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クラッシュは誰の責任か

ベッテルをリタイヤに追いやった、スタートシーンを振り返ってみよう。
 
スタート直前に降り始めた雨が路面を濡らし始めた。東南アジア独特の粒の大きな雨粒ではあるが、雨量はそれほど多くはない。そのためセーフティカースタートにはならずに、通常のスタートになった。ここがひとつの運命の分岐点になった。
 
ベッテルやハミルトンを含む上位の6台は全てインターミディエイトタイヤを履く。
 
スタート直後、抜群の蹴り出しを見せたのがライコネン。ベッテルとフェルスタッペンは路面が濡れていることもあり、かなり慎重なアクセルワークで無難なスタートだった。
 
ライコネンは瞬く間にフェルスタッペンを追い抜いていく。フェルスタッペンはスタート直後、後続のマシンを牽制するためにマシンをコース中央に寄せた。そのため加速のいいライコネンはイン側に飛び込み、フェルスタッペンを追い抜く。
 
一方のベッテルはまずまずのスタートだったが、こちらも順位を守るべくイン側にマシンを寄せる。これは別に誰もがやる普通の動きである。ただ今回はイン側にフェルスタッペンがいたので通常より厳しくしめているように見える。
 
インからライコネン、アウトからベッテルに挟まれたフェルスタッペンは行き場がなくライコネンと接触。そのライコネンはコントロールを失いベッテルに接触してしまう。
 
ライコネンからすれば、フェルスタッペンをほぼ完全に抜いているのであるから、フェルスタッペンは引くと思ったのだろうし、普通のドライバーであればそうしただろう。だがフェルスタッペンはそうはしなかった。彼は引かなかった。
 
この事故はスチュワードが裁定したように誰に責任があるわけでもなかったのだろう。
 
ただ誰もチャンピオン争いがもらい事故で決まるのを見たくはない。昨年のチャンピオン争いがエンジンブロウで決まったように。
 
このクラッシュを避けるには、フェルスタッペンがバックオフするしかなかった。確かに彼にはそうする義務はない。彼は彼の走るレーンを守っただけである。だから彼には事故の責任はない。でも彼にはアクセルを戻して欲しかった。
 
雨が降っていたこともあり、彼には優勝のチャンスがあった。もしフェルスタッペンが少し引いていれば、二台のフェラーリはターン1で接触しているかもしれない。
 
ベッテルはイン側にいたライコネンを見れてなかったし、ライコネンはあのポジションではターン1を曲がりきれないから、もう少しコース中央にマシンを寄せなければならなかった。だが恐らくそこにはイン側に寄せたベッテルがいる。
 
この事故でもっとも失ったものが大きいのは間違いなくベッテルである。だがフェルスタッペンもまた大きなものを失ってしまった。
 
予選終了後、ハミルトンはベッテルの横にはフェルスタッペンがいるので何が起こるかわからないと発言していたが、まさにそれが的中してしまった。フェルスタッペンはこんなことを言わさないようにしなければならない。
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