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スーパーアグリの苦境

スーパーアグリが苦しんでいる。 彼らは予定していたバルセロナ・テストへの参加をキャンセルした。 理由は、「やむを得ない状況」とだけしか明らかにされていない。 来週のテストには参加することを、表明しているがその可能性も低いように思える。 本来はこのテストでニューマシンのお披露目とドライバーの発表をする予定だった。 それができないのだから、事態は相当深刻だ。 今年に入りスーパーアグリは、ほとんどテストができていない。 共通ECUに関してはホンダが開発しているので問題はないだろうが、トラクションコントロールのなくなったマシンで走れないことは、二人のドライバーにとっては痛い。 事の発端は、昨年スポンサー契約をしたSS Unitedである。 彼らが予定していた資金を振り込まなかったために、昨シーズン後半からスーパーアグリは開発をすることができなくなり、ただ参加しているだけの状況となってしまった。 その為、シーズン中盤まではリードしていたトロ・ロッソやホンダに逆転を許してしまった。 特にシーズン終盤は荒れたレースが多かったので、下位チームであるスーパーアグリに大いにもチャンスはあったのだが、それをつかむこともできない状況だった。 さらには、昨年のマシンをオリジナルマシンとしてポイントを獲得し、分配金をもらう算段だったが、これも他チームからの抗議により凍結されている。 2008年からはカスタマー・マシンの使用が可能になる予定であったが、それも他チームからの反対で状況に変化はない。 そこへきて、それまで継続されていたホンダの支援が縮小された。 これは英国のホンダ・レーシングが関係していると噂されている。 スーパーアグリが昨シーズン前半のような活躍をすると、彼らの立場が悪くなるので、ホンダの本社へワークス・チームへリソースを集中させるように説得したというのである。 幸いホンダの支援は継続されることになったが、その規模は縮小された。 もっともホンダ側から見れば、どこまで面倒を見るのかと言うことは、なかなか難しい判断だろう。 彼ら自身が結果を残せていないのであるから。 彼らを責めることもできない。 ニューマシンのクラッシュテストに合格しているにも関わらず、テストに参加できていないと言うことはマシンを作成する資金がないか、テストに参加する資金すらないかのどちらかである。 マシンの製作が遅れているのであれば、そのように説明するだろう。 どちらにしても、もはや株式の売却は避けられそうもない。 私の考えでは、第三者にスーパーアグリの株式の大半を譲渡し、今年1年間は 鈴木亜久里氏が代表にとどまり、シーズン終了後代表を辞任し、チーム名も変わるというのがもっともあり得るシナリオではないか。 ところが、ここでも問題がある。 それは最大の理解者でもあり、協力者でもあるホンダだ。 ホンダとしては、これだけの強力をしているのであるからドライバーの選定にも影響力を行使したいだろう。 佐藤琢磨とデイビッドソンをのせて欲しいはずだ。 ただ、鈴木亜久里氏が出資交渉をしている人間は、当然金を出すのだから、二人のうち一人は自分達の意向に沿うドライバーを求めるのが当然である。 そうなると、ホンダと新しい出資者の間に挟まれた鈴木亜久里氏は身動きができなくなる。 亜久里氏とホンダは、今週この件に関して話し合いをすると報じられている。 そこでは、スポンサー交渉の状況や、チームの財政状態等、かなり厳しい話になるだろう。 ここで、今後のスーパーアグリの運命が決まると言っても過言ではない。 スポンサーが見つかればよいが、日本の会社には期待できそうもない。 大企業の社長はF1の価値がわからないし、100億円という金額は上場企業でもそう簡単に出せる金額ではない。 かといってベンチャー企業に100億円は用意できない。 八方ふさがりのスーパーアグリではあるが、なんとか開幕戦のオーストラリアGPのグリッドに二台並んでいることを望む。 彼らの挑戦と冒険を終わらせないためにも。

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