なぜアロンソはソフトで32周も走り切れたのか? タイヤ戦略から見たハンガリーGP Part1
スタート45分前に降った豪雨により、ハンガリーGPの作戦はバラエティに富んだ、興味深いものになった。では最初から振り返って見よう。グリッドに着く前のレコノサンスラップで各車はウエットタイヤとインターミディエイトタイヤを交互に履いて、路面状況を確認していた。その結果、全てのマシンがインターミディエイトタイヤでスタート。スタート時点で雨は降っておらず、路面は急速に乾くことが予想されていた。
スタートでトップに立ったロズベルグはインターミディエイトタイヤでは速さを見せつけ、あっという間に10秒のギャップを築く。8周目にエリクソンがクラッシュすると、セーフティカーが出ると予想されたが、その時ロズベルグはピット入り口を通り過ぎており、ピットに向かうことができなかった、またセーフティーカーがでるタイミングが少し遅かった為に、後続のボッタス、ベッテル、アロンソもタイヤ交換が遅れて、大きく順位を後退した。
しかもそのセーフティカーが通常よりも遅く走ったので、この4台は更に大幅にタイムを失った。これはメディカルカーが登場して、セーフティーカーが彼らを先に行かせようとしてペースを落としたからである。
この出来事により序盤の上位4台はポジションを下げ、リカルドがトップに立った。
そのリカルドは23周目に2度目のセーフティーカーが登場した時に2回目のタイヤ交換をした。残りは47周もあるので当然3ストップである。一方、アロンソは2回目のセーフティーカーではタイヤ交換しなかった。この時、タイヤ交換をすれば3ストップになるからである。アロンソは38周目にタイヤ交換し、2ストップで最後まで走りきろうとした。しかもソフトタイヤである。
ピットレーンスタートだったハミルトンは39周目にミディアムにタイヤ交換した。これで最後まで行くつもりである。この時点ではメルセデスはアロンソがもう一度タイヤ交換すると考えていた。
金曜日の時点でソフトタイヤは21周しか持たないと予想されていた。日曜日は気温が下がったので更に数周、ドライバーがうまくタイヤを使えばあと数周程度はタイヤの寿命が延びるかもしれない。それでも28周程度というのがソフトタイヤの予想であった。32周はまさに未知への挑戦であった。
結果的にアロンソはリカルドに抜かれながらも32周を走りきり、ハミルトンを抑えきって2位になった。これはフェラーリのマシン性能を考えると想像以上の結果である。しかも彼らは残り3周までトップを走っていて、優勝目前であったのである。素晴らしいアロンソの判断と走りである。
彼らが最後に苦しみながらもタイヤをもたせることができたのは、アロンソが前に誰もいないトップを走行したからである。ピレリタイヤは空気がきれいな状態で走ることでマシンが安定し、タイヤの寿命が延びる。アロンソはそれを知っていて、トップに立ってレースをリードしながら、少しタイムを落とし、タイヤをいたわりながら32周のロングランを目指したのである。
Part2へつづく
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