
まさに地獄から天国へ返り咲いたニコである。同じマシンに乗りながらハミルトンに着いていけないロズベルグ。セーフティーカーが入るまで2人の差は25秒にも広がっていた。これはドライバーとしては屈辱的である。
だがこれがロズベルグに味方したのだから、レースはわからない。ハミルトンはニコに対して25秒も差があったので、タイヤ交換してもポジションをキープできると判断して、ピットへ戻した。
だがロズベルグはベッテルとの差が僅差だったので、タイヤ交換に入るというオプションは最初からなかった。この時点でロズベルグがタイヤ交換していれば、易々とベッテルにポジションを与えることになったのは明らかである。
これが通常のサーキットであれば、タイヤに厳しいメルセデスには不利に働いただろう。だがここはモナコである。路面は普通の舗装であり、タイヤへの攻撃性は低い。しかもピレリのタイヤも非常に硬いので、寿命はスーパーソフトでさえ40周から50周いけたし、ソフトタイヤであれば、タイヤ交換なしでもゴールまで行けた。
これはタイヤに厳しいが速いメルセデスには好都合である。自分達のパフォーマンスを全力で出しても、タイヤの心配がないのだから。
それに加えてモナコは後ろのマシンが速くても、前のマシンがミスをしない限り抜くことはできない。だからニコは安心して、ベッテルの前でステイアウトすることができた。
そしてその時、ハミルトンがタイヤ交換に入りニコは労せずして、トップの座を手中に収めた。だがその差はほんの僅かでハミルトンのピットアウト時に1秒もない僅差だった。だがモナコではそれで充分である。ハミルトンからの攻撃で防戦一方のベッテルは、前を追いかける余裕もなく、ロズベルグは今シーズン2勝目。自身のモナコGPでの連勝を3に伸ばした。
これでニコはハミルトンとの差を10ポイントまで縮めた。レース前の2人の差は20ポイント。もしハミルトンが1位で、ニコは2位の場合、2人の差は27ポイントである。このレースでニコはハミルトンとの差を17ポイントも縮めたことになる。これはチャンピオンシップを考えると、大きなゲインである。
だがスペインGPとは違い、今回ニコは自分自身の力だけでルイスを打ち破ることができなかったのは事実である。次のカナダGPでニコはハミルトンを自分の力で打ち破らなければならない。それができなければ、チャンピオンシップはまだ遠い存在のままである。