
このレースも圧倒的な速さを見せるメルセデスの2人が勝利を争うと見られていた中国GP決勝。ロズベルグのマシンに起こったほんの些細なトラブルが、このレースの結果を支配した。
雨の予選ではデータ表示のエラーでミスをして、4位スタートとなったロズベルグが1周目に予選2位と3位のリカルドとベッテルをかわせるかどうかが、彼の勝利に大きな意味を持っていた。ここで前に出ないとハミルトンがリードを広げるのは必至だったからである。
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ところがフォーメーションラップ中にテレメトリーデータがピットに送れなくなるトラブルがロズベルグに発生。これで彼は大きな不利を抱え込むことになる。
スタート前のフォーメーションラップ中にはタイヤやブレーキを温めたり、クラッチの状況をテレメトリーで確認して、ピットはドライバーにバーンアウトのやり方や回数を細かく指示する。だがロズベルグのピットでは情報がほとんどないので指示が難しくなった。彼らはピットからコースへ出る時にスタート練習した際の最新でないデータを元にスタートのセッティングを指示せざるを得なかった。
これでベストなスタートを切れるわけもなく、ロズベルグはスタートで失敗。1コーナーの進入で後ろから来たウィリアムズのボッタスを接触して、さらに順位を落としてしまう。
この接触で大きなダメージがなかったのは幸いだったが、この後も燃料消費量をロズベルグが液晶表示を読み上げて、ピットに伝えるなど、不利な状況でのレースを強いられた。今年は特に燃料消費量がレースの鍵を握るので、このデータがないと、細かいマッピングの変更などが指示できず、余裕を持ったセッティングしか使用できないので、苦しいレースになる。
もちろんマシンの性能自体は他のチームに比べて圧倒的な速さがあるので、2位になるのは難しくはなかった。だがロズベルグが2位になった時点では、ハミルトンは遙か彼方を走っていて、勝利は望めなかった。
これでチームメイトのハミルトンは3連勝。ポイント上ではロズベルグが4ポイントリードしているが、心中は穏やかではない。
だがここで焦る必要はない。1勝しかしていないロズベルグであるが、まだポイントはリードしている。チャンピオンはたくさん勝ったドライバーがなるわけではない。ポイントを一番多く獲得したドライバーがなるものである。
必ずロズベルグが勝てるレースがやってくる。それまでは焦らずじっくりと完走してポイントを確実に獲得することが重要である。どちらにせよテレメトリーが故障した時点で、中国GPでのロズベルグに勝ち目はなかった。
だがここにチャンピオン経験があるドライバーとないドライバーの差が出てくる。勝てる時は確実に勝ち、勝てない時は確実にポイントを獲得する。これがチャンピオンになる方程式である。
だが口で言うのは簡単だが、実践するのは難しい。ドライバーはいつでも勝ちたいものである。ロズベルグがチャンピオンなれるかどうかは、今後の数レースが重要な意味を持つ。焦らず自分のレースができるのか、そこがポイントである。どちらにせよライバルはハミルトン1人なのであるから。