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フライアウェイを終えて 2010年シーズン序盤を振り返る フェラーリ編

 【フェラーリ】 2月のテストで最速と噂されたフェラーリは確かに速かった。 レッドブルに比べると予選スピードではかなわないが、決勝のスピードはレッドブルに比べても遜色ない。 タイヤにも優しく、ロングランのペースもコンスタントである。 ところがフェラーリには心配な点が一つある。 それはエンジンの冷却である。 フェラーリは開幕戦で、二人ともレース直前にエンジン交換をしている。 オーバーヒートの兆候があった為だ。 オーバーヒートとはエンジンが、定められた温度より上昇する現象を表す。 こうなるとパワーも落ちるし、最悪エンジンが壊れてしまう。 オーバーヒートを防ぐために、クルマにはラジエーターが搭載されている。 ラジエーターで水を冷却し、その冷やした水でエンジンを冷やす。 これを水で冷やすので、水冷エンジンという。 F1ではドライバーの横の箱(サイド・ポンツーンと呼びます)に搭載し、市販車ではほとんどが一番前に装着している。 オーバーヒートを防ぐには、ラジエーターのサイズを大きくするか、空気の流れをよくしなければならない。 どちらもマシンの空力には悪影響を及ぼす問題となる。

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 その為、今のF1ではラジエーターのサイズを限界まで小さくし、空気の流れも必要最小限にとどめている。 今のF1では、これらの冷却系を小さくするために、エンジンの動作温度を高くすることまでおこなわれている。 エンジンの温度が高くても、動作に問題なければ冷却系を小さくしても、問題ないからだ。 エンジンの冷却に問題を抱えるフェラーリは、暑いマレーシアでラジエーターの後ろにスリット切ってきた。 こうすれば当然、サイド・ポンツーン中の空気の流れはよくなり、冷却性能は上がる。 その為、2年前のF1はサイドポンツーンの上面に穴が一杯空いていた。 空気の流れをよくするためである。 だが、2009年のレギュレーションでそれが禁止されて、各マシンは冷却が厳しくなった。 だからフェラーリのスリットも厳密な意味で言えばルール違反であると思うが、エキゾースト出口の一部という理由を付けてそれを認めさせてしまった。 今後はヨーロッパでのレースが続くので、エンジンの冷却に多少余裕は出るだろう。 だが今後も、ハンガリーやシンガポールなど暑いレースでは、心配である。 かといって冷却性能を上げようとすると、空力の効率が下がり、マシンのパフォーマンスは落ちる。 またこのエンジン冷却には別の側面もある。 今年のF1は、レース中の燃料補給が認められていない。 よってエンジンの燃費は非常に重要である。 燃費がよければそれだけスタート時に搭載するガソリン量が少なくてすみ、軽い状態でスタートできる。 だからエンジンメーカーは、燃費を改善すべく改良を加えてきている。 昨年のフェラーリ・エンジンは燃費の悪いエンジンと言われていた。 今年は当然、アロンソの要求などもあり、燃費の改善に取り組んでいたはずである。 燃費を改善するには、シリンダー内に噴出するガソリンの量を減らせばいい。 だがガソリンの量を減らすと、エンジンの温度は上昇する。 ある一定以上のガソリン量をシリンダー内に送り込んで燃焼させると、それは燃えずに残り、シリンダー内の熱により気化する。 液体が気化すると周囲の熱を奪い、エンジンの温度は下がるのである。 つまりフェラーリが燃費重視にするために、噴射するガソリン量を絞っている可能性もある。 だがもしそうであれば、エンジン温度が厳しければ、ガソリン量を増やせばいいのではと考える人もいるだろう。 確かにそうすれば多少重量は重くなるが、エンジンが壊れるよりはマシである。 今のF1マシンでは、エンジンのガソリン噴射量のパターンなどボタン一つで変更することが可能である。 しかしここで問題が一つある。 それは燃料タンクの容量である。 燃料タンクの容量を少なくすれば、タンクの外形を小さくできる。 そうすれば、重心を下げることも可能だし、マシンのシェープを絞り空力の効率を上げることも可能。 