ホンダ復活の兆し
昨年、苦しみ続けたホンダに復活の兆しが見られる。彼らは昨年の教訓を学んでいる。
昨年1年間を通して苦戦したホンダの一番最初の問題はセンサーのトラブルであった。センサーにトラブルが出るとありもしないトラブルが発生したとして走行が続けられなくなる。シーズンの序盤にはこのトラブルが続出して、マシンの走行距離が延ばせなく、開発が進まなかった。
この問題が片付いたのが昨年のスペインGPである。ホンダの新井氏はスペインGP前と後では大きく変わったと述べている。
「スペインは大きな進歩になりました。まだセンサーに小さなトラブルはありますが、それは他のチームにも言えることです」
「しかしスペイン前と後では全く違いました。大きな問題を乗り越えたのです」
センサーのトラブルが解決してもホンダの快進撃は始まらなかった。理由はエンジンのパワー不足である。センサートラブル克服後に改良をして、徐々にではあるがエンジンのパワーは増えてきた。
「我々はまだ完全に追いついていません。でも私たちがどの位置にいるのかはわかっています。手を伸ばせば届く位置にいます」
エンジンのパワーが増えてきたと同時に、出てきた問題が信頼性不足である。
「シーズン中に変更した部品の品質に問題がありました。ある部品では品質管理の問題があり、もう一つはエンジンパワーが増えたことにより信頼性の問題がでてきました」
「シーズン当初はエンジンパワーが少なかったので、エンジンに負荷がかからず信頼性に問題はありませんでした。馬力が増えてきたら弱い部分の部品が壊れました。私たちは常に問題を追い続けています」
そして次の問題が夏休み明けのスパとモンツァで発覚した。ERSのエネルギー回生不足である。彼らはMGU-Hからのエネルギー回生が少なく、長いストレートの終わりでは電気が不足し、モーターのアシストがなくなる。これにより彼は240馬力を失うことになった。
「いつ気がついたかですか?夏のヨーロッパシーズンです」と新井氏は認めた。
「これらのサーキットはエンジンの性能が試される厳しいコースです。マシンにはストレートで高いパワーが求められます。できるだけ多くのモーターアシストも求められます。しかし私たちはその部分で劣っていました」
「その時点で気がつけたのはよかったのですが、(レギュレーションで開発が規制されているので)ハードウェアを変更することはできませんでした」
ホンダの最大の問題は、MGU-Hからのエネルギー回生不足である。単純にホンダはターボの回転から回生するエネルギーの発生量がライバルに比べて少ない。そしてこれはパワーユニットを最小限の大きさにする「サイズゼロ」コンセプトに由来している。
「ホンダはターボやMGU-HをエンジンのVバンク内に納めるようにしました。でもそれはあまりにも小さかった」と新井氏は告白した。
「なので私たちは2016年に向けてタービンとコンプレッサーを変更しました。それらは少し大きくなります。それでも昨年同様まだVバンク内にとどめています」
新井氏が言うことは明らかだ。サイズゼロコンセプトとは維持しているが、ターボユニットのサイズは若干大きくしたのだ。これは大きな進歩である。
「サイズゼロコンセプトを信じています。PUが小さければ空力やシャシーのパッケージ面で有利です」
「ライバルのPUを見れば、それらがどれほど大きいのか、小さいのかわかるでしょう。私たちのPUは一番小さい」
「とても小さくパッケージしていたので、それを維持したい。それが私たちの哲学です。サイズゼロでいきたいのです」
しかしホンダは復帰1年目はもう少し保守的なアプローチを取るべきだったのではないか。
「2013年や2014年の段階で議論はありましたよ。保守的にいくのか、挑戦的にいくのか」
「最終的に大きな挑戦をすることにしました。もし保守的なアプローチをしたら、大きな進歩はないですし、シャシー側もメリットがありません。私たち、マクラーレンとホンダは両方合意の上で、挑戦することに決めたのです」
新井氏はサイズゼロはホンダにとって大きな問題ではないと述べている。彼は2008年以来F1から離れていた対価をホンダが支払っていると考えている。ホンダのスタッフはF1の開発スピードに追いついていない。
「2008年にF1から撤退しました。この失われた期間が私たちの経験に大きなダメージを与えました。なぜならF1は毎年大きく進化していくものだからです」
「もちろん外部から注意深くF1を見ていました。でも実際に内部で何が起こっているのかはわからないし、パワーユニットは完全に変わりました」
「2015年のライバルとの差がどれほど大きいのかもわからなかったし、多くの変化がありました」
「でも大きな進歩がありました。今はいつ何をどうすれば良いのか理解しています」
ホンダは彼ら自身の問題を理解して、それを改良してきた。実際のどの程度のパフォーマンスを見せるのかは、プレシーズンテストで走ってみなければわからない。だが期待はできそうである。
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