2013 Rd.15 日本GP なぜウェバーは3ストップだったのか?
スタートでグロージャンに先行されたウェバーが動いたのが25周目。トップ3の中で一番始めに2回目のタイヤ交換をした。残り28周の時点でのタイヤ交換は3ストップを意味していた。しかしこの判断は正しかったのだろうか?
3ストップを成功させるためには、いくつかの条件がある。1回タイヤ交換が多いわけだから、他のドライバーより相当速く走らなければならない。今回で言うと余裕を持てば25秒は欲しい。となると前がクリアでなければならない。ところがレースの半分ほどグロージャンはウェバーの前を走っていた。となると残りのレース半分で、25秒稼がなければならない。ではウェバーにそこまでの速さがあったかというと、なかった。残り28周で25秒稼ぐとは1周約1秒、他より速い必要がある。これはレッドブルのウェバーでも無理がある。しかしこれは当然で、事前のシミュレーションでは3ストップは2ストップより10秒遅かった。つまり計算上、遅い作戦を採用したのだから勝てるわけはない。
ではなぜこのタイミングでタイヤ交換したのだろうか?
一つは前をいくグロージャンとの差が1秒以内だったので、アンダーカットを狙ったことが考えられる。だがこの時点でタイヤ交換すれば残りが厳しく、3ストップは必至。アンダーカットするにしてももう数周後ろにずらしていれば、また違っていた。
チームはウェバーの最初のストップが早すぎたので、3ストップしか選択肢がなかったと言っている。だがこの最初のタイヤ交換はウェバーからのリクエストではない。チームは彼のタイヤが厳しかったと述べているが、彼の交換する前のタイムはベッテルよる0.3秒遅いが、これはフリー走行でのタイム差に等しくラップタイムは周回数に応じて落ちてはいるが許容範囲で、そんなにタイヤが厳しいようには見えない。
11周目にタイヤ交換すれば2ストップが厳しいことはみんなが理解していた。だからアロンソは14周目、ベッテルは15周目まで引っ張った。にも関わらずウェバーを早い段階で入れたとしたら、最初から3ストップ狙いだったことになる。しかしウェバーは2度目のタイヤ交換前に3ストップに疑問を挟んでいたので、彼は知らなかったことなる。もしウェバーがタイヤ交換をリクエストしても、3ストップの方が論理的に10秒遅いのだから、エンジニアが止めるべきであるが、そのような事実はない。
11周目にタイヤ交換すれば残りは42周。単純に2で割ると21周のスティントとなる。実際にベッテルは2セット目のハードタイヤで22周を走りきっている。金曜日FP2のハードタイヤでのタイムをみると、ベッテルとウェバーではタイムの落ちに差がない。21周は、決して楽ではないが、不可能な距離ではない。しかも、1回目のタイヤ交換後、チームはウェバーに2ストップを継続すると伝えてる。最初のプランでは2度目のストップは28周目から32周目となっていた。ところが25周目にいきなり3ストップでいくと告げられてタイヤ交換している。
最初のタイヤ交換と2度目のタイヤ交換の間に、チーム内で何が話し合われたのだろうか?
これではウェバーでなくても、疑問に思う。
となると考えられるこの作戦の目的は、攪乱作戦である。ウェバーとベッテルとで作戦を変えると、グロージャンは対応するのが難しくなる。ウェバーが入った次の周にグロージャンが入れば、グロージャンのタイヤが厳しくなるし、彼が3ストップにすればベッテルが勝てる。もしグロージャンがウェバーに反応して入っても、ウェバーはアンダーカットが成功してウェバーが勝てる。だがウェバーの次の周回にタイヤ交換しても、抜かれることがわかっているグロージャンは反応せずに30周でタイヤ交換する。
つまりこの作戦、対グロージャンのチーム作戦という意味ではいい作戦だったかもしれないが、ウェバーが勝ちにいくなら無謀な作戦だった。KERSが生きていればベッテルは最速である。フリー走行でもベッテルはウェバーより0.3秒ほど速かった。だからベッテルが3ストップにするならまだ理解できるが、ウェバーが3ストップで優勝を目指すには速さが足りず、勝つのは難しかった。
確かにホーナーが言うように、ウェバーに速さが足りないのかもしれないし、オーバーテイクに時間がかかりすぎているのかもしれない。だがウェバーがベッテルより遅いのはフリー走行でわかっていたし、鈴鹿でオーバーテイクが難しいのもわかっていたはずであり、その部分を抜かして勝ち負けの要因をウェバーに押しつけるのは違うと思う。もっともベッテルが素晴らしい仕事をしたことは間違いない。
- 2013 Rd.15 日本GP結果 ベッテル逆転の五連勝
- マクラーレンがレッドブルの空力責任者のピーター・プロドロモウと契約