だからみんな燃費をよくして、燃料タンクを小さくしたい。 つまりフェラーリはガソリンを薄くして燃費を改善し、タンク容量を小さくして、エアロの効率を向上させている可能性がある。 ガソリンタンクの容量が限られていれば、むやみやたらとガソリン量を増やすことはできない。 もしそうであるならば、これはかなり深刻な問題である。 今年はシーズン中、モノコックの変更が原則禁止とされている。 (安全性などの理由があれば変更は可能) だからこの問題に、フェラーリは1年間付き合わなければならない。 このジレンマをフェラーリがどう折り合いをつけるのか、それともウルトラCを繰り出し解決してくるのかが、注目ポイントである。 実はフェラーリのエンジンにはもうひとつ問題点がある。 それはハイドロニューマチック・バルブである。 通常、市販車のエンジンはスプリングでエンジンのバルブを戻している。 だがF1の様に、エンジンの回転数が1万8千回転くらいになると、スプリングでバルブを戻すスピードが追いつかなくなり、最悪エンジンが壊れてしまう。 そこで圧縮空気を用いてバルブを戻すシステムが、ハイドロニューマチック・バルブである。 フェラーリはこのハイドロニューマチック・バルブに問題を抱えている。 マレーシアでザウバー二台がリタイヤしたのは、このトラブルである。 フェラーリもエンジンに圧縮空気を充填していたとの証言もあり、ザウバーと同じエンジンを使うフェラーリが同じトラブルを抱えていても不思議ではない。 とういか同じ問題を抱えていると考えるのが、普通であろう。 これはエンジンの信頼性の問題なのでFIAに申請すれば、改良は認められると思う。 だがそれをどのようにして、どのタイミングでしてくるのだろうか。 フライアウェイではレッドブルの信頼性に焦点が当たっていたが、私はフェラーリの問題の方が大きいし深刻だと思う。 彼らが空力の効率を悪化させることなく冷却の問題を解決できるか。 ハイドロニューマチック・バルブの問題をどう解決してくるか。 非常に興味深く、これに失敗するとフェラーリは9基目のエンジンをシーズン終盤に投入する必要に迫られるだろう。 ▽ドライバーの確執 中国GPにおいて、ジャンプスタートでペナルティを受けたアロンソはSCや雨にも助けられて4位に入賞。 開幕4レースを終えて、1勝をあげてポイントランキングでは3位につけている。 だがアロンソは、その中国GPで一つ問題を引き起こした。 彼はタイヤ交換でピットに向かう時にピットレーン入り口でマッサをオーバーテイクした。 これに関してアロンソは、 「彼がチームメイトでなければ、それほど話題にならなかっただろうし、 僕にとってはいつもの動きだ。これが僕らの関係を損なうことは絶対にない」 と述べている。 だが、もし前を走るドライバーがマッサでなければ、アロンソはリスクを冒してオーバーテイクしようとしただろうか。 マッサが先にピットに戻れば、アロンソはタイヤ交換する4秒以上の間、マッサの後ろで待たなくてはならない。 実際、この場面でマッサは6秒ほどロスして、いくつかポジションを落としている。 逆に言うと、前を走るのがチームメイトでなければ、追い抜く必要はない。 速度制限ラインの前は、ルール的にはオーバーテイクが可能である。 だから、アロンソの行為自体は合法となる。 だがもし二人が接触していれば、二人とも大きく後退するし、最悪の場合、リタイヤする可能性もあった。 幸いマッサが機転を利かせて芝生に逃げたので、危機は去った。 (ちなみにマッサは、オーバーテイクされた直後、冷静に無線でピットに向かって、アロンソのタイヤを用意するよう告げたようだ) アロンソは常に思慮深いドライバーである。 だからこそ、現役時代のミハエルを二度も破ってチャンピオンになった。 だから今回もアロンソがマッサを抜いたのは理由があるはずである。 たまたま偶然、ピットレーン入り口で抜いたのが、チームメイトでマッサだったのだろうか。 マッサはこの問題をアロンソと話し合わなければならないと、冷静に受け止めている。 そして今回は、アロンソが非を認めて和解するだろう。 だが次はそうはいかない。 次回、このようなことが起きれば、フェラーリは深刻な事態に巻き込まれるだろう。

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