中国GPでメルセデスが速かったもうひとつの理由
中国GPでロズベルグは2位のベッテルに対して37秒もの大差をつけて優勝した。まぁ、メルセデスは速いから仕方ないよなと思うかもしれない。
だが実はオーストラリアGPでは3位のベッテルに対して9.6秒差、バーレーンGPでも2位のライコネンに10秒差しかつけていない。
確かに中国GPではベッテルのタイヤ交換数は一回多いが、これはセーフティカー中にタイヤ交換しているので、あまり関係がない。ベッテルはスタート直後の混乱で一時順位を落としたことが影響はしているが、3位のクビアトとロズベルグとの差は45秒もある。
これには当然、多くの現象が影響しているのであるが、一番影響が大きいと思われるのが、タイヤである。
実は中国GPの直前に、ピレリは(また)タイヤの最低内圧をあげた。当然、タイヤの空気圧が変化すればマシンに大きな影響を及ぼす。
通常、タイヤの内圧を上げるとタイヤの変形は抑えられて、タイヤの強度的には有利に働く。ピレリがタイヤの内圧を上げたのは、第2セクターでの中高速コーナーでのタイヤの耐久性を上げることを目的にしている。
だが自動車の世界では、ある項目の値が上がると、他の項目が下がるのが一般的である。
タイヤの空気圧を上げるとタイヤの強度は増すが、それと引き替えにタイヤのグリップが減る。その為、中国GPでは金曜日のフリー走行からグリップ不足を訴えるドライバーが続出した。
だがこのタイヤの空気圧変更の影響は、マシンによって当然異なる。タイヤのグリップが減るのは、空気圧が上昇することでタイヤの変型量が抑えられて、タイヤと路面の接触面であるコンタクトパッチが減少するからである。
だがこのコンタクトパッチを増やす方法がある。皆様ご存じのダウンフォースである。ダウンフォースで空気的にマシンを押さえつけると、タイヤが変型してコンタクトパッチ面積が増え、グリップが増えるという仕組みである。
ここまで来れば勘の良い読者の方は、もうおわかりであろう。この空気圧の変化を最も受けないマシンは、ダウンフォースが大きいマシンである。その名はメルセデスという。
もともとメルセデスはダウンフォース量が多いのだが、今回タイヤの空気圧が変更されたことで、その強みがよりはっきりと表れたのである。
これからもスペインや鈴鹿のようにタイヤへの負荷が大きいサーキットを中心に、タイヤの空気圧が大きくなるようなことがあれば、メルセデスは易々とライバル達を引き離してしまうだろう。
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