面積の差が小さくなり、メルセデスとの差が小さくなったと考えられる。
次のロシアGPのタイヤ空気圧がどうなるかは、まだわからないが、ロシアでもピレリがタイヤ空気圧を保守的に設定すれば、またおもしろいレースが見られるかもしれない。
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