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なぜメルセデスは違う作戦を許さなかったのか?

sne21132-s レースはたんたんと進行した。予選トップ3がそのままの順位でフィニッシュ。順位の入れ替わりもほとんどなかった。 今のF1では同じ程度のパフォーマンスを持つマシンに乗っていると、オーバーテイクするのは困難である。たとえDRSがあったとしてもである。 ハミルトンも再三、ロズベルグの1秒以内に入りDRSを使ったが、それでも追い抜くチャンスすらない状況だった。だからハミルトンはロズベルグとは違うタイヤ戦略をとりたいと願った。だがメルセデスチームはそれを許さなかった。それはどうしてだろうか。 チームとしては当たり前だがチームとしての成績が最優先である。もしこの時、ハミルトンに2ストップの作戦を許可すると、最後の最後にタイヤが終わって、ベッテルに抜かれるリスクがある。 今回、メルセデスは当初2ストップの予定だったと思われるが、ベッテルが3ストップ作戦を仕掛けてきたので、それに対応して3ストップに変更した。同じ作戦ならメルセデスはフェラーリに負けない速さがあるからである。 チームとしたらロズベルグが勝とうが、ハミルトンが勝とうが関係ない。1-2フィニッシュさえしてくれればいいのである。だからその範囲内であれば2人のバトルは許される。だがそれを脅かすリスクを取ることは許されない。 そして違う作戦を許されなかったもう一つの理由がある。それは2位のハミルトンが違う作戦でもし逆転したら当然、ロズベルグは不満を持つ。どうして自分も同じ作戦にしてくれないのかと。 メルセデスの場合、前を走るドライバーにタイヤ交換の優先権がある。だから通常アンダーカットされないためにも、前を走るドライバーが先にタイヤ交換をする。その際に後ろを走るドライバーが違う作戦をとれば、先にタイヤ交換をすませたドライバーは不満を持つ。 そして昨年、それは実際におこっている。だからメルセデスは二台に同じ作戦をとらせて、違う作戦を許さないのである。 メキシコGPでもハミルトンは違う作戦を求めて、許されなかった。今回、ロズベルグがハミルトンがタイヤ交換したのか気にしていたのもハミルトンからのプレッシャーを感じていたと言うよりも、ハミルトンが違う作戦をとったのか気にしていたのだと思う。 同じ作戦ならばハミルトンに抜かれないくらい今回のロズベルグは安定した走りを見せていた。 結果としてレースは淡々と進行し、盛り上がりに欠けたかもしれない。だがそれをもってしてメルセデスを責めるのは酷であろう。彼らは勝つために巨額の資金を投入しているわけであり、二台のマシンが限界ギリギリまでタイヤを酷使するような作戦を許して、ベッテルに逆転されたならば、世間の笑いものになってしまう。 だからアブダビでも同じ状況が生まれても、同じように淡々とレースが進行するのは間違いない。メルセデスが2人のドライバーに違う作戦を許すのはベッテルが1位か2位を走っていて、メルセデスのドライバーがリスクを冒す必要がある時である。 だからレースを盛りあげるためにもベッテルがスタートで、メルセデスの少なくとも1人のドライバーを抜く必要がある。予選でメルセデスよりも早く走ることは事実上不可能であるから。
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