タイヤ空気圧制限の抜け道
マクラーレンのエリック ブーリエが興味深い発言をしている。彼はいくつかのチームがタイヤの空気圧制限を回避しているのではないかと疑っているというのだ。
ブーリエは「他のチームが実際なにをやっているのかは、わからない」とモナコGPで語っている。
「我々はそういう意見を持っていて、疑っている。でも自分達の問題に集中しなければならない。タイヤからより多くのグリップを得ようと考えているのは私たちだけではない」
「我々はマシンのグリップを奪うだけでなく、タイヤを傷つけるこの高い空気圧の問題を解決する為に努力している」
今年の中国GPからピレくリはタイヤの空気圧下限を引き上げた。これは最近毎年ピレリがおこなっていることである。彼らは空気圧の変更を今年のマシンの開発が進んでいて、スピードが速くなり、タイヤへの負荷が大きくなったことを理由に上げている。
実際、ピレリの言うとおりで、タイヤへの負荷が大きい場合、空気圧を上げるのは理にかなっている。タイヤはもちろんゴムからできてはいるが、空気がなければただの燃えないゴミである。空気がきっちり入っているからタイヤはその機能を設計時の想定通りに発揮できる。
だから市販車であっても指定の空気圧があるのは、そのためである。F1のも当然指定の空気圧がある。
それが引き上げられて苦戦しているチームがあることも事実である。中国GP以降、フェラーリの勢いがなくなり、レッドブルは躍進している。
ただブーリエが言うように、そのタイヤの空気圧のチェックをかいくぐろうとしているチームもいるようである。なぜなら空気圧が低い方がタイヤのグリップが増すからである。
事実ブリヂストン時代にもブリヂストンが指定するタイヤ空気圧の加減よりも、さらに低い空気圧で走らせようとするチームはいた。当時はそれを取り締まるルールが存在しなかったので、それでも走ることはできた。
タイヤにはある程度のマージンを持って設計されているので、実際指定空気圧より少し低い値で走らせても問題がないことは多い。だが一度タイヤが壊れるとドライバーは危険にさらされるし、場合によっては観客にも危険が及ぶ。だからピレリもFIAも空気圧の測定をキッチリとしようと努力している。
実は昨年、タイヤの空気圧測定器の初期値を少し下げておいて、実際の空気圧より低く見せる行動があった。そのためFIAとピレリはピレリのエンジニア測定した値を正式な値とする通達を出さざるを得なかった。
当然、今年も同じようにあタイヤの空気圧をピレリが計測するようにしている。だがピレリのエンジニアが自分の測定器を使って測定するのであるから測定器に仕掛けはできない。
ではどうしてそれを実現するのであろうか。ピレリのエンジニアが空気圧を測定するのはフォーメーションラップ前である。チームはおそらくタイヤウォーマーの設定温度を高くしておいて、空気圧を上昇させておいてピレリの測定をクリアし、フォーメーションラップで少しタイヤの温度を下げて、スタート時には空気圧が指定値より低くなるようにしているのではないだろうか。
それにしても0.1秒でも早く走らせようと知るF1チームの情熱には感心する。もっともそれがドライバーの危険をともなうものであってはいけない。
もしFIAが今後、タイヤ空気圧の測定方法を変えるようなことがあれば、それは特定チームのルール破りの抜け道を塞ぐためであろう。
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