金融危機がF1にも影響か?
F1の商業権を保有する会社、デルタ・トプコの一部の株式を保有するアメリカ証券大手のリーマン・ブラザースが経営破たんした。
リーマンはこの怪しげな会社の株式16.8%を保有しており、同社の過半数株式を所有するCVCに次ぐ第二位の株主である。
リーマンが破綻したことで気になる株式の行方であるが、どうやらCVCに優先的な株式購入の権利が付与されている模様。
どこの企業がF1の株式を取得しようが、ファンには直接関係の無いことではある。
ただ、このアメリカ発の金融不安はF1にも無縁ではない。
ルノーのメインスポンサーである「ING」、ウィリアムズのスポンサーのRBS(Royal Bank of Scotland)は共にヨーロッパ系の銀行なので、直接的な損失は少ないと思うが、影響がゼロではない。
こういう場合に最も怖いのは、疑心暗鬼になった金融機関が、他の金融機関にお金を貸さなくなることだ。
通常、金融機関は調達した資金を、いろいろな方法で融資や投資をして、リターンを得ている。
つまり、お金をたくさん持っているようなイメージのある金融機関だが、手持ちの現金は驚くほど少ない。
なので通常、金融機関は金融機関同士でお金を融通しあっている。
だが金融機関が倒産する可能性が高くなると、話は別だ。
お金の余っている金融機関もお金を貸すことに、躊躇してしまう。
そうすると、お金を借りられない金融機関は決済ができなくなり破綻してしまう。
比較的サブ・プライム・ローンの影響が少ない金融機関も、疑心暗鬼となった市場から危ないと噂が立っただけで、お金が借りられなくなる可能性が増えて、破綻の危険性が増える。
金融機関が手持ちの現金を積み増そうと、資金を回収し始めると、市場に出回るお金が少なくなり、景気への影響も懸念される。
また、世界最大の自動車市場であるアメリカで、車の販売台数の減少が始まっている。
原油高の影響もある。
そうなると、排気量が大きな高級車を販売しているベンツやBMWは影響が大きくなる。
燃費のいいホンダやトヨタにしても影響を免れない。
今のF1は、自動車メーカー抜きでは成り立たなくなっている。
これまでは、アメリカの好景気と新興国の経済発展で利益を得てきた自動車メーカーであるが、今後の情勢は不透明である。
ちなみに、大メーカーで多少の不景気にも安泰と思われている自動車メーカーであるが、実情はそうでもない。
自動車の開発、生産は驚くほど大量のお金と長い時間がかかる。
新型車の開発には数百億円、開発期間は3年から4年が相場だ。
しかし、新型車が売れるか売れないかは、市場に出してみないとわからない。
私が、自動車産業は石油ビジネスの次に、リスクが大きい産業であると言うのは、そういう理由である。
アメリカのビッグ3が短期間で凋落したのも、こういう背景がある。
単価の高い自動車は、台数が売れれば驚くほど儲かる反面、売れる車を作れなければ、値下げをしなくてはならず収益性が悪化する。
収益性が悪化すると、新型車の開発にお金を掛けられなくなり、魅力的な車が作れなくなる。
負のスパイラルである。
そうなると、F1から撤退する自動車メーカーが現れ始めてもおかしくは無い。
自動車メーカーが撤退を始めるときに、チームを売却してくれればいいのだが、そうなるとは限らない。
F1に巨額な投資をしている自動車メーカーは、個人が買えるほどの安価な金額での売却はしないだろう。
売却しないとなるとF1の参加台数一時的にではあるが減ることも考えられる。
そうなれば、FIAやバーニーも困るのでカスタマーカーを認めるようになるだろうし、参入の障壁も低くなるだろう。
かつてF1は今ほど巨額の費用がつぎ込まれていなかったので、景気の影響を比較的受けなくて済んだ。
スポンサーの自動車関連だったり、タバコだったからだ。
彼らは景気がいいときも悪いときも、額の大小は別にしてF1をサポートしてくれた。
だが、今のF1は違う。
世界的な企業が世界的なマーケティングの一環として、F1をサポートしている。
巨額の投資に見合わないと思えば、簡単に手を引くだろう。
また自社の業績が悪化すれば、違約金を払ってでも撤退するだろう。
もっとも、プライベータ全盛だった昔のF1を知っている者としては、それもまたいいとも思う。
今の状態は、行き過ぎだと思うことが度々ある。
一時的には寂しくなるが、F1はそれでも続いていくのだから。
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