なんとか母国GPに帰ってきた小林可夢偉。だが彼を取り巻く環境は厳しかった。
最新のフロントウィングはチームメイトのエリクソンが使用。これは新しいフロントウィングが1セットしかないためである。さらに可夢偉のリアボディカウルはシンガポール用で後ろのホールが大きく、ダウンフォースが少なかった。これも資金不足で鈴鹿用のボディカウルが用意できないためである。
このパーツの威力はエアロサーキットである鈴鹿では驚異的で、エリクソンのマシンは可夢偉より0.8秒ほど速い計算であった。これでは勝負にならない。だが可夢偉はこの状況でも予選でエリクソンに0.2秒しか負けていない。
金曜日のFP2でクラッシュした可夢偉は、突然オーバーステアになったと報告している。これはドライバーのミスではなくマシンのトラブルと見るべきだろう。だが驚くことにケータハムにはこの時のデータがないという。
このように資金難に苦しむチームは、もはやF1チームの体をなしていない。とにかくお金を持ち込めるエリクソンを優先しようとする姿勢が明らか。だが本当にポイントが欲しければ優先すべきは小林可夢偉である。
雨の荒れたレースで可夢偉が新しいフロントウィングと適したボディカウルを使用していれば、どういう結果になっていたかはとても興味深い。
しかも彼は雨脚の強まる終盤にレインタイヤへと交換していた。だがこれも最初、可夢偉がレインタイヤに交換するようリクエストしていたにも関わらず、ピット側の判断でまだレインタイヤを履いているマシンが少なかったので、インターミディエイトタイヤを準備。可夢偉が戻ってきたタイミングで、レインタイヤ装着車のタイムがいいのが確認できたがその時はもうすでに遅くレインタイヤを準備する時間がなかったので、そのままインターミディエイトタイヤに交換して送り出す。
可夢偉はピットアウト後、思ったようにグリップしないことをおかしく思っていたら、エンジニアからタイヤを間違えたと無線が入ってきた。結局、可夢偉は2周後にもう一度、タイヤ交換に戻ることになり、大きくタイムロスをして最下位の19位に沈んでしまった。
実際、レインタイヤに交換した可夢偉は、ハミルトンを抜き返しており、タイヤ交換のミスがなく、レースが最後まで続いていれば、結果がどうなっていたかは興味深い。