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なぜベッテルは自滅したのか? 日本GP観戦記

さて日本GPでもフェラーリとベッテルが自滅したと言われているが、果たして彼らは何も考えずに失敗をしたのでしょうか。
 
まずは金曜日のフリー走行から振り返ってみよう。フリー走行2回目のトップタイムはハミルトンで2位のボッタスに0.4秒差、3位のベッテルにはなんと0.8秒もの大差をつけた。フリー走行はまだ練習走行なのでこのタイム差が持つ意味はいろいろ解釈できるのですが、いくら練習走行とはいえフェラーリに大きなトラブルがあったわけでもないのにこの大差は、フェラーリ陣営に大きな衝撃だったでしょう。
 
もちろん金曜日はダメでも、土曜日にセッティングを変えて逆転することもあります。でもFP3でもハミルトンはトップ。ベッテルは0.2秒差の2位でした。
 
この時点でフェラーリ陣営は予選でハミルトンに勝つのはかなり難しい事くらいわかったでしょう。しかも彼らはこのレースで一番硬いミディアムをたったの1セットしか持ち込んでいませんでした。そのかわり1番柔らかいスーパーソフトを他より多く持ち込んでいました。ミディアムが1セットしかないのであれば、フリー走行で走ってタイヤのたれ具合を確認することができません。
 
つまりフェラーリはこれまでもそうでしてが、予選でポールを取り、そのまま逃げ切るという作戦しか考えていませんでした。
 
となればどうしてもポールポジションをとらなければなりません。その考えが予選Q3で小雨が降り出した時にフェラーリがいち早くインターミディエイトタイヤを履いて出てきた背景にあります。
 
もしそのまま雨が強くなれば、最初にインターミディエイトを履いてアタックしたフェラーリはフロントロウを独占できたでしょう。
 
ただその時のコンデションはまだインターミディエイトでは早すぎました。結局フェラーリの二台はアタックすることなくピットに戻り、ドライタイヤに履き替えて再度アタックに行きます。
 
この時点ではまだフェラーリには巻き返すチャンスはありました。しかしベッテルもライコネンも最初のアタックでミスをしてタイムを大きくロス。ライコネンは4位、ベッテルは9位に沈みます。
 
 
絶対絶命のベッテルでしてたが、さすがは4度の世界王者。スタートで二台抜き、オープニングラップが終わる時には5位浮上します。しかもその後、前を走るフェルスタッペンとライコネンが接触し、ベッテルは難なくライコネンをパスして、この接触で5秒ストップのペナルティを受けたフェルスタッペンを追います。
 
そして8周目にセーフティカーがインして、レース最下位となります。この時、フェルスタッペンのレッドブルはバッテリーの残留がなくなりモーターのアシストがなくなり、ヘアピンからの立ち上がりで加速が鈍ります。ベッテルはフェルスタッペンに並びかかりつつ、インに飛び込みますが、フェルスタッペンと接触。19位まで順位を落としてしまいます。
 
確かにフェルスタッペンのバッテリー残量はなく、ここで飛び込まなくても次のストレートでベッテルはフェルスタッペンを抜けたかも知れません。しかしこの時ベッテルはフェルスタッペンにバッテリー残量がないことを知りません。そんな時にフェルスタッペンに追いつきイン側にスペースがあれば、どんなドライバーでも飛び込むでしょう。
 
もちろんもしベッテルが選手権をリードしている状態でこんなリスクを冒したなら、愚か者扱いされても仕方ありません。しかしベッテルはハミルトンを追う立場です。
 
フェルスタッペンは5秒ペナルティだったので、タイヤ交換の時期まで待てば楽に追い抜けたのも事実です。だがフェルスタッペンがタイヤ交換するのは21周目で、まだあと13周もありました。そこまで待てば確かにベッテルは簡単にフェルスタッペンを抜けたでしょうが、その時にはメルセデスは遥か先を行っているのは間違いありません。
 
ベッテルにとって今回3位はあまり意味がありません。できればハミルトンよりも先に、それは流石に無理だとしてもボッタスより上の2位てフィニッシュしたかった。その困難なミッションに挑戦するならばこのタイミングででフェルスタッペンを抜く必要があった。だからリスクを冒してインに飛び込んだ。
 
そんなベッテルを誰か責められるというのでしょうか。
 
▽惜しくも入賞を逃したトロロッソ・ホンダ
予選では今シーズン最高の6位ハートレー、7位ガスリーを獲得したトロロッソ・ホンダですが、実はスタート直前にFIAと一悶着ありました。彼らはロシアGPでデビューした新しいスペック3のPUを搭載したのですが、実は共振の問題が出ており、フルパワーを使えていませんでした(それでも6位と7位なのですごいのですが)。共振の問題はロシアでも出ており、それもロシアGPの土曜日に古いPUに載せ替えた理由の一つでした。
 
 
その為、ホンダはギアチェンジした直後に、少しだけ点火を遅らせて振動を抑えるモードで走らせようとしました。そしてFIAは一度はそれを認めたのですが、それを文書で公にしたら他のチームからクレームが来たのでしょう。これはパフォーマンスを上げるための仕様変更であり、予選に出走した瞬間からセッティングの変更は許されていないはずだと。ホンダとしては、これは信頼性を改善する為の変更でパフォーマンスが上がるわけではないと言いたかったのでしょう。
 
結局、グリッド上で一悶着あった末にホンダは前の仕様に戻さざるを得ませんでした。これでホンダは再び妥協してパワーダウンして走らせるしかありませんでした。ただ結果として共振の問題が解決すれば、パワーアップすることが可能なので、この言い分は通りませんでした。
 
予選6位のハートレーはスタートを失敗し大きく順位を落とし、その後もリアタイヤのブリスターに悩まされて順位を上げられません。タイヤ交換した後も、タイヤのグリップがあるうちは速いのですが、マーカス・エリクソンに追いついた時点でタイヤが厳しく、結局13位でフィニッシュ。
 
ガスリーは第1スティントを長く延ばしていた。それには二つ理由があり、ひとつはタイヤ交換後にクリーンな場所で走らせたかったので、そのタイミングを待っていたのと、FP2でトラブルに見舞われてソフトタイヤでのロングランができなかったので、第2スティントでソフトタイヤを履かせる予定だったので、そのタレ具合が正確に予想できなった。そのため、安全を見て第2スティントの距離を短くしたくて、第1スティントを引っ張ることになる。
 
しかし20周を過ぎて明らかにガスリーのペースが遅くなっているにも関わらず、29周目にタイヤ交換する。その前にフォースインディアがタイヤ交換しており、彼らのアンダーカットされて順位を落とす。この時点で11位。新品のソフトで速いガスリーはザウバーの2台を抜いて10位の入賞圏内まで来た。しかしその前のオコンの後ろで走る内にハートレーと同じくリアタイヤにブリスターがでてペースががくっと落ちる。
 
結局、残り三周の時点でサインツJrに簡単に抜かれて11位でフィニッシュした。
 
十分入賞可能なマシンがあったにも関わらずできなかったトロロッソ・ホンダ。ロシアGPから実質5日間ほどしかなかったとは言え、共振の問題を解決できなかったこと、タイヤの温度管理ができずに、タイヤ交換の作戦でもフォースインディアに負けたことが重なり入賞を逃した。接戦が続く中団の戦いでこれだけミスをすれば入賞できないのも当然である。
 
トロロッソ・ホンダにとっては予選が良かっただけにとても残念な日本GPとなった。