メルセデス 激突の衝撃 どちらが原因なのか
このレースはメルセデスの圧勝、1-2フィニッシュになるはずだったが、その予想はオープニングラップに消えた。
スタートはポールポジションのハミルトンが先行するも、1コーナーでインを抑えようとしたあまり、スピードが落ちた。そこをスリップストリームを利用したロズベルグがアウトから抜いていく。
これはハミルトンにとってはショックだったであろう。基本的にこのサーキットは追い抜きが難しく、最初に1コーナーをトップで抜けたドライバーが勝つ可能性が高いからである。ところがそのハミルトンに思わぬチャンスが転がり込んできた。
3コーナーの立ち上がりでロズベルグが失速。急速にロズベルグとの差を詰めるハミルトン。追突寸前でインにマシンをふり、ロズベルグのインに飛び込むハミルトン。だがほぼ同時にインを閉めたロズベルグ。
ハミルトンは接触を避けようとして、グリーンに飛び出したが、完全にマシンのコントロールを失い、スピンしながらロズベルグに激突。1-2確実だった二台がレースから消えた。
この事故はレース後の審議対象となり、審議された結果、両者ともにペナルティなしとなった。
だが審議の中で興味深い事実が浮かび上がってきた。それはロズベルグがエンジンのマッピングの設定を間違えており、この時点でハミルトンに対して180馬力ほどパワー失っていたのである。
そう考えるとロズベルグが急に失速した原因が理解できる。これだけの馬力を失えば、ハミルトンに抜かれるそうになるのも当然である。ではなぜロズベルグはそんな基本的な間違いをしたのか?
今のF1はとても複雑である。昔のステアリングには無線とドリンクのボタンしかなかったし、さらにさかのぼればハンドルにボタンがない時代も長かった。だが今や30個近いのスイッチやボタンが所狭しと並んでいる。
しかもスタート前のフォーメーションラップでやることも多く、ドライバーの頭はフル回転状態となる。その上、昨年途中からフォーメーションラップ中にピットから無線で細かい指示を出すことができなくなった。
これによりフォーメーションラップ中に何をやるのか、どういう順番でやるのか、全てドライバーが覚えなければならなくなった。
そう考えるとロズベルグがマッピングの設定を間違えた理由が理解できる。
この事故の責任がどちらにあるのかは見方が分かれる。だが少なくともロズベルグがマッピングの設定を間違えなければ、発生しなかった事故であることは間違いない。
この事故の原因がどちらにあるのか論争が激しいが、私は少なくともハミルトンにはないと考えている。というのもロズベルグが急激にインを閉めたときに、ハミルトンは接触を避けようとしているからである。チャンピオン争いのことだけを考えるとハミルトンはさけるよりぶつかった方が得策である。
グリーンに飛び出したハミルトンはこのレースでリタイヤし、そのまま走り抜けたロズベルグが優勝していたかもしれないからである。
それにロズベルグはハミルトンをミラーで確認していたと述べている。つまりロズベルグはハミルトンが接近してきていることがわかっていた。しかもパワーを失っていて失速しているのは、F1ドライバーであれば認知している。2台のマシンのスピード差は18Kmもあった。
これでイン側に飛び込まなければF1ドライバーではない。
もし2台の速度差が数キロメートルだったら、ハミルトンは激突を避けられた。だが18kmもスピード差がある状況では、ハミルトンが避けるのは不可能である。
これだけのスピード差があるのに、インを閉めれば危険である。実際、ハミルトンが避けなければ2台はもっと危険な状態になっていた。ハミルトンはロズベルグのリアに突っこみ、下手をするとタイヤに乗り上げて宙を舞っていたかもしれない。これは開幕戦でのフェルナンド・アロンソと同じ状況である。
しかもハミルトンがロズベルグに激突したのは、完全にマシンコントロールを失ってからである。これではハミルトンが悪いと言われる理由はない。
もっともロズベルグにペナルティを与えろとも思わない。この事故はFIAのいうようにレーシングアクシデントであろう。
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