
ニコとロズベルグの2人がチャンピオンシップ争う今シーズンであるが、2人のドライビングはどう違うのであろうか?
まず通常のスピードで走っている限りは、2人の違いはほとんどない。だが限界を超えるようなドライビングをすれば話は別だ。
ハミルトンは本能的にF1マシンをドライブする。例えばあるコーナーへほんの少しオーバースピードで飛び込んでも、自然とアクセルとブレーキで修正し、何事もなかったようにコーナーを立ち上がっていく。
だがニコはオーバースピードで飛び込んだ場合、コーナーの途中か、立ち上がりでマシンの挙動を乱してしまう。
この2人の特性の違いは予選で顕著に表れる。モナコの予選でニコが飛び出したのは、2度目のアタックで少しリスクを冒したからだが、その為ニコはマシンをコントロールできずに、エスケープロードに飛び出してしまった。
もちろんハミルトンもオーストリアGPの予選のようにミスすることはある。残念ながら、今年のピレリタイヤは固くグリップが少ないので、攻めすぎると簡単にグリップを失ってしまう。このようなタイヤはハミルトンの様に限界を超えてコントロールできるドライバーにとっては、あまりありがたくない。
ではニコはいいところがないのかというと、当然そうではない。彼は他のドライバーより知的である。彼はエンジニア的要素があるので、マシンの反応や、タイヤの特性について、なぜそうなるのか理解する能力が高い。だからセッティングに関しても一日の長がある。彼はここでルイスに対してアドバンテージを得る。
わかりやすく言うと、ルイスは感覚的であり、ニコは論理的である。
私がよく話をする、ドライバーの違いについての例え話がある。未知のサーキットでセットアップをしていないマシンを走らせれば、ルイスは最も速い。さらに、そのトラックの路面がスリッピーであれば、彼は無敵である。だがセットアップをする時間を与えて、年間20戦戦わせれば一番上にいるのはアロンソである。
ニコはよりアロンソに近いタイプであり、とても頭のいいドライバーである。しかしここで問題が起こる。ニコとルイスは同じチームにいるので、セットアップのデータを共有している。つまりニコはいいセットアップを見つけ出しても、それはルイスの知るところになる。
かつてウィリアムズ・ホンダでマンセルとチャンピオンシップを争っていたネルソン・ピケは、意図的にチーム内に緊張関係を作り、マンセル側に自分のセットアップ情報が流れないようにした。育ちのいいニコがそこまでできるかは疑問であるが、才能にあふれるチームメイトに勝つためには、それくらいのことをする必要がある。
現在、ルイスに対してわずかに4ポイントだけリードするニコ。この2人の才能あふれるドライバーの戦いはとても厳しい。このシーズンのどこが退屈なのか、私には理解できない