今年はタイヤと言う意味ではあまりニュースがない一年だった。これはピレリにとっていいことなのか、悪いことなのかはわからない。せっかく大金を使いタイヤを供給しても、ニュースにならないのでは効果が少ない。
もっともこれがタイヤを一社供給している問題点である。ニュースになるのはトラブルになる時だけというのが、ワンメイク体制のタイヤメーカーの苦悩である。
ただいつかのような、タイヤが壊れまくってニュースになるよりは良かったと言うべきだろう。
今年のマシンはレギュレーションが大幅に変更され、ダウンフォースが大きく増えた。ダウンフォースが増えると当然タイヤを押しつぶす力が増えるので、タイヤを頑丈に作らなければならない。さらにタイヤの持ちも予想しにくいので、コンパウンドを固めにならざるを得ない。
だからほとんどのレースでワンストップだったし、もっとも硬いコンパウンドがレースで使われないことも珍しくなかった。
だからタイヤの作戦的には選択肢が少なく、そう言う意味での興味はあまりなかった。
もっとも私個人的にはこれも悪くないと感じている。そもそもレースとはヨーイドンして一番早くチェッカーフラッグを受けたドライバーが優勝すべきで、タイヤの選択肢を間違えてドライバーがペナルティーを受けるようなレースはどうかと思う。
もちろんそうなれば、レース展開が退屈になることもあるだろう。だがそれもまたレースである。全てのサッカーや野球の試合が面白くないのと同様に、面白いレースや退屈なレースがあってもいいと思う(もちろん面白いレースを期待していないわけではない)。
ただ作戦面での選択肢の少なさを持ってピレリを責めるのも酷だろう。タイヤテストの数は限られているので、耐久性重視で作らざるを得なかった。せっかく三種類のコンパウンドを持ち込んでも、一番硬いタイヤは見向きもされなかった。
ただ来年は少し変わりそうである。今年ピレリはあまりテストができない状況で、新しいレギュレーションのダウンフォースの大きなマシンに対応せざるを得ず、そのためかなり耐久性面でマージンも持ったタイヤを作ってきた。
もっともこれは当然の話で、以前のようにレース中にタイヤが壊れてはレースとしても興ざめするし、安全面から見てとても危険だからである。
だがそのために今年のレースは作戦面では選択肢が少なくなってしまった。そのためもっとも硬いハードタイヤは早々にお蔵入りしてしまったのである。
来年はウルトラソフトよりさらにコンパウンドが柔らかい超ウルトラソフトを持ち込むことを発表している。それに念のためスーパーハードも投入しそうである。
それでも今年のようにコンサバなタイヤが持ち込まれれば、結果は同じなのだが、今年のタイヤの負荷を計測できたピレリは来年もう少し耐久性を落としたタイヤを持つこむことになるだろう。そうなれば再びタイヤの作戦面がより重要になっていくことになる。