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ロズベルグは悪役になりきれるのか?

sne11352-chaGP2016 私は今年誰がチャンピオンになりますか?と問われたら、これまで今年もハミルトンがチャンピオンになり、ロズベルグはなれないと話していました。それはポイント差が大きく開いたスペインGPの前でも変わりませんでした。 だがその考えを改めなければならない時が来たかもしれません。 しかし私がこの考えを改めるのは、ポイント差が大きく開いたからではありません。ロズベルグがスペインGPで見せた断固たる姿勢を見せたからです。 これまでの彼は育ちのいいお坊ちゃんというイメージを越えることがありませんでした。彼はとても速く頭もよくスマートで、メディアとの応対もそつなくこなします。誰からも嫌われない好青年そのものです。 それもそのはずです。彼のお父さんはワールドチャンピオンのケケ ロズベルグ。モナコでなに不自由なく育ってきています。 モータースポーツでも順調にステップアップして21歳という若さでウィリアムズからF1デビューしています。 いわば彼はF1界のエリートであり、サラブレッドなのです。だが過去のチャンピオンを見ると、彼とは違う人物像が浮かび上がります。 ほとんどのチャンピオンドライバーは何もないところから、自分の力を頼りにのし上がってきています。もちろん周りのサポートを得てはいます。だがそのサポートさせも自分の力で引き寄せてきています。 だから彼らはチャンピオンを取るために、他車と接触することも避けません。彼らは絶対に勝つ。絶対にチャンピオンになるという強い決意を持ってレースにのぞみます。 もちろんF1ドライバー達は世界一の負けず嫌いが集まった世界です。でもチャンピオンになるようなドライバーはその気持ちが強すぎて、時に行き過ぎた行動を取ることもあります。 複数回チャンピオンになるようなドライバーは特にそうです。それはいいとか悪いとかではなく、それくらいしないとチャンピオンにはなれないのです。 そこで引いてしまうようだとチャンピオンになるのは難しくなります。 今までのニコはそういドライバーでした。とてもいい好青年。そこがハミルトンと彼との大きな違いです。 ところがスペインGPで彼はこれまで見せたことのない姿勢を見せました。例えスペインGPでハミルトンが勝っても、ロズベルグは2位なれば、ポイント差が縮まっても大きな痛手にはなりません。 これまでの彼であれば、引いていたでしょう。だが今回の彼は違いました。断固として前に行かせないと示したのです。 ライバルには1ポイントも渡すな。これがこの世界の掟なのです。 彼の行動は危険だったかもしれません。でもこの行動により、次にハミルトンがアタックする時により慎重になるのは間違いありません。 そういう細かいことの積み重ねがシーズンの終わりに1ポイント、2ポイントの差となり、チャンピオンとその他のドライバーの大きな差を作り出します。 そしてロズベルグは今回、その姿勢を見せつけたのです。問題は今後もこの姿勢を貫き通せるかです。 人のいい彼が悪役になりきれるのか? それが今年のチャンピオンを決めることになるでしょう。
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