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2009 Rd.11 ヨーロッパGP観戦記 Part2 ライコネンとバドエルの光と陰

▽苦しむバドエルと好調なライコネン ミハエル・シューマッハーの復帰という真夏の夜の夢を見せてくれたフェラーリだったが、代役の代役であるバドエルは予想以上に苦しんだ。 予選では最下位であり、レースもまた実質、最下位であった。 予選では19位の新人アルグエルスアリから約1.5秒遅れとまったくいいところがなく、ピットレーンでの速度制限違反を4回とられて、決勝では信じられないことにピットレーン上で後続車に道を譲り、直後にピット出口の白線を踏んで、ピット・スルー・ペナルティをもらうおまけまで付いた。 ラップタイム自体は、終盤にいくに従い向上していたが、ラップタイムもなかなか安定していなかった。 今シーズンは事前テストができず、このレースは練習走行という位置づけなのはわかるが、それにしてもスピード不足は明らかであった。 だが、次のスパまで実質数日しかないことを考えると、バドエルの続投は致し方ないと思える。 スパは彼が以前、走った経験があるコースとはいえ10年ぶりというバドエル。 しかも、スパは屈指の難コースである。 果たして彼がこのコースで無事走りきれるのか心配である。 もっとも今年、マシンにほとんど乗っておらず、テストもなしのぶっつけ本番である以上、バドエルを責めることもできない。 なぜフェラーリが彼を選択したのか説明責任が問われるのではないだろうか。 ライコネンは予選6位から、KERSを活かして4位に浮上。 その後、コバライネンをかわして3位表彰台に登ることに成功した。 マクラーレンほどではないにせよ、フェラーリも確実に競争力を復活させてきた。 彼らの問題は予選でのスピード不足。 それさえ戻れば、フェラーリが今シーズン中に勝つこともありえる。 フェラーリは今後もKERSを使って、ブラウンGPとレッドブルを悩ましそうである。 ▽ロズベルグの入賞と一貴のリタイヤ ロズベルグの連続入賞数は七に伸びた。 リソース的にビッグチームに太刀打ちできないウィリアムズであるが、ニコ・ロズベルグは5位に入賞した。 4位コバライネンとの差も1秒を切っていた。 復活を遂げたマクラーレンとこの差は、満足できる結果だ。 今のウィリアムズでは、よほどの幸運がなければ表彰台は難しい状況であるから、このニコの仕事ぶりはたいしたものである。 BMWの撤退により、来シーズンの移籍先がなくなったニコとはいえ、彼ならシートを見つけるのは難しくないだろう。 中嶋一貴のレースは予選で終わった。 Q1の最初のアタック後にトラブルに見舞われた一貴は、二回目のアタックができなかった。 市街地サーキットであるバレンシアは、1周ごとにコースコンディションが良くなってくる。 その為、予選各セクションでの最後のアタックが全てである。 二回目のアタックができなかった一貴に、Q2進出のチャンスはなかった。 レース中も何らかの破片を踏んだと思われるタイヤバーストに見舞われて、後退。 最後はマシンを止めてレースを終えた。 現在、ウィリアムズは来シーズンのエンジンを選択中である。 現時点で最も有力なのはトヨタとの契約を解除して、ルノーエンジンに切り替えるというものだ。 その場合、一貴のシートは微妙である。 今シーズンいまだノーポイントの一貴にとってシートを確保するには、結果を残さなければならない。 もし一貴がウィリアムズから放出された場合、トヨタへ移籍できるかはツゥルーリの契約交渉次第である。 金額面では合意しているらしいが、他の条件面で交渉は難航していて、トヨタとしては交渉決裂も視野に入れているようである。 ▽地元で入賞のアロンソと新人グロージャン アロンソは地元のレースでなんとか6位に入賞。 ファンの期待には応えられなかったかもしれないが、それでも今のマシンでは、これが限界だろう。 上位チームとのスピード差は明らかで、アロンソの力がなければ入賞も難しかっただろう。 新人のグロージャンにとっては経験を積むためのレースとなった。 テストなしでのF1ドライブは、本当に厳しい。 それだけに、グロージャンにとってこのレースに完走したことは、次のレースに向かって大きな経験となった。 Q2に進出しただけでも、たいしたものである。 ▽スピードを増すBMWとフォース・インディア フォース・インディアは、またも新しい空力のアップデートを入れてきた。 その為、スピードが増してきて予選ではスーティルは予選12位と、Q3進出へあと一歩のところまできた。 今回も入賞はならなかったが、スーティルは10位、フィジケラは12位。 ただ、他のチームも開発が進んできており、入賞まで後一歩のところが続いている。 BMWも空力のアップデートパーツを持ち込みスピードの改善が見られた。 下側を大きく抉ってきたサイドポンツーンは、空気の流れの速度を向上させることができそうである。 これによりクビサは8位入賞。 チームにとってはトルコ以来のポイント獲得となった。 来シーズンへの展望が開けないBMWであるが、それでもチームは開発を続けることを明言している。 ▽チャンピオンシップの行方 上位四人のうち、二人がノーポイントで、一人が2ポイントしか獲得できず、バリチェロだけが10ポイントをマークしてランキング2位に浮上した。 それでもトップであるバトンとの差は18ポイントもある。 だが少なくとも特定の中低速主体のコースでは、マクラーレンとフェラーリは競争力を取り戻しつつある。 これはレッドブルにとっては嬉しくない状況だ。 もっとも状況が悪いのはブラウンGPも同じ。 彼らはタイヤ温度に関する深刻な問題を抱えており、今後もスパやシンガポールで同じ問題を抱える可能性が高い。 次のスパは高いレベルでのダウンフォースが求められるので、レッドブルはここで勝つ必要がある。 一方、気温が低いことが予想されるここで、ブラウンGPはいかにポイントを拾うかが、チャンピオンシップに向けたポイントとなる。

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