2013 Rd.14 韓国GP観戦記<BR>ベッテル4連勝と輝くヒュルケンベルグ
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▽ベッテル怒濤の4連勝
ベッテルはセーフティカーが二度にわたり導入され、築いたリードを失ったが、全く動じることもなく今シーズン8勝目をかざった。ベッテルは夏休み明けのレースに全勝しており、これで4連勝となる。
スタートで前に出ると後は2番手のグロージャンを毎周0.5秒前後引き離していく。グロージャンもハミルトンをパスするなどいい走りを見せていたのだが、ベッテルにはかなわなかった。ただシンガポールであった1秒のマージンはなく差は縮まったのではあるが、ベッテルにとっては問題はなかった。
ベッテルにとっての最大の関心は、右フロントタイヤのインサイドショルダー部分の摩耗だった。これは昨年もおこったことでこのサーキット特有の現象である。インサイドショルダー部分はかなり摩耗していたが、タイム的には全く問題がなく、いつものようにピットからペースを抑えるように指示が出ても、無視して走るいつものベッテルがそこにいた。
▽今日一番の走りを見せた ヒュルケンベルグ
この日一番輝いたのは、ニコ・ヒュルケンベルグだった。Q3へ進出し7位からスタート。レース前半はアロンソを従えて走り、SCの後はハミルトン、アロンソを従えて走る彼は見事だった。彼のマシンはタイム的には1秒ほど遅かったが、立ち上がりのトラクションが抜群で、一度はハミルトンに前に出られても抜き返すなど、最高の走りを見せた。
後ろからプレッシャーを掛けられた時に、ドライバーの真価が問われる。彼は前と後ろの両方を見ながらドライビングしなければならなく、後ろにワールドチャンピオンを従えた場合、かなり厳しい。フェラーリとの契約が結べなかった彼がアロンソの前でフィニッシュしたことは、皮肉な結果である。だが今回の走りは彼の評価を急激に高めることになるだろう。ただロータス入りには資金面も必要となり、契約まではまだまだ紆余曲折がありそうだが、これで彼にはマクラーレン入りの扉が開くかもしれない。
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▽失望の三位 グロージャン
予選4位の走りを見せたグロージャンは、ウェバーの10グリッド降格により3位スタートとなった。コース上でハミルトンを抜いた彼は、その後も2位をキープ。ただ唯一のミスが彼から2位を奪い取ってしまった。
最初のSCあけ直後の最終コーナーでグロージャンは少し大回りしてしまいスピードをロス。三位まで順位をあげていたチームメイトのライコネンのパスされてしまう。本当にいい走りをしていただけに残念な結果である。実際に彼はキミより速かったし、ペースは全く問題がなかった。だがこのレベルで戦うとたった一回のミスが結果に反映されてしまう。
そこが彼とワールドチャンピオンに違いであり、学んでいかなければならない点だ。なぜならあの最終コーナーを多少落として走っても抜かれる可能性は低い。最も気をつけなければならないのはターン2と3の立ち上がりだ。ここさえ抑え込めれば抜かれる可能性はほぼない。ヒュルケンベルグが遅いマシンで4位になれたのもそれがわかっており、それ以外の部分では無理しなかったからである。
新しいタイヤになってからグロージャンはキミに対して予選で勝っている。にもかかわらず決勝でキミに勝てないのは、ほんの少しの差が明暗を分けているのである。彼は速さを持っている。それだけにそのわずかな差がつめられるかどうかが、チャンピオンとその他のドライバーを分ける小さく大きな差となる。
▽ピレリのトレッド剥離はペレスだけが悪いのか?
今回、ペレスの右フロントタイヤのトレッドが剥離した。これはシーズン前半に見られた現象で、一瞬緊張がはしったが、実はその前にペレスが盛大にフロントタイヤをロックしていたことが判明。右フロントのインサイドショルダー部分にダメージを与えたのが原因である。
確かにペレスのタイヤロックは酷く、彼のミスである。ただ酷いとはいえタイヤをロックしただけで、トレッドが剥離するのは普通の現象なのだろうか?以前のピレリタイヤでもロックさせてタイヤをダメにすることはあったが、剥離するのは普通ではない。ペレスに非があるのは明らかであるが、この程度でトレッド剥離が起きるようでは、今後も心配である。なぜなら剥離すれば後ろのドライバーには危険だし、今回もウェバーが危険な状況をギリギリでかわしている。けが人が出てからでは遅い。
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▽問題の多いサーキット運営
以前から指摘されていたが、今回もマーシャルの対応には問題が残った。一番問題になったのは、ウェバーのマシンが火災に見舞われた時だ。まずマーシャルが来るのが遅く、消火活動が始まるまでに時間がかかった。あれではエンジンやシャシー本体にまでダメージがいきかねない。
さらにセーフティカーが登場する前に消化器をのせたクルマをベッテルの前に登場させて、あわや大事故につながりかねなかった。ストレートで前がよく見えていたから良かったものの、もしあれがコーナー部分だと危険な状況になっただろう。
さらにウェバーの火災現場でマーシャルはF1でよく使われる二酸化炭素消火器ではなく、エンジンやギアボックスにダメージを与える粉末消火器で消火をして、スカパーの解説者の森脇基恭氏を「最低」と激怒させた。彼は自身のレーシングチームを所有しており、消火活動でマシンがスクラップになることが我慢できなかったのだと思う。
▽アロンソは6位でベッテルは王手
アロンソは6位からスタートし6位でフィニッシュ。フェラーリはタイヤのグレイニングがひどく全くペースがつかめなかった。タイヤを労りつつ最後のラップで再度ハミルトンに仕掛けたものの、抜けずに終わる。ベッテルの3連勝に隠れていたが、アロンソも夏休み明けは3連続2位でベッテルについてきていたのだが、今回は力尽きた。
これでベッテルとアロンソのポイント差は77点に開いた。これにより次の日本GPでベッテルが優勝し、アロンソが9位以下であれば、ベッテルのチャンピオンが決定する。ただ実際問題としてベッテルの優勝は高い確率で実現するだろうが、アロンソがトラブルなしで9位以下というは考えられないので、日本でベッテルのチャンピオンが決まることはないだろう。ただベッテルが4年連続チャンピオンに王手をかけたことは間違いがない。
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