メルセデスの強みと弱み
バーレーンGPでハミルトンが完勝したとは言え、メルセデスは安心できない。というのもロズベルグは3位だったからである。もしベッテルがミスしていなければ、4位だった可能性もあるわけで、簡単には見逃せない問題である。
昨年のメルセデスもこのブレーキトラブルに悩まされてきた。初の黒星となった昨年のカナダGPでも彼らはリア・ブレーキのトラブルに見舞われて勝利を失っている。
このカナダGPは年間で最もブレーキへの負担が大きいことでも有名なトラックレイアウトである。そして今回のバーレーンもブレーキへの負担が大きい。
昨年から導入された電子制御のリアブレーキであるブレーキバイワイヤー(以下BBWと略)であるが、これは昨年からMGU-Kの容量が増えて、発電する際の抵抗を増えてドライバーがコントロールすることが難しくなったことから導入された技術である。
モーターの抵抗が大きくなりブレーキ効果が増したことにより、リアブレーキの大きさは、それ以前よりかなり小さくなった。その為、MGU-Kにトラブルが起きると加速が鈍るだけではなく、リアブレーキが効かなくなる。
特にカーボンインダストリーズ製のブレーキディスクは作動温度領域が狭く、管理が難しい。その分、温度上昇が速く、踏みはじめから制動力がでるという利点がある。一方、ブレンボ製のディスクは適正使用温度の範囲が広く、温度管理の面では優れている。だが温度上昇が若干遅いので、ブレーキ踏み始めの制動力の立ち上がりが遅いという特徴を持っている。
温度が上昇して制動力が落ちることはF1マシンにとって死活的な問題である。加速が多少遅くても走ることはできるが、ブレーキの効きが悪くなると走ることすら危険になる。
今回のトラブルの原因をメルセデスは明らかにしていないが、ハミルトンの言葉から推測すると、周回遅れのマシンに引っかかった時に、ブレーキの冷却能力が下がって、多少オーバーヒートになったようである。
カーボンブレーキは適切な温度領域に入れてやらないときかない。特に温度が上昇するとディスクが破壊される可能性もあり、とても危険な状態になる。
僅かな温度上昇であれば、少しブレーキングをソフトにしてやれば、大きな問題はない。だがこれだけ速いメルセデスでさえ、ブレーキを冷却するためのダクトを必要最小限度の大きさにしていることが、今回判明した。
つまりメルセデスの速さは、パワーユニットが優れているかだけではなく、一つ一つの領域を少しずつ改良して、それを合計することで大きな改善につなげていることがよくわかる。
- メルセデスとフェラーリの戦いはつづく
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